ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年
第7回

【重要】ドローンを扱ううえで知っておきたい電波の知識

個人・企業を問わず普及が進んでいるドローンは、低コストで空撮をしたい場合に採れる最も有効な手段です。いまやミュージックビデオや映画、TV番組の制作、調査研究など、幅広い用途で活用されていますが、ドローンを使って空撮を行うに際しては、映像の基礎はもちろん、適切な高度やアングルを選ぶ操作技術のほか、関連する法令や飛行可能な区域なども把握する必要があり、適正かつ安全に運用するためのハードルは依然として低くありません。

「ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年」では、ドローンの構造から操作の基本、構図の作り方、飛行許可の申請にいたるまで、ドローンで空撮を行うにあたって必要な知識を幅広くカバー。プロユーザーの作例も収録しており、初めてドローンを扱う初心者にも理解しやすい一冊にまとまっています。

本記事では、チャプター4 「ドローン飛行に関わる各種法令を把握する」より、航空法以外の法令についての記述を抜粋して紹介します。

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ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年

航空法以外の各種法令

ドローンを飛ばすためには航空法以外にも様々な法令が関わってくる。場合によっては航空法以外に使用許可の申請が必要なこともある。

ドローンで使用できる電波は電波法で定められている

ここまでは航空法の概要と申請方法について紹介してきたが、ドローンを飛ばすためにはその他の法令も意識しておく必要がある。まずその一つ目は「電波法」。世の中には無数の電波が飛び交っていて、様々な用途に活用されている。電波法では「この周波数の電波はこういう用途で使いましょう」という規定があり、それらを使うためには基本的に無線局免許が必要になってくる。それにそぐわない使い方をした場合は処罰の対象になるので注意したい。

2018年12月現在、免許等が不要で日本国内でドローンの操縦に使用が認められている主な電波は2.4GHz帯という周波数の電波。電波法では他の無線機器に影響を及ぼさない「微弱無線局」や無線LANなど混信防止の措置が取られたものは免許不要で使用できる。DJIの「Mavic」や「Phantom」、「Inspire」シリーズに採用されているのもこの周波数帯。2.4GHz帯のドローンは、無線LANのような技術基準を採用しているため免許不要で飛ばすことができる。

また、ドローンでは操縦以外にもスマートフォンやタブレット端末でのFPV用の映像伝送のためにも電波を使用する。こちらも免許不要で使用できるのは2.4GHz帯の電波になる。海外では5.8GHz帯の電波を採用しているドローンが大多数を占めるが、国内ではETC等の電波に使われているためドローン(空中)での使用は基本的に認められていない。

日本国内の量販店等で購入したドローンであれば、技術基準適合証明(技適)を受けているため、問題にならないケースが多いが、ドローンを購入した際には念のため、ドローンのプロポに「技適マーク」の表示があるかどうかチェックしておくといいだろう。

ドローン飛行に関わる各種法令の例

航空法以外にもドローンの飛行に関わる法律がある。ドローンによる空撮文化を守るためにも各種法令を順守したい。

電波法:ドローンに使える電波の周波数帯は法律で規定されている

高い周波数の電波は伝送できるデータ容量が大きくなるものの、障害物に弱い。逆に低い周波数はデータ容量は小さいものの、障害物に強い性質を持つ。それぞれの周波数帯の中で適材適所の用途を割り当てている。電波法では、電波を発する物を「無線局」と規定しており、その使用には原則として無線局免許が必要になるが、車のキーレスエントリーなど数mしか飛ばない電波など著しく微弱な場合は免許は不要。我々が日頃使用する携帯電話の使用にも無線局免許が必要になるが、携帯事業者が包括して免許を取得しているため、ユーザーは免許の存在を意識せず使っているケースが多い。

従来までのラジコンではその操縦に27MHz 帯、40MHz 帯、72MHz 帯、73MHz帯が使用されてきたが、最近では2.4GHz帯を採用するものも増えている。空撮用ドローンでも2.4GHz帯を採用するものが多い。

ドローンでは操縦と画像伝送に電波を使用

ドローンでは機体の操縦とFPV用途の画像転送に電波が使われる。DJIなどコンシューマー向け製品は主に2.4GHz帯が採用されている。

技適マークをチェック

技適マーク とは「 技術基準適合証明マーク」 の略で電波法で定めている技術基準に適合している無線機であることを証明するもの。海外からの並行輸入品や個人輸入したものは、電波法の基準を満たしていない場合があるので要チェック。

新しく使用が認められた電波には免許が必要

2016年8月から新たな電波の周波数帯がドローン等無人ロボット向けに開放された。中でも注目なのは5.7GHz帯。5GHz帯は上図のように周波数とその用途が分類されている。前述の通りETC等に使われる5.8GHz帯は日本では使用不可。また、ドローンレースではアマチュア無線を利用してFPVを楽しむユーザーもいるが、これはあくまで「趣味」用途に限られ、業務の空撮には使用できない。5.7GHz帯は橋脚等のインフラ整備や火山調査などより遠くへ飛ばせて、より綺麗な映像を伝送したいというニーズに対応するためのもの。

総務省では情報通信審議会情報通信技術分科会で2015年3月から検討を始め、通信機メーカーやロボットのユーザー、有識者の意見を聞きながら、どうすれば他人に迷惑をかけずに使えるか技術的な検証を行なってきた。技術的には周波数帯を選ばなければ伝送容量はどこまでも高められるというが、専用の無線機を開発しなければならなくなり、一般に使われる帯域でないと安価な製品が作れない。そうした事情もあり、無線LAN等で使っている周波数帯をうまく活用するべきというのが辿り着いた結論だったという。海外の無線LAN規格と同程度の空中線電力で1Wを一つの目安に地上で1km、上空で5km程まで通信が可能と試算している。長距離の通信が可能な分、混信の可能性も高まるので、電波の知識のある人が無線局を開局し、事業用として使用することを想定している。さらに第三級陸上特殊無線技士の免許も併せて必要になる。

電波法:2016年8月より新たに使用可能になった電波帯

これらの周波数帯の使用には従事者資格と無線局免許が必要。

5.7GHz周辺の周波数帯

今回ドローンを含めたロボット等の無人機に開放された周波数帯は赤字で記した5650~5755MHz(5.7GHz帯)。これにより最大54Mbpsのデータを上空で約5kmまで飛ばせる。使用には無線局免許と無線従事者免許の取得が必要になる。空中線電力(アンテナから発せられる電波の強さ)は1W。

73MHz周辺の周波数帯

農薬散布用のラジコンヘリ等で古くから使われてきた周波数帯。その増加に伴い制御用周波数を4波追加して、総数11波になった。

2.4GHz周辺の周波数帯

現状では空中線電力が10mWになっているが、最大1Wにまで高まる。従来までの低出力のシステムでは免許は不要だが、高出力の新システムでは無線局免許や従事者資格が必要になる。

169MHz周辺の周波数帯

低周波の電波のためデータ容量が小さく画像は粗いが、障害物を回りこむ性質があるため、例えば災害救助用ロボット等の操作や緊急時のバックアップ的な役割での用途を想定した周波数帯。こちらも要免許。

電波法:免許が必要な周波数帯の電波の手続きの流れ

趣味か業務かで使える周波数帯と必要な免許と無線局開局の手続きが異なる。


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