ポートレート・ライティングのアイデア帳
第4回

曇り空はグリッド付きソフトボックスの使いどころ

その場の地明かりや照明設備といった光の状態は、写真を撮るにあたってきわめて重要な要素です。人物を写すポートレート写真でもそれは例外でなく、カメラマンは時として被写体や表現意図に応じた光を「作る」必要に迫られます。では、撮影意図に沿って適切な光を作るには、どうしたらいいのでしょうか。

ポートレート・ライティングのアイデア帳」では、複数のフォトグラファーが様々なシチュエーションでのライティングについて解説。モノブロックストロボ、自然光、夕景、夜景、複数台のストロボなど、機材やシーンに応じた光の作り方を紹介しています。

本記事では「背景をきれいに見せるオフカメラストロボ術」の章より、曇天時にストロボをメインライトに使う際の表現方法についてのテクニックを掲載します。

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くもり空を利用してHDRのような階調表現をつくる

露出を暗めにセットしストロボでモデルを照らす
日中の屋外で撮影するときは、絶対的な光量がある太陽光が必然的にメインライトになり、ここで使用している小型で光量の限られたクリップオンタイプのストロボは、フィルライトやアクセントライトでの使用が多くなります。

ですが、影もできないようなくもりの天候では、小型のストロボをメインライトとして使えるチャンスです。積極的に活用しましょう。

撮影時は遮るもののない海辺で撮影しましたが、太陽は厚い雲に覆われてどんよりした雰囲気。そのイメージを強調して作画することにしました。

カメラの露出は雲がおどろおどろしく見えるよう暗めに設定。その状態でモデルに入ってもらうと暗いだけで美しくは見えません。そこでストロボをメインライトとして当てることにしました。

ストロボはサイドから当てて、アクセサリーにソフトボックスとグリッドを装着。面光源にして光質をやわらげながらも、グリッドをつけることで光の拡散を制御し、照射範囲を限定的にしています。これにより服に陰影をつけて、全体のトーンとマッチさせました。

さらにレンズにPL フィルター「NISI Ti エンハンスドCPL」をつけています。本来は光の反射を切るために使用するのですが、このフィルター特徴として、フィルター効果を抑えた(光の反射を切らない)状態で使うと肌が艶っぽく見え、全体に青みが強くなります。

この特徴を活かして、絵画のようなこってりとした色調に仕立てました。

人物に露出を合わせると背景が白飛びする

カメラ機材
Canon EOS R
Canon RF28-70mm F2 L USM(28mm)
F8.0 1/320 秒 ISO400 WB:5237K

照明機材
ストロボ:Nissin MG10
ストロボアクセサリー:Cactus CB – 60W
ストロボトリガー:Nissin Air10s


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