映画のタネとシカケ
第2回

映画にはタネとシカケがある!シーンの主題を明確にするカメラアングルとブロッキング

映画の楽しみ方は人それぞれ。ストーリーや出演俳優、監督はじめ参加している制作スタッフそれぞれの仕事を目当てに鑑賞する人もいるでしょう。どのような映画であれ、制作者の持ち味は作品に滲み出てくるものです。では、その「持ち味」とはどのようにして形作られているのでしょうか?

映画のタネとシカケ」では、映画の制作において使われる技術的な工夫(タネとシカケ)に注目し、演出意図に沿った映像作りの方法論を図解によって詳しく解説しています。

収録タイトルは『ジュラシック・パーク』『ラ・ラ・ランド』『パラサイト 半地下の家族』『マッドマックス 怒りのデス・ロード』など11作品。

本記事では『ジュラシック・パーク』の解説より、観客の視点を誘導するブロッキングと照明効果について抜粋して紹介します。

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映画のタネとシカケ

研究室内を見回すブロッキング(A)

このショットの前半では、研究室内の螺旋階段の降り口に、研究室を真ん中で仕切るように置かれている机が、効果的なブロッキングを生み出します。

グラントたちは階段から降りた後、研究室の中を見回しながら、机に沿って歩くことになります。このグラントたちの動きをフォローするカメラのパンは、背景になっている研究室の様子を満遍なく見せるので、観客も研究室の中を見回したような気持ちにさせられます。

研究室への入室から恐竜の卵の孵化器までのグラントたちとカメラの動き

卵から視点を外させないブロッキング(B)

ショットの後半のブロッキングでは、孵化器の中にある孵化直前の恐竜の卵の真後ろで、グラントたちは入れ替わりながらセリフを喋ります。ここで卵の真後ろでセリフを喋らせるのは、卵とグラントたちに強い関係性を持たせて、主役の卵から観客の視点を外させないことで、主題を明確にするためです。

恐竜の卵から観客の視点を外させないグラントたちの動き

Aのカメラ位置5、6、7の部分をさらに細く見てみる。

観客は恐竜の卵よりも、セリフを話すグラントたちを見てしまう。卵はこのシーンの主役なので、観客の視点を卵から外させないブロッキングが必要になる。

喜びと興奮を後押しする照明の色

最初のショットが終わったあとは、卵から恐竜の幼生が誕生するのが和やかに描かれます。研究室全体はブルー系の冷たい色の照明に対して、孵化器の周りだけは孵化器(保温用ヒーター)が光源になったアンバー系の温かい色の照明が使われています。陰影が少ない温かみのある映像は、新しい生命の誕生を目撃する、グラントたちの感激と興奮を後押しします。


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