旅客輸送、物流、防災、救難、軍事など、様々な領域で活躍する航空機。「もしも空を飛べたら、何がしたいか」という人々の願いを具現化し、用途に特化した機体の機能美は、写真の被写体としてもきわめて魅力的です。
「飛行機写真の教科書」では、「飛行機写真」の定義から航空機の種類や運用に関する基礎知識、飛行機撮影に適した機材、撮影場所の選定をはじめ、季節や状況ごとの表現テクニックまで幅広くカバー。
一定の専門的な知識と高い撮影技術を必要とし、難易度が高めの撮影ジャンルではありますが、マスターすれば写真表現に大きく幅を持たせられることは間違いないでしょう。
本記事では、Chapter2「飛行機写真の撮影機材と使いこなし方」より、プロの機材構成に関する記述を抜粋して紹介します。
飛行機撮影システム構成のポイント
筆者が考える飛行機撮影システム構成のポイントは、「数少ないシャッターチャンスを確実に仕留め、かつ高画質で記録できること」である。そのためのカメラは、現時点ではハイエンドデジタル一眼レフカメラが最適で、ニコンD500(APS-C/2088万画素)とD850(フルサイズ/4575万画素)をメインに、超高感度撮影時は、D5(フルサイズ/2082万画素)も使用する。
これら3機種は操作性が共通なので、現場で併用しやすい点でも気に入っている。ミラーレスカメラはカタログスペック上では一眼レフを凌駕するものもあるが、操作性や信頼性の点において、まだ一眼レフに優位性があるといえよう。
戦闘機の撮影が多い筆者のメインレンズは500mm F4で、手持ち撮影時のバランスのよさと画質の安定感に絶大な信頼を寄せている。特にD500+500mm F4+1.4xを組み合わせたとき、1050mm F5.6相当の世界を快適に使えるのがいい。
海外取材などで機材を軽くしたいときは、500mm F5.6PFを使うこともある。500mmの次に多用するレンズは70-200mm F2.8、または70-200mm F4である。撮影時は2台のカメラボディそれぞれに500mmと70-200mmを装着しておき、レンズ交換によるロスタイムなくシャッターチャンスに対応できるようにする。そのほか、1.4xテレコンバーター、24-70mm F2.8、300mm F4も携行し、撮影内容に応じて使用している。
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筆者の基本機材構成
500mmの軽量化
図のうち、左は戦闘機撮影の標準レンズともいえる500mm F4FLで、重量は3090g。右はレンズ口径を小さくし、位相フレネルを採用した500mm F5.6PFで、重量はわずか1460g。D500との組み合わせでは750mm F5.6相当としても使える優れもので、小型・軽量なので、海外遠征などに便利な一本だ。
下はイギリスのエアショーにて戦闘機を撮影中の筆者。カメラは2台が基本で、D500+500mm F4でデモフライトを行う戦闘機をアップでとらえ、肩にかけたD850+70-200mm F4で離着陸を撮影する。腰のチョークバッグには1.4xテレコンを入れておき、素早く着脱できるようにしている。戦闘機の撮影では、500mm F4でも800mm F5.6でも手持ち撮影することが多いが、風圧を避けるため、大口径超望遠レンズのフードは装着していない。