ソニーα7R II+富士フイルムGFXで8Kタイムラプスに挑む

ビデオSALON.web」からの転載記事です。


以前、本誌連載「Videographer’s File」でも紹介した高嶋綾也さん。登録者数100万人を超えるYouTubeチャンネル「Peaceful Cuisine」を一人で運営する高嶋さんが今夢中になっているのがタイムラプス撮影だという。

今回、ノルウェーにてソニーα7R IIと富士フイルムGFXでの8Kタイムラプス撮影を行なったというので、その模様と8Kタイムラプスの制作方法についてレポートしてもらった。

映像・写真・文:高嶋綾也

8Kタイムラプスに挑戦した経緯

2016年にα7RIIを購入し、まだ誰もやっていない「天の川の8Kタイムラプス」を製作しようと撮影に行って製作はしたのですが、実際にYoutubeにアップロードしてみても4Kまでの解像度にしかならなく、色々と試しましたが、結局8Kでのアップロードが全くできず、GoogleやYoutubeの人にもどうしたらアップロードできるのか聞いたのですが、技術的な面できちんと回答できる人が日本にはおらず、去年は8Kは諦めてずっと4Kでアップロードしていました。

今年になって、「今アップロードしたらどうなるのだろう?」と思い、試しにApple ProResの8K素材をアップロードしてみると、正常にアップロードできたので、「今ならいける!」と思い、やることは去年と変わらないのですが、8Kのタイムラプスを製作しようと思いました。

ついこの前まではニコンのDfも併用して撮影していましたが、8Kにするには画素数が圧倒的に足りないので、もう1台のカメラをどうしようかと思い色々と調べていたところ、富士フイルムから中判ミラーレスのGFX50sがすでに発売されていて、広角レンズ(GF23mmF4)も発売されたばかりでした。

ニコンからもちょうどノルウェーの撮影の前にD850が発売予定でしたので、D850も選択肢に入ってはいたのですが、ボディだけで1kgあるのと基本的にはA7RIIとスペックはほぼ一緒なので、そこまで変わらないだろうと思い、今回は中判カメラに焦点を定めました。検索してみてもGFX50Sでタイムラプス製作をしている人はほとんどおらず、これは使ってみたら面白そうだなと思い、今回はご縁があり富士フイルムからGFX50Sと2本のレンズ(GF23mmF4、GF110mmF2)をお借りして撮影することになりました。

ノルウェーのロフォーテン諸島へ

今回はノルウェーのロフォーテン諸島という場所へ撮影に行きましたが、どうしても登山をして山頂でオーロラの撮影をしたかったので、機材や荷物は可能な限り軽いものにし、本当に撮影ができるギリギリのところまで量を減らして行きました。下記リストが今回持って行った機材です。

  • カメラ:ソニーα7RII、ソニー α7SII、富士フイルム GFX50S、GoPro HERO 5 Black
  • レンズ:ソニー SEL1635GM、富士フイルムGF23mmf4、FUJI110mmF2
  • 三脚:ジッツォGT2540LLVL + リアリーライトスタッフ BH-40 / ジッツォ GK1545T-82TQD
  • その他アクセサリ:レンズウォーマー、モバイルバッテリー、ブロワー、レンズペン、Genie Mini、水準器、ヘッドランプなど

GFX50Sでのタイムラプス撮影は苦難の連続に…

ノルウェーに到着し、タイムラプスの撮影を開始するまではタイムラプスに関してはすべてGFX50Sで撮影しようと思っていたのですが、実際に撮影を開始してみるとGFX50Sでの撮影は苦難の連続となりました。

一つ目は、チラツキと色調の変化です。すべてマニュアルでインターバル撮影、ホワイトバランスもK値指定で撮影しているにも関わらず、インターバル撮影したものを連続で再生してみると普通では考えられないくらいのチラツキが発生していました。メーカーに確認したところ、マニュアル撮影時でも一枚撮影するたびに絞りを開放から設定値まで絞り込む動作をする仕様らしく、この毎回の絞り込み時の微妙な差が影響しているのではないかとのことでした。

ただ、絞り開放で夜に撮影したオーロラのタイムラプスに関しても、チラツキが激しく、チラツキだけでしたら編集時のデフリッカー処理で抑えられるのですが、露出と同時に色調もかなり変わるために編集での修正がほぼ不可能でしたので、GFX50Sでの夜間のタイムラプスは途中で諦めることになりました。

二つ目は、風が強い時の画像の歪みです。三脚にしっかり固定しているにも関わらず、風が少し強い時は画像が頻繁に歪むことが分かりました。特に望遠レンズ(GF110mmF2)で撮影した時にこの現象が発生するようです。

画像全体のブレやガタつきでしたらPremiere ProのWarp Stabilizerなどで、ある程度は修正できますが、映像としては使えないほどにグニャグニャに歪みが発生するので、風が強い時はシャッタースピードが速くても写真の撮影自体ができないのでは?と感じました。おそらくセンサーの画像の読み取り方式もしくは読み込み速度が遅いために発生している問題なのではないかと思いますので、もしかしたらソフトウェアのアップデートで改善できる問題なのかもしれません。

広角レンズ(GF23mmF4)で撮影したタイムラプスでも、画像が歪んでいる様子が確認できます。「LOFOTEN in 8K」の01:00~01:08の間のシーンですが、よく見ると歪みが発生しているのがすぐに分かると思います。風速10m/sもなかったように思いますが、インターバル撮影という機能を搭載している以上、早急に対処してもらえるといいですね。

三つ目は、高感度撮影時のマゼンダ浮きです。画像の左上と左下を中心に、特にISO3200以上で撮影をするとマゼンダ色のぼんやりしたものが頻繁に発生します。シャッタースピードを長めに撮影する(5~8秒以上)、電子シャッターではなくメカニカルシャッターにする、長秒時NRをONにする、などで少し軽減されるようでしたが、完全に消えることはありませんでした。

上記の3つの状況から、GFX50Sでの夜間のタイムラプスは途中で諦め、日中に撮影したものも映像として使えるものは半分以下となってしまいました。ただ、風が強い時の撮影と高感度での撮影、この2つをしようとしなければ、撮れる写真の解像感や立体感は、やはり35mmフルサイズではどうやっても表現できないような写真をたくさん撮ることができました。

▲GFX50Sの写真。日中の写真撮影ではフルサイズ機でも撮影できない写真を撮影することができた。

GFX50Sはデジタルメーターでのピント合わせがしやすい

フジフイルムのレンズもソニーのレンズもそうなのですが、ピントリングの位置が固定ではありません。これが星の撮影時には意外と厄介で、モニターに表示されるデジタルのメーターを頼りに試し撮りを何回もして、やっと、ここら辺でピントが合った!となったらそれ以降ピントリングにはインターバル撮影時には絶対に触らないようにしないといけません。

ニコンやキヤノンの純正レンズであれば、レンズに付いているメーターでピント位置が目視で確認できますので、このレンズはこのピント位置で星にピントがドンピシャ、というのが把握できていれば試し撮りをしなくてもいいので楽なのですけど、富士フイルムとソニーの場合はそうもいきません。

ただ、GFX50Sのデジタルメーターは結構優秀で、「ここがピントの一番合っている部分です」というのと、「ここら辺まではピントが合いますという2段階表示で、マニュアルフォーカスでのピント合わせが非常に楽にできました。対してソニーのデジタルメーターは無限遠のあたりは特に分かりづらく、しかもタイムラプスアプリ起動時はデジタルメーターが表示されないという仕様なので、慣れるまでは非常に使いづらいしピント合わせに時間がかかります。

ソニーの場合は、一度タイムラプスアプリですべての設定をしてからアプリを一旦終了し、通常の写真撮影モードでピント位置を調整·試し撮り(SEL1635GMの場合は、絞り開放で撮影時は広角側で2m、望遠側で5mの位置にピントを合わせると星にピントが合います。が、これは個体差もあるかもしれません。)をしてからピントリングを触らないように再度タイムラプスアプリを起動して撮影を開始する、という使い方をしています。これもソフトウェアのアップデートで解決できると思うので今後のアップデートに期待しています。

オーロラの撮影

▲α7R IIで撮影したオーロラ写真の一コマ。

オーロラの撮影に関しては、シャッタースピードとインターバルは可能な限り早い方が良いです。オーロラもゆっくり動いている時もあれば早く動いている時もありますが、基本的にはすごく動く被写体なのでシャッタースピードが長ければ長いほど、ぼんやりとしてきます。

僕はいつもシャッタースピードは3秒以内にするようにしていますが、3秒でもシャッタースピードが遅いと感じる時もあります。α7RIIではシャッタースピード3.2秒/インターバル4秒でも撮影ができたのですが、GFX50Sではシャッタースピード3.2秒だとインターバルは5秒以上にしないと設定した間隔では撮影してくれませんでした。

一枚の写真を撮り終わってから次の写真を撮るまでに、最低2秒ほどは必要なようで、これもGFX50Sでのオーロラタイムラプスを諦めた要因の一つでもあります。α7RIIの場合は、一枚の写真を撮り終わってから次の写真を撮るまでの間隔が1秒未満でもインターバル撮影が可能です。

タイムラプス制作に使用したソフト

▲8Kの静止画からタイムラプス動画の生成に使用したソフトはLR Timelapse。

タイムラプスの制作には、「LRTimelapse」というソフトを使用しています。他にもタイムラプスが製作できるソフトウェアは色々とありますが、色々と試した中ではLRTimelapseが一番優秀です。

今回制作した『LOFOTEN in 8K』の冒頭ではDay to Night Timelapse(夕方から夜景になるシーン)を撮影しました。こうした手法はHoly Grail撮影といいますが、インターバル撮影をすべてマニュアル固定で開始して、露出計を見ながら0.7~1段ほど露出が変化(Day to Nightの場合は露出が暗くなったら)したら、インターバル撮影を一旦終了してシャッタースピードかISOを変更します。そして、またすぐにインターバル撮影を再開という作業を繰り返して撮影します。LRTimelapseではこうしたHoly Grailの処理も綺麗に処理してくれます。

Premiere Proのプロキシ編集で8K映像もスムーズに編集できた

▲LR Timelapseで生成した8Kタイムラプス動画の素材の編集はPremire Proのプロキシ編集で。

今回は8Kでの制作なので、元画像の解像度のままProResで書き出し、その素材を元にPremiere Proで映像として編集をしました。ただ、8K超えの素材は重すぎてカクついてしまい普通には編集ができません。

そこで、プロキシ編集をします。音楽と映像を綿密にシンクロさせたい時や、編集でパン・チルトやズームの動きをつけるKen burns処理を多用したり、映像にブレがある時や動きにムラがある時はWarp Stabilizer処理をするので動きがどんどん鈍くなりますので、プロキシ編集は特に4K以上の解像度の素材を使う時は編集がスムーズにできるので活用すると良いと思います。

撮影を終えて

センサーサイズが大きいほど高感度や夜間の撮影には強いと思っていたのですが、実はそうでもないのかもしれない。今回撮影してみて思いました。

今のところ、日中は中判デジタル、夜間は35mmフルサイズで撮るのが良さそうですね。またオーロラに限って言えば、解像度が4Kでも構わないのであればα7S IIでシャッタースピード1秒、インターバル2秒未満で撮影するのが一番良かったのかもしれません。特に今回のノルウェーでのオーロラは動くのが早かったので、Eマウントの明るい単焦点レンズをもう1本追加で持って行けば良かったと少しだけ後悔しています(笑。

GFX50Sは中判と言っても4433センサーなので、いずれはフェーズワンのIQ3 100MPとハッセルブラッドのH6D-100Cなど、すべての中判カメラでタイムラプスを撮影してみたいです。「中判カメラはとにかく広角レンズの選択肢がほとんどない」というのが大きなデメリットの一つですが、それでも写真自体の解像度や立体感にはいつも驚かされます。35mmフルサイズも含めて、どのカメラが一番タイムラプス撮影には適しているのか、皆さんも気になりませんか? カメラって本当に、楽しいですよね(笑。

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富士フイルムGFX50Sの製品情報
http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/gfx/fujifilm_gfx_50s/

ソニーα7R IIの製品情報
http://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7RM2/

転載元:ビデオSALON.web
https://videosalon.jp/2017/10/%CE%B17r-%E2%85%A1_gfx_8ktimelapse/


ビデオSALON 2018年6月号

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