大村祐里子の露出レシピ
第1回

写真も料理も素材が重要〜露出がわかれば写真が変わる!〜

写真はカメラ、スマホ任せでシャッターボタンを押すだけできれいに撮れる世の中になりました。しかし、それで本当に自分の表現したい写真を撮れているのでしょうか?
写真家の大村祐里子さんは、『「光」をよく知ること、「光」を読むこと、そして「光」を作ることで写真が変わる』と言います。カメラ任せではなく、自分の目で被写体をよく見て、そこから表現したい光を作っていくことがプロの技なのです。
この連載では、シェフに扮した大村祐里子さんが、料理をするのではなく、撮影テクニックとしての露出のレシピを公開していきます。

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「デジタルカメラの液晶で見ればいまどのくらいの明るさなのかわかるから、露出計なんていらない」という声をよく聞きます。しかし!露出計を使いこなして、光を「数値」で捉えられるようになれば、よりイメージ通りの写真が撮れるようになりますし、現場の撮影スピードも段違いに速くなります。

ただ、露出計をどうやって使ったら良いかわからない……という方も多いと思います。この連載では全5回に渡って、日常的な撮影の中で、露出計をどのように使うべきか、基礎から応用までをご紹介していきます。

第1回目では、屋外でスナップ撮影をしながら、露出計の使い方の基礎を解説します。

ちなみに、なぜ大村がシェフの格好をしているかと申しますと、被写体(食材)をどう撮影(料理)するか、というプロセスはお料理に似ているから、です!

 

そもそも、露出計って何?

◇「露出」とは?

写真は、シャッターを切ってフィルム面や撮像素子に光を当てることで成り立ちます。しかし、その光が多すぎたり、少なすぎたりすると、人間の目で見たものと同じようには写りません。

そこで、目で見たときと同じように写すために、まず「露出」を知る必要があります。

「露出」とは、レンズを通してフィルム面や撮像素子に光を与えることです。より具体的に説明すると、「感度」に合った必要な光を「絞り」と「シャッター速度」を使ってフィルム面や撮像素子に与えることを指します。この「感度」「絞り」「シャッター速度」を露出の3要素といいます。

◇露出計とは?

その露出の3要素を教えてくれるものが「露出計」です。

今回使用する機材
セコニック ツインメイト L-208

露出計は用途に応じて様々な種類がありますが、今回はセコニックの「ツインメイト L-208」を取り上げます。

「ツインメイト L-208」はレトロでかわいらしく、手の中にすっぽり収まるサイズが魅力的です。露出計の搭載されていないクラシックカメラを使用する際のお供としても最高です。小型ですが、入射・反射兼用の機能が搭載されています。標準付属品のシュー取付板を装着すれば、カメラのホットシューに常時取り付けて使用することもできます。ダイヤルリング形式を採用していて、絞りとシャッター速度の組み合わせが一目でわかるようになっています。

コンパクトフィルムカメラのホットシューに装着しても邪魔にならないほどコンパクトなセコニック ツインメイト L-208

 

入射用拡散板(白い部分)をスライドすることで、入射・反射測定がワンタッチで切り替えられる。(左:入射光式/右:反射光式)

 

◆露出計を使ってみよう

◇「反射光式」と「入射光式」

露出計を使う前に、知っておくべきことがあります。

露出計は、測定方式の違いにより「反射光式」と「入射光式」の2つに分けられます。

「反射光式」露出計は、被写体から反射した光を測定する方式です。カメラに内蔵されている露出計も「反射光式」です。カメラや露出計という機械は被写体が白なのか黒なのかを判断できないため、一律で測定した部分がグレー(中庸な濃度:18%反射率のグレー)になる露出値を表示します。

「反射光式」

「反射光式」露出計で光を測定すると、白いものも黒いものもグレーに再現されたり、被写体の反射率(明るさや色など)によって補正が必要となったりしますが、カメラのある場所から直接被写体の露出を測定できるので、被写体に近づけないような遠景の露出を測定することが可能となります。

 

「入射光式」

一方、「入射光式」露出計は、被写体に当たる光を、被写体の目の前で測定して露出を決めます。被写体に当たる光自体を測定するので被写体の反射率や背景の明るさに影響されずに測定することができます。

したがって、白いものは白く、グレーのものはグレーに、黒いものは黒く再現されます。基本的には近づくことのできる被写体にのみ有効です。

今回使用する「ツインメイト L-208」は、「反射光式」と「入射光式」の切り替えが可能ですが、「入射光式」の方がわかりやすいので、「入射光式」での使用方法をご紹介したいと思います。

 

食材を見つけに屋外へゴー

まずは、屋外に咲いているピンク色の椿が可愛らしかったので、これを撮りたいと思いました。

撮りたいと思った椿の花を観察してみると、花そのものは光が強く当たって明るくなっていますが、花の背後は、光が葉っぱで遮られて暗くなっています。

この、光が強く当たって明るくなっている部分(ハイライト)と、光があまり当たらず暗くなっている部分(シャドウ)をそれぞれ露出計で計ってみます。

 

露出計 セコニック ツインメイト L-208の使い方

 

ハイライト部の露出を計る

明るい屋外なのでまずISO200に合わせ、光球を花の向きに合わせて測ります。

F4 1/1000 ISO200 EV14

ハイライト部に露出を合わせて撮った結果

私は、花をきっちり見せながらも、背景はある程度ぼかしたいと思ったので、絞りをF4にしました。露出計が、F4のときは、シャッター速度は1/1000秒と表示していたのでそれに従って撮影しました。花が中庸な明るさで写るので、結果として、花がくっきりと浮き上がり、背景は暗くなりました。

 

シャドウ部分の露出を計る

花の背後にある、暗くなった部分で計ります。

F4 1/250 ISO200 EV12

 

シャドウ部に露出を合わせて撮った結果

絞りはF4にしたいと思ったので、シャッター速度を1/250秒にして撮影しました。背景が中庸な明るさで写るので、結果として、(光が強く当たっている)花は少し明るく描写されました。

 

【シェフゆり子の調理結果】光を判断して露出を決めて撮った

撮影データ:F4 1/1000 ISO200

私は、椿の花だけが浮かび上がっているような写真を撮りたかったので、1枚目・ハイライト部で計測したときの写真を採用しました。

絞りはF4で固定すると、1枚目・ハイライト部で計測したときはシャッター速度が1/1000秒でしたが、2枚目・シャドウ部で計測したときは1/250秒でしたね。「ツインメイト L-208」の目盛り上で確認すると、ハイライト部とシャドウ部は「2段」の差がある、ということがわかります。この、何段の差、という話が次回以降大切になってくるので、心の片隅にとどめておいてください。

シャッタースピードと段数の関係

サクラと空を撮る

今度は、青空をバックに咲く桜を写したいと思いました。

桜をふんわり優しく撮りたかったので、逆光で狙ってみることにしました。フレーミングしてみると、空に背を向けている花がシャドウ部、背景の空がハイライト部、とわかります。

 

シャドウ部分の露出を計る

ある程度背景をぼかしたかったので、絞りはF4にしたいと思いました。

F4 1/250 ISO200 EV12

シャドウ部に露出を合わせて撮った結果

花の向きに光球を合わせて計測してみると、F4のときはシャッター速度が1/250秒と表示されたのでそれに従いました。花が中庸な明るさで写るので、結果として、(光が強く当たっている)背景は明るく描写されました。

 

ハイライト部の露出を計る

今度は、ハイライト部である青空を計ってみます。この場合、空の明るさだけをみたいので、光球を空に向けて計測します。

F4 1/4000 ISO200 EV16

ハイライト部に露出を合わせて撮った結果

空をしっかり描写したいので絞りはF11、シャッター速度は1/500秒を採用しました。空が中庸な明るさで写るので、結果として、花は暗い感じになってしまいました。青空をしっかり写したい方はこの測定方法を覚えておくと良いと思います。

 

【シェフゆり子の調理結果】光を判断して露出を決めて撮った

撮影データ:F4 1/250 ISO200

私は、桜をふんわり優しく撮りたかったので、1枚目・シャドウ部で計測したときの写真を採用しました。

 

 

木かげのベンチを撮る

木漏れ日とベンチ、という組み合わせがきれいだなと思ったので、見たままの光景を写したいと思いました。

フレーミングしてみると、木漏れ日が強く当たって明るくなっている部分がハイライト部、影になっている部分がシャドウ部、とわかります。

ハイライト部の露出を計る

ハイライト部である、木漏れ日が強く当たっている部分を計ってみます。

F5.6 1/1000 ISO200 EV15

 

ハイライト部に露出を合わせて撮った結果

状況をある程度しっかり説明できる写真にしたかったので、絞りはF5.6にしたいと思いました。F5.6のときはシャッター速度が1/1000秒と表示されたのでそれに従いました。木漏れ日が強く当たっている部分が中庸な明るさで写るので、結果として、全体的に暗く仕上がりました。

 

シャドウ部の露出を計る

シャドウ部である、影になっている部分を計ってみます。

F5.6 1/80 ISO200 EV11.5

シャドウ部に露出を合わせて撮った結果

F5.6のときはシャッター速度が1/80秒くらいと表示されたのでそれに従いました。影になっている部分が中庸な明るさで写るので、結果として、全体的に明るく仕上がりました。

 

【シェフゆり子の調理結果】光を判断して露出を決めて撮った

撮影データ:F5.6 1/160 ISO200

さきほど撮影した2枚は、どちらも見たままの光景とは違う感じでした。1枚目は暗すぎますし、2枚目は明るすぎると感じました。

F5.6、1/160秒で撮影したときが最も見たままの光景に近いと感じたので、この組み合わせを採用しました。

 

<シェフゆり子・ギャラリー>

F1.4 1/3200 ISO200

 

F1.8 1/200 ISO200

 

F2.5 1/200 ISO200

 

F5.6 1/200 ISO200

 

F8 1/100 ISO200

 

F1.4 1/4000 ISO200

 

F7.1 1/8000 ISO200

 

まとめ

今回は「ツインメイト L-208」を使って、屋外でスナップをしてみました。「入射光式」の測定方法でハイライト部とシャドウ部を計り、そこから導き出された絞りとシャッタースピードの組み合わせ次第で、表現できるものが変わってくる、ということがおわかりいただけたかなと思います。

今回は草木の撮影が多かったので、次回は、露出計とともに街スナップ撮影をしてみたいと思います!

 


メーカーサイト:セコニック ツインメイト L-208

販売サイトはこちら

協力:セコニック https://www.sekonic.co.jp/

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
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身近なものの撮り方辞典100

 

フィルムカメラ・スタートブック

 

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