大村祐里子の身近なものの撮り方辞典
第1回

「煙」は逆光と背景を使って存在感を出すのがコツ

「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第1回のテーマは「煙」。刻一刻と形を変える煙の写真に正解はなく、直感を信じることで個性的な写真になるといいます。

大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。

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身近なものの撮り方辞典

撮影のポイント

1. 構図の中でバランスがよいと感じた瞬間、シャッターを切ろう。
2. 暗い背景を選ぼう。

富士フイルムFUJIFILM X100T レンズ焦点距離:23mm f2 1/1250秒 -1.67EV補正 ISO200 マルチ測光 WB: オート RAW

古民家で、囲炉裏にくべられた薪から出る煙を撮影しました。この時はとにかく「自分がいいと思う煙の形」になるまでシャッターを切り続けました。写真は一撃必殺で撮るべきだと言いますが、煙のようにどんどん形を変えていくものは、連写機能を存分に使って捉えるべきだと思います。私は、光の加減で煙が青白くなっているところが、神々しくて好きです。

気持ちよく感じるバランスは?

煙は刻一刻と形を変えていきます。写真を全体的な視点で捉え、構図の中で、煙の形が気持ちよいバランスになった時、シャッターを切ってみましょう。煙だけに注目するのではなく、全体の構図の中で煙がどのような形になっているかに注意を払うのがポイントです。正解はありません。あなたが「この煙の形が気持ちいい!」と思った瞬間を大切にしてください。自分の直感を信じましょう。それが“個性”になります。写真を「全体的」な視点で捉える力を身につければ、今までとは一味違った写真を撮れるようになります。

煙を表現するには背景を暗く

煙は色が白っぽいので、暗く、黒っぽい背景の前で撮影をした方が引き立ちます。白っぽい背景の前で撮影をすると、煙が背景に溶け込んで見えなくなってしまいます。また、煙の白さを際立たせるためには、被写体の輪郭をハッキリ見せる効果のある「逆光」で撮影をしてみましょう。窓の近くは逆光になりやすいのでオススメです。

キヤノンEOS 5D Mark II カールツァイス Makro-Planar T* 2/50 ZE f4 1/100秒 ISO200 評価測光 WB: マニュアル RAW

煙といえば、日本の夏の定番・蚊取り線香です。蚊取り線香から出る煙は、細く、糸のような形でゆっくりと上に向かっていくのが特徴です。その、ちょっと華奢な感じが伝わるような煙の形になった時にシャッターを切りました。すぐ後ろに窓があるので、煙自体が細くても、逆光効果で煙の存在感は失われません。

キヤノンEOS 5D Mark II カールツァイス Makro-Planar T* 2/50 ZE f2.8 1/30秒 ISO2500 評価測光 WB: マニュアル RAW

身近な煙といえばタバコですね。わたしは非喫煙者なので、いくつになってもタバコの煙が珍しくて仕方がありません。車の中でタバコを吸っている男性の横顔と、前方に流れる煙のバランスが良いと思ったのでシャッターを切りました。前方からやや緑っぽい色のライトがあたっているので、男性の顔と煙が緑っぽく照らされ、煙を吐き出す音が聞こえそうな、静かでやや淫靡な雰囲気に仕上がりました。

キヤノンEOS 5D Mark II カールツァイス Makro-Planar T* 2/50 ZE f11 1/100秒 ISO200 評価測光 WB: マニュアル RAW

引きの構図で煙を撮りたい! と思ったら、やはり工場の煙突から出る煙でしょう。青空に向かって伸びていく煙がまるで雲のように見えたので、煙が伸びていくところをメインにして、バランスが良いと思うタイミングで撮影しました。他の3枚のように背景が暗くなくても、色がついていれば煙自体を写すことができます。変化球としてこういう写真もアリですね。


身近なものの撮り方辞典

著者プロフィール

大村 祐里子


(おおむら・ゆりこ)

1983年東京都生まれ
ハーベストタイム所属。雑誌、書籍、俳優、タレント、アーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動中。著書「フィルムカメラ・スタートブック」、「身近なものの撮り方辞典100

ウェブサイト:YURIKO OMURA
ブログ:シャッターガール
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