かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。
「オールドレンズ・ライフ 2018-2019」に掲載している特集のひとつ、「マニアが隠れて使う名レンズ」では、シンプルに写りの良い名玉ではなく、使いこなし方を把握し、条件を揃えてはじめて楽しめる特徴的な描写を持つレンズ、ある意味「隠れ家」的なレンズを紹介しています。
本記事ではその中のひとつ、「Fed 28mm F4.5」の作例と解説を紹介します。
難物レンズのご褒美は濃密フレア FED「Fed 28mm F4.5」
フェドのレンズは鬼門だ。39mm径のスクリュー式マウントだが、ライカLマウントよりも0.5mmほどフランジバックが短い。そのため、ライカL(L39)マウントアダプターに装着しても無限遠が出ないのだ。しかし、このフェド28mm F4.5は、無理をしてでも使ってみたい広角レンズである。
フェド28mm F4.5の登場は戦前の1937年だ。ライカのヘクトール28mm F6.3の登場よりも2年早く、F4.5という当時としては明るい28mmレンズを投入したことになる。レンズ構成は4群6枚で、独自の対称型を採用していた。ロシアレンズはカールツァイスをコピーしたものが多いが、フェド28mm F4.5はロシアオリジナルのレンズなのだ。
ここではmukカメラサービスにフェド用マウントアダプターを作ってもらった。フランジバックの調整はもちろん、レンズ側のフォーカシングレバーとマウントアダプターが干渉しないように配慮した構造だ。
現在手に入るフェド28mmは曇り玉が多く、この個体もご多分にもれず曇り玉だ。実写すると、霧の中を泳ぐような濃いフレアに包まれる。加えて、周辺光量落ちが強烈だ。ややもすると、ケラレているのではないかと錯覚するほどに四隅が落ちる。この個性、試さずにはいられない。