宇佐美雅浩写真展「Manda-la in Cyprus」

ミズマアートギャラリー
開催中 ~2018年3月24日 ミヅマアートギャラリー

Manda-la 最新作はキプロスの「今」と「未来」を描く

宇佐美雅浩「Manda-la in Cyprus」が2月21日よりミヅマアートギャラリーで開催中だ。

「Manda-la」は宇佐美さんが長年取り組んできた写真プロジェクトで、主人公となる人物の個人的/社会的背景、人間関係や仕事、趣味、生活を仏教画の「曼荼羅」のように1枚の写真におさめるというもの。20数年前の学生時代、友人たちの部屋を訪ね、友人と部屋のものを並べて撮ったことが元々の始まりだが、その視点は制作を重ねる毎に家族、街、国家へと広がり、神道と仏教の出会いをテーマに京都東寺で撮影された「真言宗総本山東寺僧侶瀧尾神社宮司 六孫王神社宮司 京都 2014」、広島原爆ドーム前で総勢500人規模の撮影をした「早志百合子 広島2014」など、規模もテーマもより大きなものとなってきた。
今回展示されるのは、昨年12月、キプロスの都市パフォスで開催されたPafos 2017で発表された作品。キプロスは1974年の紛争以降、ギリシャ/ギリシャ正教系住民が住む南側と、トルコ/イスラム教系住民の住む北に分断された。南北の行き来は比較的自由だが、南と北の間には緩衝地帯が設けられている。

南北分断により住人達は住む家を離れ、それぞれ南と北に移り住んだ。この写真では現在北側に住むトルコ系キプロス人ゼフラ・ネブザットさんと家族を南側の以前住んでいた家で撮影(写真上)、同様に南側に住んでいるギリシャ系キプロス人アナスタシス・パヴルさん家族を元の北側の家で撮影した。門の向こうには家族の日常があるが、その門は閉ざされていて、帰ることができない現在を伝える。

Pafos 2017の招待作家として作品の依頼を受けた宇佐美さんは、1年をかけてそんな歴史的、政治的背景のあるキプロスで、22点の写真=曼荼羅を撮影した。

このページではその中から2点を紹介しているが、メインとなる作品は南北のキプロスの人たちを一同に集め、ドラム缶で緩衝地帯を作り、その真ん中で子供たちと兵士が花でキプロス島を作っている情景(もちろん合成なしの一発撮影)。キプロスの一般的家庭の食事風景や伝統的産業の機織り機などを背景に置くなど、いつもながら細部まで設計された写真は、このページでは紹介しきれない。是非、会場の大判プリントで見て欲しい。

また会場では制作中に撮影されたドキュメント映像も併せて上映される。


コマーシャル・フォト 2018年3月号

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