光と影の処方箋
第2回

自分の心にシンクロする撮影地を探し、何度も足を運ぶことの大切さ

写真家の相原正明さんは著書「光と影の処方箋」のなかで、「心が通う写真の撮り方」を理解すれば、撮影スタンスが変わり、作品も良い方法へ変わっていくといいます。自然風景、街、人物、鉄道など、地球上のあらゆる被写体を撮影してきた著者が語る“心が通う写真の撮り方”とは?

本記事では、第一章の「Plants(植物)」の中から、撮影時の心構えをご紹介します。

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「光と影の処方箋」

 

APS-Cサイズカメラ 16mmF1.4 絞り優先AE(F5.6・1/6秒)+1.3EV ISO200 WB:晴天  仕上がり設定:ビビッド 彩度+1 オーストラリア・タスマニア州セントラルハイランド

 

お気に入りの場所を見つけて何度も足を運べ

〔 撮り方 〕
タスマニアのお気に入りの場所。光も影も、天気も手に取るようにわかる場所。湖面に立つ無数の立ち枯れの木。その存在感と広がり、そして空の変化を大きく画面に取り込むためにローアングルから広角レンズを選択した。夜明けの空のマゼンタ感を出すために、仕上がり設定はビビッド。彩度も+1に補正。

このシーンでは、空の色と湖水への映り込みの色に注意した。撮影時に一番神経を遣ったのは、木の右側への朝日の当たり具合だ。ちょうど光が木の幹に入り、背景の山と湖面から木を浮き立たせてくれた。これは人物を撮る際にもよく使うラインライトから学んだ。

いろいろなジャンルの撮影をすることで、すべての経験値がクロスオーバーしてくる。

〔 処方箋 〕
満足いく作品を撮るためには、お気に入りの場所を持つことが大切だ。理由はなくても良い。そこにいるだけ気持ちが良ければそれだけでも良い。

自分にとってお気に入りの場所というのは、何かが自分の心にシンクロしているからだ。そしてお気に入りであれば、何回足を運んでも苦にならないし、良いところを見つけやすい。好きになれば痘痕も靨で、いつでも写欲が湧いてどん欲に撮ることができる。この場合に大切なことは、有名無名は関係がないことだ。みんなが撮っているから良いとも限らないし、逆にみんなが撮っていないからつまらない場所とも限らない。

自分の心に訴えかけてくる場所、心で何かが見える場所。そんなお気に入りの場所を見つけることが良い作品づくりの基礎となる。それはあなたの家の隣の公園かもしれないし、あるいは北極点かもしれない。自分の心と足で探すことが大切だ。


<玄光社の本>

「光と影の処方箋」

著者プロフィール

相原正明

1988年のバイクでのオーストラリア縦断撮影ツーリング以来かの地でランドスケープフォトの虜になり、以後オーストラリアを中心に「地球のポートレイト」をコンセプトに撮影。2004年オーストラリア最大の写真ギャラリー・ウィルダネスギャラリーで日本人として初の個展開催。以後写真展はアメリカ、韓国、そしてドイツ・フォトキナでは富士フイルムメインステージで個展を開催。また2008年には世界のトップ写真家17人を集めたアドビアドベンチャー・タスマニアに日本・オーストラリア代表として参加。現在写真家であるとともにフレンドオブタスマニア(タスマニア州観光親善大使)の称号を持つ。パブリックコレクションとして、オーストラリア大使館東京およびソウル、デンマーク王室に作品が収蔵されている。また2014年からは三代目桂花團治師匠の襲名を中心に落語の世界の撮影を始める。写真展多数。写真集、書籍には「ちいさないのち」小学館刊、「誰も言わなかったランドスケープ・フォトの極意」玄光社刊、「しずくの国」エシェルアン刊。

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