ウエディングフォト撮影&ライティング実践講座
第1回

「ウエディングフォト」に必要なのはテクニックだけではない

結婚式とは、多くの人にとって、一生の思い出になる人生の一大イベントです。新郎・新婦の晴れ姿はもちろん、式に出席した親類縁者の顔ぶれや表情は、その日、その瞬間にしか存在しえないものです。それだけに、結婚式を記録に残すウエディングカメラマンの責任は重大。絶対に失敗できない過酷な仕事です。

では、ウェディングカメラマンに求められる技術や素養とは、一体どういったものなのでしょうか。「ウエディングフォト撮影&ライティング実践講座」では、現役のウエディングカメラマンが仕事に臨む際の心構えから段取り、必要とされる技術、仕事環境にいたるまで詳細な解説を行っており、ウエディングカメラマンという仕事を理解するのに最適な一冊です。

本記事では、Chapter1「ウエディングフォトグラファーとして写真を撮るために」より、ウエディングフォトを撮影するにあたっての心構えについてご紹介します。

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ウエディングフォト撮影&ライティング実践講座

 

ウエディングを撮ることについて考える

ウエディングの撮影は目の前のふたりの幸せな瞬間をつぶさに記録し、思い出に残すことにあります。わたしたちがウエディングを撮るときに持っておきたい心構えについて、まずはいっしょに考えてみましょう。

ウエディング撮影で求められること

ウエディングの撮影は、撮影テクニックだけでは完遂できません。新郎新婦への思いやいい写真を残したいという強い気持ちが、撮影を行う際の推進力になります。

新郎新婦の一番近くで感動のワンシーンを撮る魅力

ウエディングフォトの主役は紛れもなく新郎新婦です。ウエディングフォトグラファーは新郎新婦に喜んでもらうために誰よりも一番近くで、そして誰よりも長く付き添いながら、幸せの瞬間を撮影します。まず、ここは忘れてはいけないポイントです。ウエディングフォトは自分の作品撮りではありません。極端な話、自分がよく撮れたと思っても、新郎新婦がそう思わなければ意味がないのです。独り善がりになってはいけないのです。

ウエディングフォトグラファーは、新郎新婦がどんな写真を撮ってもらいたいのかを常に考えながら、撮影に臨まなくてはいけません。これは広告や雑誌の仕事とある意味でいっしょです。ここでは必ずクライアントの要望に応える写真をきちんと撮影することが、フォトグラファーには求められます。ウエディングの場合、このクライアントが新郎新婦です。“このフォトグラファーに撮影をお願いして心からよかった”と新郎新婦に思ってもらえるような写真を残すことが、わたしたちに課された最大のミッションなのです。直接、そんな感謝の言葉をもらえることが、この仕事の醍醐味とも言えるでしょう。

とは言え、こうした満足を新郎新婦に得てもらうには、わたしたちはどんな努力をするべきなのでしょうか。もちろん撮影テクニックは重要です。次のチャプター以降で、光の見方やとらえ方、さらに具体的なライティングまでを事例とともに解説していきます。

当時の記憶が自然と思い起こされるような写真を残す

わたしはいつもその場の臨場感を写真に写したいと思ってウエディングを撮っています。これはつまり笑い声や会場の音が聞こえきそうな写真です。振り返って、写真を見直したときに、ありありとその感動が蘇る。そんな写真を常に撮りたいと思っているのです。

しかし、撮影テクニックだけでは“本当のウエディング写真”は撮影できません。先ほど主役は新郎新婦と述べましたが、ウエディングでは、なにもこのふたりを単にモデルのように撮ればいいわけではありません。祝福の日を迎えた新郎新婦の心模様や周囲の様子にそっと寄り添いながら撮影していくのです。まずは、ともにその感動に浸りつつ、“とにかくいい写真を残したい”という強い気持ちで撮影に臨むことが大切です。

そうしたフォトグラファーの温もりは新郎新婦に伝わるものです。それは端的に新郎新婦の表情やしぐさに現れます。このときはじめて新郎新婦との間に信頼関係が構築されます。安心感も芽生えます。これは建前のコミュニケーションでは到底生まれません。わたしたちはどうしても撮影テクニックに考えが傾きがちですが、ウエディングフォトグラファーに求められるものは、こうした新郎新婦との“絆”なのです。ウエディングではさまざまな被写体にレンズを向けますが、そのすべては新郎新婦に関わるものとして撮影を行っているわけです。

ウエディングは10組あれば10通りのドラマがあります。同じように組まれた進行でも、それぞれに毎回異なる感動があります。ですから、撮る写真がどれも同じになるはずがありません。アルバムをつくっても、それぞれに違う展開、流れがあります。新郎新婦との信頼関係が強いほど、こうした臨場感ある感動のシーンは発見しやすくなります。ここにフォトグラファーとしてウエディングを撮る最大の魅力があるのです。


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