オールドレンズ・ライフ
第27回

多重の虹色ゴーストが面白い Takumar 83mmF1.9

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。

レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。

シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。

本記事では特集「Flare Ghost Collection」より、「Takumar 83mmF1.9」の作例を紹介します。

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オールドレンズ・ライフ 2020-2021

優良レンズが放つ波状ゴースト

α7III + Takumar 83mmF1.9 絞り優先AE F1.9 1/4000秒 +0.7EV ISO100 AWB RAW 虹色のゴーストが波状に広がる。発生条件はやや厳しく、レンズの向きを変えながらきれいに発生するポイントを探した。

虹色のゴーストはよく見かける。ただし、タクマー83mm F1.9の虹色ゴーストは一味ちがう。虹色のゴーストが何層にも重なり、波状ゴーストを形成しているのだ。他に類を見ない強烈なゴーストである。

光学設計の専門家に発生原因を尋ねたところ、レンズ同士の接着面に干渉縞が発生し、それが波状ゴーストになるという。ただし、レンズの組み立て精度によって、発生する個体、発生しない個体があるそうだ。光学的には波状ゴーストが発生しない個体が当たり玉ということになるが、さて、オールドレンズファンにとってはどうだろう。

開放はやや甘さを感じるが、周辺部でもピントが合い、何よりコントラストの付き方が良い。しかもF4以降は急激にシャープさを増す。素性の良いレンズだからこそ、波状ゴーストという個性が際立つ。

Asahi-Kogaku / M42 mount Takumar 83mmF1.9 中古価格:150,000~200,000円 1950年代に登場。レンズ構成は4群7枚のゾナー型だ。この個体は本来アサヒフレックス用だが、変換リングでM42マウント化してある。(機材協力:TORUNO)

オールドレンズ・ライフ 2020-2021

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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