映像作品などで目にする「画面」の雰囲気は、色合いや明るさなどいくつかの要素によって演出されます。普段何気なく観ている映像作品も、よくよく見てみると登場人物の心理状態や物語の展開によって色合いが調整されていることがわかるでしょう。こうした画面の調整を一般に「グレーディング」といいます。
RAW現像ソフトなどに搭載されている「カラーグレーディング」機能は、元々映像の分野で用いられてきたグレーディングの手法を写真表現に活かす目的で取り入れられたものです。使いこなせば、写真に映画のワンカットのような雰囲気を加えることが可能になります。
「Lightroom カラーグレーディング活用BOOK」では、写真家の藤田一咲氏が、写真のカラーグレーディングを行う上で押さえておくべき色の基礎からシーンごとの作例、簡単に試せるパラメータ設定集など、写真表現の幅を拡げる知識やテクニックを多数掲載しています。
本記事ではChapter4「外観や印象をガラリと変える -ポートレート」より、マットな厚みのあるモノクロームの表現を紹介します。
暗い紅色を帯びたモノクロ/重厚なモノクローム・ゴシック
黎明期の写真のような
モノクローム・ゴシックという正式名称や技法はありませんが、モノクロにブルー、オレンジ、グリーンをかけ合わせて、イカ墨(セピア)色とも少し異なる、重厚な雰囲気のモノクロームに仕立てます。1800年代の写真のようなヴィンテージ感も漂います。
Before
撮影データ:絞り F4 シャッター速度 1/80秒 ISO 800 WB 晴 カメラ CANON EOS 5D MARK III レンズ EF16-35mm F4L IS USM
After
- カラーグレーディング
- シャドウ 色相:200/彩度:30/輝度:-60 ●中間調 色相:20/彩度:45/輝度:0
- ハイライト 色相:80/彩度:20/輝度:0 ●ブレンド 50 ●バランス +40
- 全体 色相:0/彩度:0/輝度:0
#37 MONO-GOTHIC
1. 基本補正を行う
POINT:コントラストを高くする
[基本補正]パネルを開き、以下のように設定する
- 色表現 白黒
- プロファイル Adobe モノクロ
- WB 色温度:5,200 *適切な色温度に補正する
- 露光量 +1.30
- コントラスト +60
- ハイライト -100
- シャドウ +60
- 白レベル -45
- 黒レベル -45
- 明瞭度 +20
2. トーンカーブを調整する
POINT:マット感を加える
[トーンカーブ]パネルを開く
●ポイントカーブ
左図のようなトーンカーブを作る
A: 入力:0/出力:55
B: 入力:255/出力:235
3. ディテールを調整する
POINT:シャープの適用量を大きく、ノイズを軽減する
[ディテール]パネルを開き、以下のように設定する
- シャープ 適用量:70/半径:1.5/ディテール:10/マスク:55
- ノイズ軽減 輝度:100/ディテール:50/マスク:0
4. カラーグレーディングを行う
POINT:メインカラーの中間調のオレンジと、シャドウのブルーは補色
ハイライトにグリーン
[カラーグレーディング]パネルを開く
それぞれのエリアの[詳細]パネルを選択し、以下のように設定する *下図は、各エリアの色相の位置関係をわかりやすくするため[三方向]パネルになっている
- シャドウ 色相:200/彩度:30/輝度:-60
- 中間調 色相:20/彩度:45/輝度:0
- ハイラト 色相:80/彩度:20/輝度:0
- ブレンド 50 ●バランス +40 ●全体 調整なし
5. トーンの調整をする
[B & W]パネルを開く
各カラー(元画像にあるカラー)を調整して画像全体のトーンを整える
●白黒ミックス
「自動補正」を適用する *必要に応じて微調整する
6. 効果を加える
POINT:フィルムの質感を加える
[効果]パネルを開き、以下のように設定する
- 切り抜き後の周辺光量補正
- スタイル:ハイライト優先/適用量:-30/中心点:50/丸み:-60/ぼかし:50/ハイライト:0
- 粒子 適用量:10/サイズ:25/粗さ:50
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