オールドレンズ・ライフ
第17回

アダプターを特注してでも使ってみたい超個性派レンズ Fed 28mm F4.5

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019」に掲載している特集のひとつ、「マニアが隠れて使う名レンズ」では、シンプルに写りの良い名玉ではなく、使いこなし方を把握し、条件を揃えてはじめて楽しめる特徴的な描写を持つレンズ、ある意味「隠れ家」的なレンズを紹介しています。

本記事ではその中のひとつ、「Fed 28mm F4.5」の作例と解説を紹介します。

>この連載の他の記事はこちら
>前回の記事はこちら

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

難物レンズのご褒美は濃密フレア FED「Fed 28mm F4.5」

α7III + Fed 28mm F4.5 絞り優先AE F4.5 1/320秒 ISO100 AWB RAW フレアと周辺光量落ちが圧巻だ。ピントを合わせた中心部を見ると、思いの外繊細なシャープネスだ。

フェドのレンズは鬼門だ。39mm径のスクリュー式マウントだが、ライカLマウントよりも0.5mmほどフランジバックが短い。そのため、ライカL(L39)マウントアダプターに装着しても無限遠が出ないのだ。しかし、このフェド28mm F4.5は、無理をしてでも使ってみたい広角レンズである。

フェド28mm F4.5の登場は戦前の1937年だ。ライカのヘクトール28mm F6.3の登場よりも2年早く、F4.5という当時としては明るい28mmレンズを投入したことになる。レンズ構成は4群6枚で、独自の対称型を採用していた。ロシアレンズはカールツァイスをコピーしたものが多いが、フェド28mm F4.5はロシアオリジナルのレンズなのだ。

ここではmukカメラサービスにフェド用マウントアダプターを作ってもらった。フランジバックの調整はもちろん、レンズ側のフォーカシングレバーとマウントアダプターが干渉しないように配慮した構造だ。

現在手に入るフェド28mmは曇り玉が多く、この個体もご多分にもれず曇り玉だ。実写すると、霧の中を泳ぐような濃いフレアに包まれる。加えて、周辺光量落ちが強烈だ。ややもすると、ケラレているのではないかと錯覚するほどに四隅が落ちる。この個性、試さずにはいられない。

α7III + Fed 28mm F4.5 絞り優先AE F9 1/30秒 - 1.3EV ISO160 AWB RAW アンダーで夕景を撮影した。フレアを携えたままシャドウが沈み込み、独特の表現だ。F9まで絞ると、周辺部まで優れた解像力を見せる。
Fed 28mm F4.5 中古価格:35,000~45,000円 Fed mount 1937年に登場した4群6枚の広角レンズ。F4.5は当時としては明るい設計だ。ロシアレンズではめずらしく、独自の対称型を採用していた。
Fed改造アダプター 税別価格:10,000円 L39-SEマウントアダプターをFed用に改造したもの。フェドレンズは固体差があるため、レンズを送って個別に製作する。受注生産品だ。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

関連記事