光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング
第1回

ポートレート撮影で大切な心構え〜写真を撮る時に忘れてはいけない大切なこと

人物写真を撮る際に重要なテクニックは数多ありますが、その中でも特に重要度の高い技術は「光を読む力」でしょう。頭の中にあるイメージ通りに作品を撮影するにあたり、光を読む力を鍛えることは、機材選び以上に重要な要素です。

撮影時の光源として使える最も身近な光源機材は内蔵もしくはクリップオンストロボですが、作品づくりを念頭に撮影へ臨むならば、単に直射、バウンスするばかりでなく、ときにはストロボ自体を使わない、あるいは、そこまではせずとも光源の扱いを一工夫する必要も出てくることでしょう。

光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング」では、カメラから離れた位置にストロボを配置するライティングテクニックを中心に、オフカメラライティングの基礎知識から多灯ライティング、ストロボ撮影時の構図の考え方など、「光を読む」技術を多数紹介しています。

本記事では、Chapter1「ポートレート撮影で大切な心構え」より、ストロボ撮影をするにあたり、イルコさんが常に留意しているいくつかのポイントを紹介します。

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光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング

ストロボ撮影をはじめる前に

ストロボ撮影の技術を身につけるのも大事ですが、それよりも大切なのは、「光を読む力」と、「カメラマンとしてのマインド」です。どんな風に光を探して、どう被写体と向き合っているのか、写真を撮る時にいつも考えておきたいポイントをまとめました。

太陽を味方につける!

太陽は味方になることもあれば、敵になることもあります。太陽が被写体の前にあるとき(=順光)は、私からすれば敵。

なぜ順光は敵かというと、強い光が当たり、あまりキレイな影ができないから。ただし、例外的に使うことがあって、それは広角レンズで顔を小さく写すときです。顔が写真全体の大きな面積を占めないときはあまり影響がないので、たまに太陽の光を使うこともあります。85mmや135mmを使ったアップの撮影では使いません。

反対に太陽が被写体の後ろにあるときは味方です。後ろからの光が髪を照らしてくれるので、髪のエッジやボリュームを出しやすいです。露出は顔に合わせますが、背景が白飛びするようなら、露出をアンダーにしつつストロボを使って顔を起こします。屋外での撮影場所を探すときは、まずは逆光を探しましょう。

太陽が被写体の前にあるときは、影がキレイじゃない。順光のときは顔はアップにせず、広角で小さく写す

周りにあるいろんな光を見つけよう!

ストロボ・ライティングを始めている人も、これから始める人も、まずはクリップオンストロボの存在を考えずに、周りの光源を使って撮影してみましょう。私もたまに初心に返り、家にストロボを置いて出かけることがあります。ストロボを持たずに街に出ると、頭を使って光源を探すことができます。

たとえば自動販売機はとてもキレイなライティングができるので、夜の街で撮影するときは、自動販売機を探してライト代わりにしたりします。同様に、ショッピングウィンドウの光を使うこともよくあります。ショッピングウィンドウがある場所は通り沿いなので、道の奥行きを利用して、抜け感のある写真を撮ることができます。

また、ビルとビルの間から光が差し込んでいるところや、屋根が半透明になっている場所などは、キレイな拡散光になるので、昼間の自然光撮影で使ったりします。ストロボ代わりのものを、まずは探してみましょう。

ショーウィンドウの光で1灯ライティング。右側にあるショーウィンドウの光だけで撮影!

ロケーション選びはこの3つをチェック!

1. 太陽が前から来ないこと

太陽が被写体の後ろに来るように

2. ラインがけっこうあること

建物や道などで奥行きを出す

3. 自然や空がたくさんあるところ

広角レンズは空を大きく入れて気持ちよく

ポートレート撮影をするときに、特別な場所に行く必要はありません。どんな場所でも、自分なりの視点を見つけて撮れるようにしたいものです。

自分の写真が確実に撮れるロケーションとしていつも見ているのは、おもに3つのポイントです。

1つは「太陽が被写体の前から来ないこと」です。逆光になるような方向から、被写体にストロボを当てて撮ることが多いです。

2つめは「ラインがけっこうあること」です。道路や橋、壁などの奥行きを利用することで、抜け感のある写真を撮ることができます。

そして3つめは、「自然や空がたくさんあるところ」。私はほとんど絞りは開放で撮るので、植物を前ボケや背景ボケに入れてやわらかい雰囲気を作ったりします。また、広角レンズを使うときは空を大きく入れて開放的で空気感のある構図にしたりします。

悪条件はいい写真が撮れるチャンスです!

キレイな光が回った撮りやすい場所ばかりで撮っていると、限られた写真しか撮れません。雨が降ったり、雪が降ってめっちゃ寒いときは撮影に出かけるのが面倒になりがちですが、そんな悪条件のときこそ、今までとは違う写真が撮れるチャンス。撮ろうともしなかった新しい写真が撮れます。

私は日が暮れて真っ暗になると、テンションが上がってきます。光を自由に作ることができ、自分の表現ができるからです。

ストロボは被写体の後ろに隠す!

「どうやって撮ればいいんだろう」と迷ったときこそ、頭を働かせて、新しい写真を撮ってみましょう。

また、悪条件の天候ではモデルも過酷な状況になるので、待たせないようにセッティングし、撮れるように練習しておくことも大切です。2~3分で撮影を終えることもけっこう多いです!

RAWモードで撮る!

画像はRAW+JPEGで撮ることをオススメします。なぜかというと、1つは人間の目で見た環境に近づけることができるから。人間の目はとてもよくできていて、明るいところも暗いところも同時に捉えていますが、カメラは目の環境と同じようには捉えられません。RAWで撮ることによって、あとからハイライトとシャドウの差を埋めることができ、目で見た情景に近づけることができます。

もう1つは、目で見えない情景を作れるということです。撮っているときと、編集をしているときでは考えていることが違います。あとから記憶を読み解き、イメージの世界を自由に作れるのもRAWならではです。

撮影時は明るい色合いだったけど……
少しくすんだ印象が記憶色

ハードディスクは最初から大容量を買っておこう!

ハードディスクドライブは、ウェスタンデジタルの4TBの3.5インチHDDを3台並行して使っています。1台めは編集前と編集中の写真データ、2台めは編集済みの写真データ、3台めは動画のデータです。同じ色だと混同してしまうので、黒、赤、青と3色を使い分けています。すぐにいっぱいになってしまうので、最初から大容量のハードディスクドライブを買っておくことをオススメします。私はこれに加え、NASサーバーでバックアップをとっています。

編集前、編集後、動画、と色で分ける

うまい人のマネしてもいいけど世の中に出さない

「写真上達のためには、うまい人のマネをしろ」とよく言われるけど、私はあまり好きじゃない。機材のセッティングや操作がうまくできるようになるために、誰かの方法を見ながら練習して理解するのはいいかもしれないけれど、なるべく早くマネ段階は抜け出したほうがいいと思います。マネをして練習したものは、自分自身が恥ずかしいので、人には見せないし、SNSなどを通して世の中に出すこともないです。

セッティングや操作方法、光の数値の基本さえ理解すれば、あとは自分の頭で考えて、実際に撮って、修正して、アーティストとしての作品をたくさん撮って行くほうがずっと大事です。。そのほうが面白いし、自信をもって作品を見せることができると思います!

被写体に負けない!

たとえば、めっちゃキレイな人なら、誰が撮ってもキレイに撮れます。鍛錬したバレエダンサーだったら、どんなアングルから撮ってもキレイな身体のラインになります。でもそれは、被写体の努力が生んでくれた美しさであって、自分の力ではありません。そのモデルさんでなければいい写真が撮れない、というのでは面白くない!

そこに、いかに驚くようなもの、ハッとするようなオリジナリティーを盛り込めるかが、カメラマンとしてのスキルだと思います。被写体の魅力に任せることなく、モデルが5割、カメラマンも5割の力で作品を作れるよう、スキルを磨きましょう。

何があってもポジティブ!

撮影をしているとき、ネガティブな言葉は使わないようにしています。たとえば、「ピントが合わなかったから、もう1回」とか「ちょっと暗すぎたからもう一度」などとわざわざモデルに言ったら、「このカメラマン、腕は大丈夫なのかな?自信なさそう」と思われてしまうかもしれない。また、言葉で伝えなくも不安そうな態度だったら、モデルに自分のポージングがよくなかったかな、と思わせてしまうかもしれません。

たとえピントが合わなくて失敗したとしても、「ちょっと面白いこと考えたので、もう1枚撮ります」とか、「オッケー、めっちゃいい感じだから、もうちょっと撮ります」という風に笑顔で伝えて、うまくできなかったことを知らせないようにします。それを相手に伝える必要はないし、自信があるように見せたほうが絶対にうまくいきます。

私はもともと人見知りで、コミュニケーションをとるのはあまり得意ではなかったんだけど、いつも笑顔でいるように心がけるようにしました。そうすると、すれ違う人も自然に笑顔になり、声をかけられることも多くなって、自分を取り巻く環境がいい感じになっていくのがわかります。

だから、撮影だけに限らず、何があってもポジティブな方向に考えて、笑顔でいる。ネガティブな言葉は使わない癖をつけることが大切だと思っています。


光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング

著者プロフィール

ILKO ALLEXANDROFF (イルコ・アレクサンダロフ)

ブルガリア出身、神戸在住のフォトグラファー。
ファッション、ポートレート、ウェディングなどを中心に活動し、
ストロボを使った独自の撮影スタイルがブレイク。
YouTubeに撮影技術を紹介する動画を多く投稿し、
Facebook、Instagram等のSNSでも多くのファンを獲得する。

書籍(玄光社):
光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック

光の魔術師イルコのオフカメラ・ストロボライティング

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