醤油本 改訂版
第9回

濃口、たまり、甘口……醤油いろいろ、どの料理でどれを選ぶ?

醤油という調味料は、私たち日本人の食卓に欠かせない存在でありながらも、あるのが当たり前だが実はあまり詳しく知らない、という方もいるのではないでしょうか。

醤油本 改訂版」は、醤油の歴史から製造過程の詳細、好まれる味の地域性や蔵元への取材などを通して、醤油への理解を深めることのできる一冊です。醤油に関する広範なデータをコンパクトにまとめており、読めば自分好みの醤油を探す一助になることでしょう。2015年に発行した同名の書籍から内容を更新し、蔵元データのアップデートを行いました。

本記事では第2章「醤油を見つける」より、製造方法による味の違いと使い所について説明します。

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醤油本 改訂版

醤油の使い分け

料理上手への道は、醤油それぞれの使い所を知ることから始まる。

醤油には白、淡口、濃口、再仕込、溜とJAS規格で分類される5種類があります。

これらにはそれぞれに得意分野があって、使い所を見極めることでその力を発揮できます。素材本来の色や風味を生かしたい時は淡口や白醤油が向いていて、醤油の色や風味を添えたいものには溜や再仕込醤油が向いています。

濃口醤油はそれらの中間に位置し、どんな料理にでも合う万能調味料。その使い勝手の良さからも生産量の85%以上を占めるほど多くの人々に愛されています。

混合・混合醸造の醤油は大豆や小麦以外に様々な材料が含まれているため、5種類の使い方に当てはまらないことも。糖類や甘味料が入っていて甘いのが特徴なので、本書では「甘口醤油」と分類します。地域によって甘味や旨味に特徴があり、甘口醤油だからと一括りにしにくい部分もあります。

それぞれの醤油の傾向をつかみ、使い分けることで、料理の魅力をもっと引き出せます。味の違いを楽しみながら、ステップアップしていきましょう。

:食材に色をつけず甘さを添える
淡口醤油よりも淡い琥珀色の醤油。主原料が小麦であるため甘味が強く、麦麹の香りが特徴。だし巻き卵などの卵料理、鰹節ご飯、色の淡い洋食の隠し味など、素材の色や甘味を活かした料理にお勧め。

淡口:香りを引き立たせ、味わいを引き締める
関西を中心に西日本ではお馴染みの淡い色の醤油。だしや野菜や麺など食材の繊細な味や香り、色を活かす。特にだしと相性が良く、お吸い物や煮びたし、かけうどんや寄せ鍋などに使うと◎。

濃口:幅広い料理に合うバランス良き優等生
江戸前の魚は関西の白身とは異なり、背の青いクセの強い魚が多く、「臭み消し」として香りの強い醤油が発達した。つけ、かけ用はじめ、煮物、焼物、だし、たれなどの調理用としても万能に使える。

再仕込:濃厚料理の仕上げにかけてコクを出す。
材料も熟成期間も濃口の2倍かけるまろやかで濃厚な醤油。つけ醤油として刺身や寿司に好まれる。ソースの代わりにフライにかけたり、料理の隠し味としてカレーの仕上げに入れたりするのもよい。

:料理の味わいをより深く仕立てる
大豆の割合が多く、小麦が少ないため旨味が濃厚。塩分は濃口とほぼ同量あるため、しっかりとした味わいに仕上がる。料理の照りつやもよくなる。魚のあら炊きや照り焼き、煎餅などに適している。

甘口:甘口が定着する地域の地魚や野菜と一緒に
混合・混合醸造で造る甘い醤油は、基本的に地域密着型。濃口醤油ひとつとっても風味の幅は広く、生産地の食文化や好みによって甘味もバラバラ。旨味成分が多いことも多く、旨口醤油とも呼ばれる。


醤油本 改訂版

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