香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック
第1回

ストーリーとモチーフからニチアサ的「バトルヒロイン」をデザインする技術

香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック」では、「戦う女性キャラクター」(バトルヒロイン)を切り口として、キャラクターデザインの方法論を解説しています。

著者の香川氏と馬越氏は1990年代より活躍しているアニメーター。様々な作品に作画監督や原画として参加しています。とりわけテレビ朝日系で毎週日曜日に放映されている「プリキュア」シリーズには両氏が共通して作画に関わっており、その内容はまさに「戦うヒロイン」を描いた作品群です。

本書では、前後編からなる「バトルヒロイン」のオリジナルストーリーをもとに、それぞれの作品に登場するキャラクターをデザインするうえで留意すべきポイントを中心に解説。キャラクター自身の設定や性格、表情やポーズの付け方、モチーフに合わせたコスチュームのディテールから描写のちょっとしたコツにいたるまで、愛されるキャラクターをデザインするためのノウハウを伝えています。

本記事では、香川氏が担当する前編「ビタミンチャージ!ラブ♥プリンセス」より、「主人公(タイプA)」のデザインを一部抜粋してご紹介します。

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香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック

前編「ビタミンチャージ!ラブ♥プリンセス」のストーリー設定

テーマ:
女子中学生が活躍するバトルヒロインアニメ

舞台設定:
パラレルワールド「ラブリンセス」が危機に陥り、人間界に救いを求めたことから始まる、とある地方都市での戦い。

ストーリー設定:
くだものの妖精・ビタミーナたちは自然あふれる国「ラブリンセス」で、自然と共存しながら平和に暮らしていた。だが、突然現れた侵略者・ケミカルーンが持つ化学の力がビタミーナの秩序を蝕んでしまう。ラブリンセスを救う救世主を探すため、命からがら人間界へとやってきたビタミーナのポンタンは中学2年生の女の子・橘せとかに出会い、友だちとなる。一方、ポンタンを追ってやってきたケミカルーンの戦士・スクラロースは、人間界の添加物や化学物質に目をつけ、怪物・アマクネーナを生み出してしまった!

怪物がラブリンセスに乗りこんでしまったら今度こそビタミーナは滅ぼされてしまう……悲しみの涙を流すポンタンをせとかが抱きしめた次の瞬間、彼女のなかで“何か”がはじける。光につつまれたせとかは、大自然の力を借りて伝説の戦士・ラブプリンセスに姿を変えた!!

人間界とラブリンセスをつなぐ次元のはざまで、みかんの戦士・ラブリーオレンジとアマクネーナを操るケミカルーンとの戦いの火ぶたが切って落とされる!

香川久氏によるストーリーボードの一部

ポイント:
・かわいいコスチュームのヒロインが世界を狙う悪とガチバトル!
・衣装や技、キャラクターは果物モチーフで敵キャラは添加物がモチーフ。

以上のストーリーコンセプトをもとに、キャラクターを設定し、デザインしていきます。

主人公(タイプA)

中学2年生の女の子。ポンタンと出会って、いちばん最初に変身する“みかんの戦士”。空回りすることも多いが正義感は強く、まっすぐな性格をしている。カンフーアクション映画が好きで、映画の影響で空手をやっている。

Order Point
おっちょこちょいだけど、元気で明るい女の子にしてください。

Kagawa’s Point
3人組ヒロインの基本となるキャラクターなので、いちばん最初に描きました。“みかんの戦士”ということで、アクセサリーにみかんのモチーフを多く採りいれています。

Name:
ラブリーオレンジ
橘 せとか
※名前の由来は愛媛県のみかんの品種・せとか

Character Data:
モチーフ: みかんの戦士
年齢・性別: 14歳・女性
性格: 元気で明るく、おっちょこちょい
好きなもの: カンフー映画
趣味: キャラクター(主にブルース・リー)のグッズ集め
家族構成: オーガニック食材の店を経営する両親、高校生の兄の4人家族
能力・得意技: 空手(町道場に小さい頃から通っている)

主人公(タイプA)変身後

変身後はまつ毛を増やして、目つきもきりりと“ヒロインらしい”表情に。髪の毛のボリュームやそれによるシルエットの違いは、変身前・変身後の描き分けの大きなポイントになります。

複雑なディテールが重ならないように

複雑なディテールが重なる絵は避けるようにしています。たとえばフリルの上に髪があって、さらにその上に飾りがついているなど。複雑な形の上に複雑な形を置くと主線が隠れて訳が分からなくなってしまうので、ポーズをつけたいのに髪や飾りなどが邪魔になってしまうこともあります。衣装は左右非対称のデザインだったり、不定形な模様や複雑な模様があったりするほうがデザイン的にはおもしろいのですが、アニメの場合は動画にする際に問題が起こることも多いので要注意です。

衣装の動きも考える

動きに合わせて衣装にも表情をつけます。上の絵は回転しているのがわかるようにスカートのドレープがねじれているように表現しています。下の絵は衣装のフラフープ的な部分が腰をまわした時に、遅れてクルッとまわる感じに表現しています。たわみをいれることで硬い素材ではなく、多少柔らかくみえるようになります。

空手道場に通っているという設定があるので空手のまわし蹴りと正拳突きのポーズです。実写でもアクション系を得意とする若い女優も増えてきていますので、そういうのも加味しながら。中学生という設定でも、ポージングはかなりしっかり描きたい。

きちんと握り拳をにぎって、内側にねじり込むように描いています。光や泡沫、煙などのエフェクトはアニメの原画では別紙で描き込みます。

Kagawa’s Point
引き手のほうは高い位置にすることもあれば、腰の位置の場合もあります。

 

主人公(タイプA)変身前

表情集はキメ顔と力の抜けた表情の2種類を表現しておきます。

変身前の日常的な力の抜けた表情を漫画的な表現で描いています。キメ顔とくだけた顔で2面性を表現したいと思って描いています。

 


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香川久×馬越嘉彦 バトルヒロイン作画&デザインテクニック

 

著者プロフィール

香川 久&馬越 嘉彦

香川 久(かがわ・ひさし)

大阪美術専門学校出身。卒業後はムッシュオニオンに入社。スタジオコクピットに移籍後、『美少女戦士セーラームーン』や『少女革命ウテナ』、『フレッシュプリキュア!』『ソウルイーター』などの作画監督・キャラクターデザインを担当する。近年では『タイガーマスクW』のキャラクターデザインを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。

 

馬越 嘉彦(うまこし・よしひこ)

東京アニメーター学院出身。ムッシュオニオンに入社。スタジオコクピットに移籍後、『スーパービックリマン』で初の作画を担当。1994年OVA『グラップラー刃牙』で初のキャラクターデザインを担当。『ハートキャッチプリキュア!』で、第10回東京アニメアワード個人部門キャラクターデザイン賞を受賞。

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