永沢まことの街歩きスケッチ入門
第7回

これなら描ける!構図に頼らずに描く「一点突破」スケッチ

『永沢まことの街歩きスケッチ入門』は、絵描き・イラストレーターの永沢まことさんが、日々の暮らしを営んでいる街のなかを歩きながら、感じたこと、気になったものや人や風景を気軽にスケッチする楽しさを紹介した一冊です。

第7回では、あらかじめ構図を決めず、直感で決めた一点から描き始める「一点突破」スケッチのノウハウを紹介します。

永沢まことの週末は街スケッチ
永沢まことの街歩きスケッチ入門

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永沢まこと-街歩き-第7回-11

「構図」を気にせず描く「一点突破」という方法

目に留まったモノから描けばいい

絵の入門書には、絵を描く時は、まず「構図」をとるべしと書かれています。「構図をとる」ということは、これから描こうとする風景や題材を、白い紙の上にどうかたどり、配置するかを、頭の中だけでなく、下描きのカタチで具体的に描くということです。例えて言えば、旅に出る前のプラン作りのようなものです。

几帳面な人は、キチンとした構図をとって描こうとするでしょうし、大ざっぱな人は、大まかな構図で描こうとするのではないでしょうか。構図をとることについての考えは、人によってかなり違ってくるのだと思います。

私自身は、描く前にほとんど構図はとりません。旅のプランをきちんと立てるのも苦手です。とはいえ、絵を描き始める時は、気持ちをかき立てる手掛かりが必要です。そこで、私がよく使っている方法を紹介しましょう。構図をとることなく描ける「一点突破」です。

① ある晴れた日。窓辺の花びんに挿した一輪の花が目に留まりました。思わずペンをとってスケッチブックにサラッと花を描きました。

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② 花の「一点」が出来ると、そこから水の輪が広がるように描くモノが広がります。描くつもりのなかった外の電柱も流れで描いてしまいます。

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③ 直感で決めた「一点」の花から「突破」してこんな絵になりました。構図をとらないと、予想外の絵が出来るから面白いです。

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窓辺のアリストロメリア

 

カフェテーブルから一点突破で街の絵に

一点突破描きをカフェで試してみることにしましょう

カフェのテーブルに置かれた食べ物の「一点」から、果たしてどんな「突破」、そして展開が行われるでしょうか。

 今日の絵の行方を決める「一点」、ハンバーガーを、まずしっかりと描きます。

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 隣のコーヒーカップを描いたら、テーブルのエッジを強い線で描き、ついでにイスも…。

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 ガラス戸の鉄枠をグイッと描いたら、ガラス越しに原宿を歩く人や街路樹が見えてきました。

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まずはハンバーガー。続いてコーヒーカップとテーブル、イス、次に鉄枠から屋外の世界へと拡大します。

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 ハンバーガーから隣へ隣へと描いていったら、原宿の街まで広がってしまいました。

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原宿のカフェにて 21cm × 20cm 2013

 

ひとりの人物から街全体へ広がりました

描いた結果が構図に

都会は、自然の風景に比べると、そのカタチにも色にも統一感がありません。絵を描こうとする私たちに向かって、そのゴチャゴチャをさらけ出して「どこからでもかかって来い」と言っています。
「一点突破」は、これに立ち向かうひとつの方法です。ぜひ1度試してみてください。

 歩行者天国の銀座通りです。F6のスケッチブックを広げた時、すぐ近くにいた女性が目に入りました。

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 続いてカメラを持つふたりの男性をスケッチ。3人とも上を向いて構えています。そこでペンが和光の時計台へと飛びました。

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 手前の人物を全部描いてから、時計台を手掛かりに建物を描いていきました。「描き広げ」と「描きおろし」の組み合わせですね。

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歩行者天国の銀座通り 31cm × 41cm 2015

 

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永沢まことの週末は街スケッチ-cover
永沢まことの街歩きスケッチ入門

 

著者プロフィール

永沢まこと

永沢まことプロフィール

Nagasawa Makoto

イラストレーター。絵描き。1936年東京生まれ。学習院大学政治経済学部卒。アニメーターとして活動の後、フリーランスとなる。
78年渡米。ニューヨークに8年間在住する中で、線描による独自のスケッチ・スタイルを確立。帰国後は世界各地を旅しつつ、創作と著作活動を行っている。朝日カルチャーセンター、池袋コミュニティ・カレッジ講師。

著書:『ノンフィクション・ニューヨーク』『東京人間図鑑』『イタリア・トスカーナの優雅な食卓』『永沢まことのとっておきスケッチ上達術』(以上草思社)、『絵を描きたいあなたへ』『旅でスケッチしませんか』(以上講談社)他、多数。

永沢まこと・オフィシャルブログ
http://makoart.exblog.jp/

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