創作において物語を動かし、表現するキャラクターには、しばしば世界観や物語を象徴するデザインが適用されます。そこには本人の性格や服装、持ち物だけでなく、時にはキャラクター自身の「種族」も含まれており、動物などをモチーフにしたキャラクター造形も珍しいものではありません。
「獣人・擬人化 人外デザインのコツ」では、動物をベースとしたキャラクター造形の方法論とともに、キャラクターの作例を解説。擬人化の際に重要な特徴の捉え方やデフォルメの度合い、動き表現の「人らしさ」「動物らしさ」の出し方など、実際に物語の中でキャラクターを動かす上で把握しておくべきポイントを詳しく知ることができます。
著者は漫画作品「人馬」やゲーム「モンスターハンター」シリーズの3Dモデリング、キャラクターデザインなどに携わっている墨佳遼さん。
本記事では第一章「漫画・アニメ・ゲームのために描く基礎知識」より、擬人化キャラの元となった動物の特徴を残すために留意したいポイントを紹介します。
リアルな動物をキャラクターに起こす
動物からキャラクターに起こすためのポイントです。動物と人間の表情をうまくミックスするには何が必要か。またキャラクターへのパッションを活かした墨佳流の練習方法もお教えします。
リアルな動物には「人間的な表情」がないだけで、「無表情」なわけではありません。ちゃんと動物ならではの「表情」があります。その最たるものが「耳」、次に「尻尾」、最後に「全身の体毛の膨れ」です。「動物」を描く場合、筋骨格への理解も大切ですが、「キャラクター」として表現するためには、動きや生態などにも興味を持ってよく観察してみることが必要です。
「マンガ的に描く」とは、この動物的な動きと「人間的な表情」を組み合わせることで、大元の動物への興味や理解の薄い人にも魅力を伝える重要な要素になります。動物と人間の旨味をミックスするには、人間の表情筋の動きを表現する知識と技術、それに動物の感情表現が合っているかどうかを見極める力が必要です。それができると、動物的要素を残した人外キャラの表現が一気に広がります。
「耳」は緊張、興味、恐怖、怒りのすべてを表現します。例えば、「耳を寝かせる」という時は、耳の付け根から回転して伏せているので、動きを観察しましょう。
基礎を学んでからでないとキャラクターを描いてはダメ?
そんなことはありません! すぐ描こう!基礎知識として対象をたくさんスケッチすることは、とても重要です。でも、それよりもすぐにキャラクターを描きたい。そんな気持ちがあるなら、ぜひ描いてみましょう。すべては「描く」ところから始まります。
まずは描いてみて、「もっとここを魅力的に描きたいなあ」、「ここってどうなっているんだろう?」と思ったら、次は観察へと意識を向けてみましょう。その意欲こそが楽しい練習へのきっかけです。そうすると、「漠然としたスケッチ」から「ここが描きたいからここを見よう」とか「ここがわからないから観察してみよう」と、ポイントを絞ったスケッチへとレベルが進化します。
練習では、「どう」うまく魅力的に描きたいのか? だから「こう」練習する。といった具体的な意識を持つことが上達のコツ。それを楽しめたらよりよいですよね。そのために「描きたいもの」から始めるのもおおいにアリなんです。