デジタルでフィルムを再現したい
第6回

アナログ感のある「暖かな青み」を表現しよう

2000年代以降、デジタルカメラを内蔵する携帯端末が広く普及し、私たちの日常生活は「写真撮影」と共にあるといっても過言ではありません。その一方で、近年になってフィルム写真も再評価されており、「古くて新しい写真表現」を評価する価値観の中で、写真表現に新たな広がりが訪れています。

写真は「現像」作業によっていかようにでも変化します。その性質は、デジタルでもフィルムでも変わりません。しかし根本的な部分で、デジタル写真はフィルム写真とは似て非なるものです。そしてそれは、デジタルがアナログに近づく余地を残しているということでもあるのです。

書籍「デジタルでフィルムを再現したい」では、デジタル写真現像ソフト「Lightroom Classic」を用いて、デジタル写真をフィルムの風合いに近づけるテクニックを紹介しています。まったくのゼロからフィルムの色合いを再現するのは大変な作業ですので、本書で色調やトーンなど、各種パラメータコントロールの基本を身につけるのも一つの手でしょう。

本記事では第2章「シーン別フィルム再現 屋外編」より、「暖かな青み」を目指した色再現を解説します。

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デジタルでフィルムを再現したい

青味がありつつも温かみのある描写

Before

作品タイトル:「夕暮れのビーチ」
シチュエーション:夕刻、晴れ、逆光/斜光、自然光

After

Step0:仕上がりをイメージする

日が沈む砂浜を家族で歩いた思い出の写真を、情緒たっぷりに表現したいと思いました。リファレンスのフィルムはKodak Portra 400。青味がありつつも、暖かな色合いを目指して編集していきます。

Step1:基本補正を行う

ベースプリセットを適用後、ライトの調整を行います。

露光量:+094→+0.50

夕暮れのほの暗い雰囲気を損ねていたため、プラス補正の度合いを落とした。

コントラスト:-16→-36

チェーン店のミニラボを使った無補正プリントはコントラストが高くなることが多い。これを再現すべく、コントラストを思いっきり上げた。

Step2:カラーを調整する

カラー
青味が強すぎると夕方の情感が薄れるため、空の色などをよく見ながら色温度を追い込みます。

色温度:-12→-8

パラメーターを右側に動かして、夕暮れの暖かな雰囲気を出す。

色かぶり補正:-16→-22

マゼンタ側にパラメーターを動かしても悪くないが、今回はグリーン側に動かしネガフィルム特有の色かぶり感を出す。

色温度と色かぶり補正を使って、全体的にブルー、グリーン寄りにした。

彩度:0→-18

元の写真の彩度が高かったため、彩度を大幅に下げる。

Step3:効果を調整する

Step2にて、写真全体の色合いをグリーン方向に転ばせましたが、これにより空の夕暮れらしさが失ってしまいました。明暗別色補正を使ってハイライトの赤味を少し強くします。

明暗別色補正(ハイライト)
色相:317→328
彩度:9→13

周辺光量補正:0→-6

元の写真はレンズの特性もあり、周辺の光量がやや落ちていたが、周辺光量補正をマイナスにすることで、周辺減光をさらに強めた。

周辺減光効果は手軽に写真をそれらしい雰囲気にできるため、場合によっては効果を強めにかけがちとなります。あまり強く周辺減光させるとわざとらしく見えるため、最大でも-12くらいで止めることがおすすめです。

プレーンな印象だった Beforeと比べ、Afterはピンクがかった空に、より情感が増した。

Memo
明暗別色補正はフィルム再現における隠し味のような存在です。ハイライトやシャドウに自由自在に色を乗せることができますが、彩度については上げすぎないように注意しましよう。

夕暮れ感を出すために、ハイライトに彩度の高いオレンジをかぶせた。本書が目指す、自然なフィルム再現とはかけ離れてしまった。

デジタルでフィルムを再現したい

著者プロフィール

嵐田 大志

嵐田 大志 (アラシダ タイシ)
東京を拠点に、家族写真やスナップなどを中心に撮影。Instagramにてハッシュタグ「# デジタルでフィルムを再現したい」を発案、デジタル写真をフィルム風に編集することをライフワークのひとつとしている。Adobe Stock Premium がモバイル編集アプリVSCO と共同展開する「VSCO Collection」の公式クリエイター。
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