「腕時計」という装置は、「時間を見る」という機能だけを備えていながら、精密機械、あるいは装飾品として、複数の側面から人々を魅了する力を持っています。市場にはカジュアルモデルから超高級機まで多彩な機種が存在し、その多様性には目を見張るものがありますが、それと同時に、それらの価格差に疑問を感じることがあるかもしれません。
「腕時計の基本がわかる教科書」は、そうした疑問を払拭する一助になりうる一冊です。本書では機械式腕時計をメインに、時計そのものの歴史や腕時計の基本的な構造、市場に参入しているすべてのブランド、そして時計の核となるムーブメントの紹介から簡易的な専門用語集も完備しており、機械式腕時計の魅力を伝える内容となっています。
Part3「腕時計オールブランド大図鑑」では、国内外で展開している各腕時計メーカーにまつわる基本情報と歴史、代表作などのブランドストーリーを掲載。今回は掲載105ブランドから、「ROLEX」(ロレックス)の頁をご紹介します。
「ROLEX」(ロレックス)
創業年:1905年
創業者:ハンス・ウイルスドルフ
創業地:イギリス/ロンドン
現在地:スイス/ジュネーブ
”どの言語でも発音しやすく、耳に心地よく響き、覚えやすく、さらにはダイヤルとムーブメントに刻んだときエレガントで、5文字以内の短い名前……”、1908年、世界を視野に入れてハンス・ウイルスドルフの発案した名前が「ROLEX」。その3年前、時計セールスマンだった彼がロンドンで創業した時計販売会社は、やがてこのブランド名とともに世界を席巻することになる。
懐中時計全盛の当時、彼は腕時計の将来性に賭けた。特に完全防水ケース「オイスター」(1926年)を着けたグライツ嬢によるドーバー海峡横断のニュースは、ロレックスの名を世界に轟とどろかせた。以後、自動巻き機能の「パーペチュアル」(1931年)、午前0時に日付が変わる「デイトジャスト」(1945年)という”三大発明”を成し遂げ、腕時計の進化に大きく貢献する。
1950年代からは多くのプロフェッショナルモデルが開発された。サブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスター、コスモグラフ デイトナなど、現在まで継続する人気モデルを次々と発表。
これらの優秀さを実証したのが、ほかならぬ冒険家たちだった。なかでも有名なのが、1953年にエベレスト登頂に成功したエドモンド・ヒラリー卿だ。マイナス25℃の想像を絶する頂で、至福の時間を刻んだのはロレックスのオイスターだった。
1960年にはトリエステ号の外壁に取り付けられた試作時計がマリアナ海溝1万916mへ到達。8時間を超える深海探査を終えて浮上後も、完璧に動いていた。
2000年にはコスモグラフ デイトナに自社製の自動巻きクロノグラフCal.4130を搭載。2008年には特許取得のリングロックシステムにより3900m防水を実現した「ロレックス ディープシー」を発表。このような技術革新への飽くなき挑戦こそ、ロレックスが時計界のトップへ登りつめた原動力にほかならない。
※誌面で掲載している価格は、特に注記されていないものはすべて税込みです。
※本書が発行された2015年10月当時の価格になります。現行の価格はメーカーや正規店にご確認ください。
<玄光社の本>