かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。
レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。
シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。
本記事では特集「沈胴レンズクロニクル」より、デジタルカメラで沈胴レンズを使う際の注意点と、「Tessar 5cmF2.8」による作例を一部抜粋して紹介します。
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沈胴レンズは沈胴厳禁と心得よ
沈胴レンズをデジタルカメラに付けて撮影する場合、絶対にやってはいけないことがある。それはレンズの沈胴行為だ。
理由として真っ先に思い付くのは内部干渉だが、実のところ内部干渉する沈胴レンズは限られている。ではなぜ沈胴行為がリスキーなのか。それはチリやホコリの落下だ。デジタルカメラに付けた状態で沈胴すると、チリやホコリがイメージセンサーにダイレクトに落下する。そればかりか、グリスまじりのチリの塊が落ちようものなら、どうやってセンサークリーニングすればいいのか。沈胴がいかに危険な行為か、想像に難くないはずだ。
Carl Zeiss Jena「Tessar 5cmF2.8」
ブラックニッケルが所有欲を刺激する
ブラックコンタックス、通称ブラコンと呼ばれるカメラがある。1930年代、ツァイスコンが作ったレンジファインダー機だ。角張った横長のボディをブラックペイントで覆い、バルナックライカのライバル機として人気を誇った。このブラコンの標準レンズとして用意されたのが、ブラックニッケルのテッサー5cmF2.8である。
沈胴レンズはニッケル仕様というだけでプレミアム感があるのだが、このレンズはさらにブラックペイントの銘板まで備えている。ニッケル×ブラックペイントというマニア垂涎の仕様だ。ちなみに、シルバークロームの同型レンズもあるが、ブラックニッケルが特別高いということはない。
なお、テッサー型なので写りは手堅いものの、年代物だけに曇り玉が少なくない。この点は要注意だ。