フィルムカメラ・スタートブック
第4回

かわいくて肌身離さず持ち歩きたいコンパクトフィルムカメラ「YASHICA ELECTRO 35 MC」

私たちがスマートフォンで写真を撮るのはもはや日常です。でも、フィルムカメラで撮ったアナログ感のある写真も素敵ですよね。扱いが難しい印象のあるフィルムカメラですが、いくつかのことに気をつけておけば、実はそれほど難しくありません。

フィルムカメラ・スタートブック」は、現在写真機として主流にない、フィルムカメラの実用に焦点を合わせた書籍です。

フィルムカメラを扱う上での注意点から、取り上げた機種ごとの特徴や使い方、いま手に入るフィルムなど、本格的にフィルムカメラを使っていく上で必要な情報を網羅しており、「実際にフィルムカメラを使っている人が、どんなところに魅力を感じているのかを知りたい」「フィルムカメラの使い方を勉強したい」といったニーズに応える内容となっています。

本記事では「YASHICA ELECTRO 35 MC」の使用感と作例についての記述を抜粋して紹介します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

フィルムカメラ・スタートブック

YASHICA ELECTRO 35 MC

レトロなスタイルで、そのフォルム、見た目に魅かれるかたも少なくないでしょう。このYASHICA ELECTRO 35 MCは、いわゆる絞り優先AEのコンパクトカメラです。光を読み、シャッターを押すまでの所作をすべて自分でやってみたいという野心的なビギナーにはぴったりの一台です。

YASHICA ELECTRO 35 MC F2.8 Kodak PORTRA 400 F2.8 AE ISO400 冬・屋内 深いことを考えずに最短撮影距離にして、水槽にレンズを押し付けて撮りました。フィルムカメラを使うときは、たまに偶然を楽しむことにしています。
YASHICA ELECTRO 35 MC F2.8 Kodak PORTRA 400 F2.8 AE ISO400 冬・屋内 トンネルの中で、ちょうど良い位置に人が歩いていたので咄嗟にシャッターを切りました。バランスの取れた一枚に仕上がって満足です。
YASHICA ELECTRO 35 MC F2.8 Kodak PORTRA 400 F2.8 AE ISO400 冬・曇天 鳩が規則正しく並んでいて面白いと思いました。シャッター音が小さいので鳩を驚かさずに何回もシャッターを切れました。
YASHICA ELECTRO 35 MC F11 Kodak PORTRA 400 F11 AE ISO400 夏・晴天 グアムの海辺にて。絞り込むとシャープな描写になります。ロケ中で忙しかったのですが、パっと撮ってもこのクオリティなので嬉しいです。

CdS式自動露出の35mmコンパクトカメラ

去年、安価な機械式フィルムカメラが欲しくなり、カメラショップでショーケースを眺めていたときのこと。ふと、目にとまったカメラがありました。名前は「YASHICA ELECTRO 35 MC」。気になった理由は、デザインがレトロで可愛かったから、と、ポケットに入る大きさだったから、の2点です。

どんなカメラなのかお店の人に聞いてみると、ハーフサイズのカメラのようにコンパクトだけれども、なんと35mm判。CdS式の自動露出を採用していて、絞りだけ自分で決めて、シャッタースピードはカメラ任せというスタイル。

わたしは人一倍「思い通りの絵を撮りたい」という気持ちが強い人間なので、いままでマニュアル操作のできるカメラばかりを使ってきました。かれこれ8年くらいそうしてきたのですが、このとき、なぜか素直に「カメラ任せで撮ってみるのも良いな」と思える自分がいました。

カメラ選びに関しては「直感に従う」ことにしているので、わたしは、数分後、綺麗に梱包されたYASHICA ELECTRO 35 MCを手にお店を出ていました。

カラーネガを装填し、早速、次の日からカメラをポケットに入れて持ち歩くことにしました。撮りたいものに出会ったら、絞りを決めて、目測で被写体までの距離を計算し、シャッターを押します。自動露出といっても絞りの設定と目測でのピント合わせを行うので、完全オートのカメラに比べると「自分でカメラを操作して、シャッターを切っている」手応えがあります。

自分のまいにちになじみ、想像以上に良く写るカメラ

持ち歩くようになって、YASHICA ELECTRO 35 MCは、カメラというより、スマホやお財布のような、日常にすっと馴染む存在だなと思いました。ゆえに、散歩中や、ロケ先でのふとした瞬間など、いままで作品撮りの際に意識が向かなかった「隙間」の時間に無性にポケットから出したくなりました。

現像から上がってきた1本目のネガを見て、まさに「隙間」の時間がそこに描かれていることに驚きました。カメラが変わると、その個性に合わせて、自分の視点も変わるのだなと思いました。

そして、写りも想像以上であることを知りました。正直、コンパクトカメラということで侮っていたところもあったのですが……雲や枝など細かいところもきちんと描写されていて、色乗りも良く、一目で「ああ、いいな」と感じるレベルの絵がそこにありました。勝手に「日常用のカメラ」と位置付けていましたが、それだけにとどめておくのが勿体無いくらいの写りでした。

わたしはすっかりこのカメラを気に入ってしまい、一時期、肌身離さず持ち歩いていました。使うたびに写真を撮る楽しみを思い出させてくれるYASHICA ELECTRO 35 MC。フィルムカメラをこれから始めようと思っている方にもぜひ使っていただきたいです。

このカメラの使い方や特徴を知る
下記では、本機の魅力の一端を紹介します。

ボディ
ヤシカは、1966年に35ミリレンズシャッター AEカメラ「ELECTRO 35」を発売しました。今回ご紹介するエレクトロ35MCは、エレクトロ35発売から6年後の1972年に発売されました。エレクトロ35をギュッと縮めたような形をしています。まるでハーフサイズのカメラのように感じてしまうほどの、小型軽量ボディが特徴的です。ブラックタイプも存在します。

フィルム感度をセットし、絞りを決めて、被写体までの距離を合わせてシャッターを切れば、標準露出の写真が撮れます。

レンズ
レンズは、ヤシノンDX F2.8 40mmがついています。レンズ交換はできません。40mmは、標準レンズと言われる50mmよりも少しだけ広く、スナップに絶妙に使いやすい画角だと思 います。コントラストもよく、シャープな描写です。私はF8くらいまで絞ったときの絵がすっきりしていて好きです。周辺光量落ちが少し目立ちますが、個性かなと思います。

レンズの枠上部にある、透明の円形部分が露出計のCdSです。ここが受光部なので、撮るときに指で隠したりしないように気をつけましょう。


フィルムカメラ・スタートブック

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。雑誌連載:『フォトテクニックデジタル』にて「身近なものの撮り方辞典」を連載中。

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
Twitter:@Holy_Garden

初著書「フィルムカメラ・スタートブック」発売中
本の制作過程を編集日誌で公開しています

フィルムカメラ・スタートブック」Amazonサイトへ

 

関連記事