写真家の相原正明さんは著書「光と影の処方箋」のなかで、「心が通う写真の撮り方」を理解すれば、撮影スタンスが変わり、作品も良い方法へ変わっていくといいます。自然風景、街、人物、鉄道など、地球上のあらゆる被写体を撮影してきた著者が語る“心が通う写真の撮り方”とは?
本記事では、第一章の「Plants(植物)」の中から、撮影時の心構えをご紹介します。
お気に入りの場所を見つけて何度も足を運べ
〔 撮り方 〕
タスマニアのお気に入りの場所。光も影も、天気も手に取るようにわかる場所。湖面に立つ無数の立ち枯れの木。その存在感と広がり、そして空の変化を大きく画面に取り込むためにローアングルから広角レンズを選択した。夜明けの空のマゼンタ感を出すために、仕上がり設定はビビッド。彩度も+1に補正。
このシーンでは、空の色と湖水への映り込みの色に注意した。撮影時に一番神経を遣ったのは、木の右側への朝日の当たり具合だ。ちょうど光が木の幹に入り、背景の山と湖面から木を浮き立たせてくれた。これは人物を撮る際にもよく使うラインライトから学んだ。
いろいろなジャンルの撮影をすることで、すべての経験値がクロスオーバーしてくる。
〔 処方箋 〕
満足いく作品を撮るためには、お気に入りの場所を持つことが大切だ。理由はなくても良い。そこにいるだけ気持ちが良ければそれだけでも良い。
自分にとってお気に入りの場所というのは、何かが自分の心にシンクロしているからだ。そしてお気に入りであれば、何回足を運んでも苦にならないし、良いところを見つけやすい。好きになれば痘痕も靨で、いつでも写欲が湧いてどん欲に撮ることができる。この場合に大切なことは、有名無名は関係がないことだ。みんなが撮っているから良いとも限らないし、逆にみんなが撮っていないからつまらない場所とも限らない。
自分の心に訴えかけてくる場所、心で何かが見える場所。そんなお気に入りの場所を見つけることが良い作品づくりの基礎となる。それはあなたの家の隣の公園かもしれないし、あるいは北極点かもしれない。自分の心と足で探すことが大切だ。
<玄光社の本>