地元のカフェ店長と若手クリエイターが地域の魅力を動画で発信
地域の商店街をクリエイティブの力で活性化させる動きが全国で広がっているが、昨年実施された大田区商店街PR動画コンテストは住民参加型の新しい試みと言える。
大田区の商店街の魅力をテーマに1分間の動画を募集したところ、124本もの応募があり、その中から最優秀賞を獲得したのは、池上の古民家カフェ蓮月が応募した「池上本門寺通り」。映像作品として他から抜きん出たクオリティを誇り、商店街の魅力を多くの人に伝える動画として仕上がっているが、それもそのはず、制作したのは企画演出の河内雄倫氏、撮影部の光岡兵庫氏を中心とした20代のクリエイターたちだ。
コンテストの開催を知ったカフェ蓮月の店長・輪島基史氏が、店によく遊びに来くる光岡氏に声をかけて制作が始まった。
「蓮月は築80年の古民家で、2年前にカフェとしてオープンしました。この建物を後世に残そうと日頃から地域のPRに力を入れていますが、このコンテストは若い人にもぜひ見てほしいので、ファッション的な映像が得意な彼と一緒に作りたいと思いました」(輪島氏)。
興味深いのは、そう語る輪島氏本人も制作チームも、誰一人として池上の出身者がいないこと。地域の魅力は、そこで生まれ育った人には当たり前すぎて、外の人の方が見つけやすいのかもしれない。
自主制作なので予算はゼロ。しかも本番2日前に出演者が変更となり、企画をイチから作り直したという。
「2人の女子高生が下校中に商店街で道草するという設定だけを作って、撮影中にナレーションを書いたり、即興で演出をつけました。その場の瞬発力で作ることに慣れているチームなので、無事にやりきりました」(河内氏)。
商店街会長やお寺の住職など地元の協力も得て、作品は無事完成。獲得した賞金は、輪島氏が制作チームに全額を渡して、労をねぎらったという。