大切なカフェオレボウルや、長年使い続けた茶碗を割ってしまったとき、あなたはどんな気持ちになったでしょうか。きっと、ショックを受けたり、何か不吉な予感がしたりしたかもしれません。でもそんなとき、「金継ぎ(きんつぎ)」という、ささやかな魔法を知っていれば、すこしは心が楽になるかもしれません。
ナカムラクニオさんの著書『金継ぎ手帖 はじめてのつくろい』では、金継ぎの歴史や魅力、壊れたうつわを美しく修復する基礎的なノウハウなどを楽しく紹介しています。この記事では、大切なうつわの「欠け」を修復するテクニックをご紹介します。
金継ぎとは─── 金継ぎとは、割れたり欠けたりした陶磁器をうるしで接着し、継ぎ目を金、銀、朱色などで飾る伝統的な修理技法です。しかし金継ぎの本質は、単なる修理や修復とは違います。桃山時代の茶人たちは、ヒビの中に山水画的な得体の知れない美が宿っていることを見抜き、欠けた部分を想像力で「直す」ことをはじめました。つまり金継ぎとは、うつわのヒビや修復の痕に宇宙的な美を見出す「見立て」の技法なのです。 |
ここでご紹介する金継ぎは、ふぐ印の「新うるし」を使って直す簡易的な方法です。かぶれの心配がなく、どなたでも簡単に作業できます。
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金継ぎに使う道具と材料
①:ふぐ印の新うるし(金粉付)
②:ふぐ印薄め液
③:スポイト
④:瞬間接着剤(アロンアルファ)
⑤:カッターナイフ(デザインカッターも便利)
⑥:合成樹脂(エポキシパテ) ※セメダイン金属用など
⑦:紙やすり(耐水ペーパー) 400番(荒)/1000番(細)
⑧:面相筆(0号)
⑨:竹ヘラや竹串など
⑩:パレット
⑪:マスキングテープ
⑫:小さじ
STEP 1
欠けた部分を洗ってきれいにしましょう。
うつわの欠けた傷口の部分を洗って、よく乾かしておきます。表面がざらざらしたままの状態だと接着力が弱くなってします。特に土が柔らかい焼き物は、欠けた断面をきれいにしておきましょう。
STEP 2
パテ(合成樹脂)を準備しましょう。
合成樹脂は、白とグレーの二層になっています。カッターで使う分だけサラミのようにスライスし、同じ量を混ぜます。マーブル状態になったまま混ざっていないと硬化しません。
※ベタベタ感が気になるかたは、ビニール手袋を着用して下さい。
STEP 3
パテ(合成樹脂)を練りましょう。
色のむらがなくなるまで、1分くらいよく練り合わせます。欠けと同じくらいの分量を、すばやく指で丸めましょう。15分くらいで硬くなりますので、使う分だけ混ぜて下さい。
STEP 4
欠けを埋めましょう。
きれいな一色になったら、小さく丸めて、傷口に押し当てます。傷口のアウトラインより、多少大きめの方が、仕上がりが美しくなります。欠けがギザギザの場合、傷全体を隠すようにパテをつけるのがオススメです。
STEP 5
表面をきれいに仕上げましょう。
のんびりしていると、あっという間に硬くなってきます。欠けを埋める作業は、3分程度で終わらせるのがコツ。ヘラなどを使い、パテの表面や輪郭線を美しく仕上げます。
STEP 6
耐水ペーパーでヤスリがけしましょう。
400番~1000番程度の耐水ペーパーをハサミで切ります。ペーパーに水をつけながら表面を研いでいきます。周辺に傷を付けないように、優しく作業して下さい。
仕上げの前に、傷口の周りの汚れをきれいにしましょう。
STEP 7
金粉と新うるしを混ぜましょう。
絵皿(パレット)に金粉と新うるしを1:1で混ぜます。
薄め液を数滴たらしながら、ゆっくりと混ぜる。ハケ目がすっと消えるくらいがちょうど良いです。
ムラがないようによく混ぜましょう。
STEP 8
合成樹脂(パテ)の上に金うるしを塗りましょう。
白い部分を覆い隠すように金色になった新うるしをのせていきます。置いていくような感覚で、ゆっくりと作業しましょう。たっぷりつけすぎて垂れてこないように注意。
STEP 9
乾いたら完成です。
1〜2日程度、自然乾燥すると完成です。金継ぎされた部分は、柔らかい布にオリーブオイルをつけて磨くと、さらに輝きます。くれぐれも電子レンジや食洗機の使用は避けて下さい。
※うつわの使用に際しては、商品記載の方法を守り、完全に乾燥させてからにしてください。
<玄光社の本>