かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。
レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。
シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。
本記事では特集「Flare Ghost Collection」より、「Helios-40-2 85mmF1.5」の作例を紹介します。
ボケモンスターの隠された側面
本レンズはぐるぐるボケの出るレンズとして有名だ。海外ではボケモンスター(Bokeh Monster)と呼ばれることもあり、数あるオールドレンズの中でも突出したクセ玉だ。開放で被写体を中心に据えると、周囲が同心円状に回転する。言わば、開放で使ってナンボのオールドレンズだ。
それゆえに、本レンズの絞り込んだ際の秘技はあまり知られていない。逆光で絞り込むと、画面に広がっていたフレアが細くなり、F5.6以降でビーム状になる。しかも虹色の波状ゴースト付きというド派手な描写だ。ただし、ビームフレア&虹色波状ゴーストは、発生条件が厳しい。逆光で光源をフレームから外し、フレアが程良く射し込む角度を探す必要がある。このレンズを愛用している人ですら、この描写に気付いていないこともしばしばだ。使いこなすことで新たな側面が見えてくる。
Non Flare Shot