オールドレンズ・ライフ
第26回

玄人好みの沈胴フォルム Tessar 5cmF2.8。装着時は取り扱いに注意

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、現在においては「オールドレンズ」と呼ばれ広く親しまれています。

レンズは「写真うつり」の多くの部分を決める要素ですが、オールドレンズの世界においては、必ずしも画面のすみずみまではっきり、くっきり写ることだけが良しとされるわけでもありません。レトロな外観と個性的な写りも人気の一因です。

シリーズ10冊目となる「オールドレンズ・ライフ 2020-2021」では、現行のデジタルカメラで沈胴レンズを使う「沈胴レンズクロニクル」、あえてフレアやゴーストを発生させるレンズを使う「Flare Ghost Collection」などの特集を掲載。各レンズの特徴から装着前に押さえるべき注意点、実写作例など、レンズ沼のほとりに立つ人々の背中を押す内容となっています。

本記事では特集「沈胴レンズクロニクル」より、デジタルカメラで沈胴レンズを使う際の注意点と、「Tessar 5cmF2.8」による作例を一部抜粋して紹介します。

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オールドレンズ・ライフ 2020-2021

沈胴レンズは沈胴厳禁と心得よ

沈胴レンズはマウントアダプターを介してミラーレス機で使用できる。デジタルM型ライカの場合は、LM リング経由で距離計連動で撮影可能だ。

沈胴レンズをデジタルカメラに付けて撮影する場合、絶対にやってはいけないことがある。それはレンズの沈胴行為だ。

理由として真っ先に思い付くのは内部干渉だが、実のところ内部干渉する沈胴レンズは限られている。ではなぜ沈胴行為がリスキーなのか。それはチリやホコリの落下だ。デジタルカメラに付けた状態で沈胴すると、チリやホコリがイメージセンサーにダイレクトに落下する。そればかりか、グリスまじりのチリの塊が落ちようものなら、どうやってセンサークリーニングすればいいのか。沈胴がいかに危険な行為か、想像に難くないはずだ。

Carl Zeiss Jena「Tessar 5cmF2.8」

ニッケルの鏡胴に、ブラックペイントの銘板が映える。一般にブラックニッケルと呼ばれるタイプで、初代コンタックス向けのレンズだ。

ブラックニッケルが所有欲を刺激する
ブラックコンタックス、通称ブラコンと呼ばれるカメラがある。1930年代、ツァイスコンが作ったレンジファインダー機だ。角張った横長のボディをブラックペイントで覆い、バルナックライカのライバル機として人気を誇った。このブラコンの標準レンズとして用意されたのが、ブラックニッケルのテッサー5cmF2.8である。

沈胴レンズはニッケル仕様というだけでプレミアム感があるのだが、このレンズはさらにブラックペイントの銘板まで備えている。ニッケル×ブラックペイントというマニア垂涎の仕様だ。ちなみに、シルバークロームの同型レンズもあるが、ブラックニッケルが特別高いということはない。

なお、テッサー型なので写りは手堅いものの、年代物だけに曇り玉が少なくない。この点は要注意だ。

Leica M10 + Tessar 5cmF2.8 絞り優先AE F2.8 1/2000秒 +0.67EV ISO200 AWB RAW テッサーとは言え1930年代製なので、マイルドでやさしい描き方だ。淡いフレアが霞みのように感じられる。
ニッケル仕様のカプラー、Amedeo AdapterのZeiss Contax 5cm-Leica M(Nickel)でライカM10に装着。税別価格22,727円。
カプラーに付けてレンズを沈胴したところ。コンタックスCマウントのレンズも、初期のものは沈胴式を採用していた。
ニッケルとブラックペイントのコンビがマニアの琴線に触れる。ブラックペイントの経年変化もいい味わいだ。シルバークロームの個体もある。
Tessar 5cmF2.8 中古価格:20,000~40,000円 1932年に登場した初代コンタックスの標準レンズ。レンズ構成は3群4枚のテッサー型だ。この個体はブラックニッケルと呼ばれるタイプ。

オールドレンズ・ライフ 2020-2021

 

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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