デジタルカメラやスマートフォンの性能が上がり、シャッターを押せば誰でもカンタンに美しい写真が撮れるようになった。しかし、「ワンランク上の写真を撮りたい、もっとレベルアップしたい」という人も多いだろう。萩原ブラザーズこと、風景写真家の萩原史郎氏と萩原俊哉氏は、共著の「風景写真の便利帳」で自然風景撮影にかかわるさまざまなノウハウを紹介している。
第2回目は、「撮影編」から望遠レンズの使いこなし方をご紹介する。
CHECK POINT!!
- 風景の切り取りは望遠レンズが欠かせない
- ボケを活かして柔らかく表現
- 対比効果の高い圧縮効果を活かせ
眼前に広がる風景から自分の心に響いた部分を探しだし、要素を絞り込んで構図を作ることが多いことから、風景写真は引き算と言われることが多い。そのためには望遠レンズがベストチョイスだ。だが、切り取るだけでは十分に使いこなしているとは言えない。望遠レンズならではの特徴を知ることで、より多彩な写真表現ができるようになる。
まずはボケ効果だ。ふつう焦点距離が長くなればなるほどピント位置の前後がボケやすい。被写体に近付き、開放F値を選べばさらにボケる。このことを利用すれば、ぼかした背景から主役を浮き立たせて目立たせたり、前ボケを利用してふわっと柔らかな印象に表現することもできる。
一方、圧縮効果とは、異なる距離の被写体を画面上で重ねることで、見かけ上の距離差を縮めて被写体同士が近付いて見える効果だ。たとえば、桜と残雪といった異なる季節を対比させることで、季節の移り変わりを表現できる。
なお、望遠レンズはぶれやすい。三脚や手ブレ補正機能、ISO感度を上げてカメラブレを防ごう。
明るく柔らかなボケは春の風景によく似合う。そう考えながらナノハナを前ボケに選んで撮影したカットだ。たっぷりとナノハナを画面に入れて大口径望遠ズームレンズを選択。明るめの露出で春らしさを強調している。
季節を対比させる、樹の隙間からチラリと紅葉を見せる、背景を大きくぼかすなど、風景撮影における望遠レンズの役割は大きい。ボケを活かしやすいことから、優しさや柔らかさとった心情を表現しやすいレンズでもある。
陰影が印象的な紅葉の山並みに惹かれて撮影したカット。余計な要素を排除してシンプルに構成している。望遠レンズの切り取り効果に加え、圧縮効果によって近景、中景、そして遠景の山の斜面を対比させている。
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