写真の撮り方ガイドブック
第10回(最終回)

アングルとフットワークで写真は上手くなる!

スマートフォンやタブレット、あるいはフィーチャーフォンの普及によって、私たちは「一人一台カメラを持っている」といってさしつかえのない時代に生きています。人々は端末からWebサイトやSNSを利用し、その中で写真を見る、あるいは自ら撮影することも、今や日常の一部といえるでしょう。

いわゆるミラーレスや一眼レフといったレンズ交換式カメラを使った撮影は、スマートフォンでの撮影と比べて難しそうなイメージがあります。しかし実際のところ、両者ともカメラとしての構造は原理的にほぼ同じであり、写真を撮影するうえで留意するポイントに違いはほとんどありません。

写真の撮り方ガイドブック」では、カメラの構造や設定項目の意味、光の捉え方、構図の作り方からレンズによる効果の違い、デジタルデータとしての写真の扱い方まで、写真の基礎と機材の使い方を一通りカバーしており、写真を本格的に学ぶ始めの一歩として使える一冊に仕上がっています。

本書はミラーレスや一眼レフカメラユーザー向けに作られた書籍ですが、スマートフォンでの撮影に応用できる部分も多いので、本連載では両者で共通して使える概念やテクニックを中心に紹介します。

本記事では前回に引き続き、Part2「写真で表現するために」より、写真の構図と主題を見る人に伝えるテクニックについての記述を抜粋して紹介します。

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写真の撮り方ガイドブック

構図の視点を広げる

写真撮影ではどのポイントから撮影を行うかで情景の見え方が変わります。具体的にカメラを構える高さ(位置)を示すカメラポジションと、カメラを向ける角度を示すカメラアングルのふたつはとくに意識したい要素です。

写真撮影では、どうしても自分の背丈に合わせてシャッターを押しがちです。まずは、1枚写真を撮ったら、次はカメラポジションやカメラアングルを変えて撮ってみるクセをつけてみたいです。何度かこれをくり返すことで、目の前の被写体に対し、直感的にどのポイントから撮るのがベストなのか、または、違うポジションやアングルから狙うとどんな写真が撮れるのか、おおよその予測が立てられるようになります。フットワークに関しては、慣れてしまうのが一番です。

ただし、ここで大事なことは、ポジションやアングルに関わるテクニックを通じて、「視点が広がっていく経験値」を上積みしていくことにあります。ものの見方はひとつではないという経験を積み重ね、実感していくことで構図のセンスは磨かれます。やはり撮ることが大事なのです。

カメラポジションの種類と特徴
カメラポジションはカメラを構える高さを指します。しゃがんで撮るような位置の「ローポジション」、自分の目線と同じ「アイレベル」、そして自分の背丈よりも上から撮る「ハイポジション」の3つです。

カメラアングルの種類と特徴
カメラアングルはカメラを向ける角度を指します。見上げる視点で撮る「ローアングル」、水平に向ける「水平アングル」、そして見下ろす視点で撮る「ハイアングル」の3つです。カメラアングルとカメラポジションは常に組み合わせて利用されます。

レンズで異なる構図の組み立て方

構図はレンズによって構成の難しさが変わります。総じて、狭い範囲を大きく切りとる望遠レンズのほうが写る要素が少なくなる分、構図の組み立ては容易です。広い範囲を一度に写し込む広角レンズは、主題に対して余計なものが周囲に入り込みやすく、構図の組み立てには注意が必要です。

ですから、構図の練習をするならば、望遠レンズを使うというのもひとつです。ただし、写る要素が限定的なため、逆にシンプルすぎて面白みに欠けることも。撮影内容がマンネリならば、肉眼と同じ範囲が写せる標準レンズを使ってみましょう。少しずつ写る範囲を広げていくのです。

レンズは広角になるほど入れ込む要素が増え、画面全体で考えることが増えます。特徴的な作画効果を踏まえた画面構成が必要になるのも、広角レンズのほうです。望遠レンズは手ブレしやすいなどの扱いにくさはありますが、こと構図に関しては、広角レンズのほうが圧倒的に難易度は高いです。広角レンズを使いこなせるようになれば、構図の壁をひとつクリアしたことになるでしょう。

ローポジションから感傷的に撮る
気軽に試せるフットワークがローポジションからの視点です。この作例も地面すれすれから狙うことで、手前の砂浜がぼけて、奥の波間がより印象的にとらえられています。

絞り優先オート/ F2.8/1/500秒/ISO160/50mm相当/+2補正

広角レンズで構図を考える
広角レンズでは、周囲に入り込む要素や作画効果などを総合的に考え撮影を行わなければいけません。強調される遠近感の影響で、手前に無駄な空間ができやすいのも広角レンズの特徴であり、注意したいポイントです。

絞り優先オート/ F5.6/1/320秒/ISO100/18mm

ポートレートでのフットワーク

ポートレートではカメラポジションやカメラアングルによって、その描写性が大きく変わることを覚えておきましょう。

下の作例のように、ハイアングルからの視点は被写体の表情を撮るのに最適。大人の場合は、相手にしゃがんでもらうと上から狙えます。この際、広角レンズを使うと顔の大きさが強調されてしまうので注意。標準、または中望遠レンズの使用がおすすめです。

一方、「ローポジション+ローアングル+広角レンズ」の組み合わせで見上げるようにして撮ると、今度は脚長小顔に被写体が撮影できます。これは、人物をスタイルよく見せたい場面で有効なテクニックです。

子どもをハイアングルから撮る
子どもの表情はどのようなときも魅力的。浜辺にて半逆光を使い、ハイアングルから中望遠レンズで撮影。

絞り優先オート/F4/1/250秒/ISO100/70mm相当/+1.3補正

構図は写真を縛らない

ここまでいくつかの構図テクニックを紹介してきましたが、写真は構図に縛られてもいけません。構図は画面内を整理して見やすくする作業ですが、これは必ずしも「写真の鋳型」を提示しているわけではないからです。

例えば、画面の中心に被写体を配置する「日の丸構図」は、何も考えずに被写体をとらえた悪例として時折取り上げられます。しかし、この構図法には主題を一番に力強く目立たせる効果があります。つまり、扱い方が大切なのです。画面周辺に余計なものが入らないように注意するのは、写真全体としてまとまりが生まれ、「ひとつの表現」としてよくなるからです。しかし、シーンによっては画面周辺は煩雑なほうが、臨場感が出て描写のアクセントになることもあります。そのほうが「ひとつの表現」としてしっくりくるのです。

構図とは与えられた鋳型に沿って撮るテクニックを指すわけではありません。被写体の配置や画面の切りとり方を通じて、何を一番に伝えたいのかを、自分自身で模索するきっかけを与えてくれるのが、構図に対する思考です。構図は表現を解放するツールであり、縛るツールではないのです。

日の丸構図が有効な場面
ろばを日の丸構図で写していますが、画面は単調でしょうか。むしろ手前でぼかして入れ込んだ柵の存在に打ち勝つのに、この構図法が重要な役割を果たしています。

絞り優先オート/F4/1/500秒/ISO160/40mm相当/+1補正

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