香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック
第2回

主人公と対をなす「敵キャラ」のつくり方

香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック」では、「戦う女性キャラクター」(バトルヒロイン)を切り口として、キャラクターデザインの方法論を解説しています。

著者の香川氏と馬越氏は1990年代より活躍しているアニメーター。様々な作品に作画監督や原画として参加しています。とりわけテレビ朝日系で毎週日曜日に放映されている「プリキュア」シリーズには両氏が共通して作画に関わっており、その内容はまさに「戦うヒロイン」を描いた作品群です。

本書では、前後編からなる「バトルヒロイン」のオリジナルストーリーをもとに、それぞれの作品に登場するキャラクターをデザインするうえで留意すべきポイントを中心に解説。キャラクター自身の設定や性格、表情やポーズの付け方、モチーフに合わせたコスチュームのディテールから描写のちょっとしたコツにいたるまで、愛されるキャラクターをデザインするためのノウハウを伝えています。

本記事では、香川氏が担当する前編「ビタミンチャージ!ラブ♥プリンセス」より、「敵キャラ(タイプA&タイプB)」のデザインを一部抜粋してご紹介します。

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香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック

敵キャラ(タイプA&タイプB)

ラブリンセスを侵食するケミカルーンの双子の幹部。悪魔のように優秀な頭脳と双子ならではの連係攻撃でせとかたちを苦しめる。また、ありとあらゆる言葉や動きが同期するのも特徴で、ラブプリンセスたちとのチーム戦も見所のひとつ。

Order Point
知恵がまわる頭脳明晰タイプだが短気で失敗しがちな双子の敵キャラです。

Kagawa’s Point
双子のキャラということで、アイドルユニットのバニラビーンズをモデルに外巻きと内巻きの髪型にしました。

Name:
アスパル&ティム
(ケミカルーン)

Character Data:
モチーフ: 人工甘味料「アスパルテーム」
年齢・性別: 14歳相当(双子)・女性
性格: 頭脳明晰だが短気で失敗しがち
特徴: 双子なのであらゆるセリフや行動が同期する
能力・得意技: ダンスが得意で人間界でのダンス大会に出場することも

Kagawa’s Point
双子なので手をつないで「ふたりセット」という意味を持たせています。

“異世界の生物”という雰囲気を出すため、主人公たちと対照的に顔には鼻はありますが、あまり強調しません。

口のなかは何も描いていない状態です。歯とか舌がないほうが違和感が出て、異世界の生物っぽくなります。そのため、最初から“無し”に設定してしまいます。

上着はスカートの部分がシースルーになっていて、ちょっとおしりの部分がみえるくらいの丈にしています。レースのような素材を意識しました。透けて足のラインがみえるようにしました。

少年にもみえるように中性的なキャラクターにしたので、ホットパンツがみえても、あまりいやらしくならないです。

Kagawa’s Point
後ろ姿を描く時は、真後ろではなく少し斜め気味に描いたほうがいいです。

浮いているポーズを描く

立っている人物は重心や接地面を想定してパースの地面に合わせて描くのですが、宙に浮いている場合は気にせず自由に描き始めます。

ジャンプしているのか浮遊しているのかを考え、どの方向に動いているかを髪や衣装のフリルで表現します。重力がある場合の浮遊と宇宙空間での浮遊はまた表現が違ってきます。空中ポーズでは指先やつま先に力がはいらないと思うのですが、美しさを考えてピンと力をいれた感じにしています。

アスパルはトランポリンで跳ねたように、ティムはフワっと浮いているように描いています。基本の設定画だけだと髪の毛の硬さなどがわからないので、髪の毛が浮いた状態を表現しています。外巻きと内巻きはキープしつつ、髪の毛のやわらかさを表現し、目の上まぶたのラインがみえないという設定なので、前髪だけはふたりとも絶対浮かないようにしています。

Kagawa’s Point
ふたりのポーズが対照的になるように宙に浮いているイメージで描いています。

 


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香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック

著者プロフィール

香川 久&馬越 嘉彦

香川 久(かがわ・ひさし)

大阪美術専門学校出身。卒業後はムッシュオニオンに入社。スタジオコクピットに移籍後、『美少女戦士セーラームーン』や『少女革命ウテナ』、『フレッシュプリキュア!』『ソウルイーター』などの作画監督・キャラクターデザインを担当する。近年では『タイガーマスクW』のキャラクターデザインを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。

 

馬越 嘉彦(うまこし・よしひこ)

東京アニメーター学院出身。ムッシュオニオンに入社。スタジオコクピットに移籍後、『スーパービックリマン』で初の作画を担当。1994年OVA『グラップラー刃牙』で初のキャラクターデザインを担当。『ハートキャッチプリキュア!』で、第10回東京アニメアワード個人部門キャラクターデザイン賞を受賞。

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