その場の地明かりや照明設備といった光の状態は、写真を撮るにあたってきわめて重要な要素です。人物を写すポートレート写真でもそれは例外でなく、カメラマンは時として被写体や表現意図に応じた光を「作る」必要に迫られます。では、撮影意図に沿って適切な光を作るには、どうしたらいいのでしょうか。
「ポートレート・ライティングのアイデア帳」では、複数のフォトグラファーが様々なシチュエーションでのライティングについて解説。モノブロックストロボ、自然光、夕景、夜景、複数台のストロボなど、機材やシーンに応じた光の作り方を紹介しています。
本記事では「背景をきれいに見せるオフカメラストロボ術」の章より、周囲の環境に引きずられずにモデルを引き立てるライティングについて解説します。
森の色かぶりをおさえてナチュラルな肌の発色を得る
ハイキー調の背景にフィットする肌色をつくる
立派な枝振りの樹木と、木々や草によって緑一色となるおもしろいシチュエーションを見つけ、撮影場所に選びました。光の方向は逆光。撮影時は薄ぐもりでしたが、森の中まで差し込む光は限定的で、フラットな明るさとなっていました。
こうした状況で露出を明るめに設定すると、葉の緑が鮮やかになり、木々の隙間から覗く空もハイライトとして描けるので、気持ちのよいハイキー調に仕上がります。背景としてはこれで設定完了です。
この状態でモデルにフレームインしてもらうと、モデルの肌は逆光により、前面が暗く見えて立体感が乏しくなります。そして葉を透過したり反射した光によってグリーンの色みがつき、モデルの肌もその影響を受けて緑がかっていました(これを「色かぶり」と言います)。ちなみに色かぶりしている状態がどんな感じかというと、画面右側に見える樹木の幹を参考にしてみてください。
このときは「モデルの立体感」と「色かぶりの補正」の2つの課題をクリアする目的で、ストロボをサイドから当てています。光の芯は下手側の顔を狙って、ショートライト(カメラ側の頬がシャドウになる)になる位置にセット。機材は第2回と同様にストロボにアンブレラのトランスルーセントを装着し、全身を均一に照らす面光源にしています。
モデルまで350cmの距離から「Profoto A1」をフル発光させることで、ストロボのニュートラルな光で色かぶりを取り去ることもできています。
カメラ機材
Canon EOS-1D X Mark II
ZEISS Milvus 1.4/25 ZE
F1.4 1/200 秒 ISO400 WB:5000K
照明機材
ストロボ:Profoto A1
ストロボアクセサリー:アンブレラ・トランスルーセント
(60cm)
ストロボトリガー:Profoto Air Remote T TL