和風ファンタジーの世界観は、アニメやゲームなどで人気のある類型の一つです。わたしたちが歴史の中で垣間見る過去の日本とは似て非なる日常生活の様相には、その世界でこれから繰り広げられる物語への期待を掻き立てる魅力があります。
「和の幻想世界の描き方」では、イラストレーター七原しえさんが、イラストの背景にある設定のほかアイデアを発想するコツ、イラストに仕上げるまでの制作手順を詳細に解説。世界観の設定からイラストレーションを起こす技術を身につけられる一冊となっています。
本記事では序章「作品ギャラリー&独自解説」より、改元による時代の移り変わりを祝福するテーマのイラスト作例を紹介します。
初春令月氣淑風和
新しい時代の幕開けに、百世の祝福を
七原しえ’s comment
桜の木と琵琶が描きたくて考案したイラストでした。市女笠・琵琶・鳳凰(琵琶の柄)・紙垂飾り・水引・繭玉飾り・御幣・御札などの和の要素を取り入れています。
和服のアレンジイラストを描く際、帯や袖に文字入りの御札を加えることが多いのですが、その言葉を考える作業がとても好きで、辞書や古語辞典を引きながらイラストに合った四字熟語や単語を時間をかけて選んでいます。イラストにぴったりの言葉が見つかった時、更に世界感を広げてくれるような意味合いの単語が見つかった時は小躍りして喜んでいます。
世界観・こだわりポイント
元号が令和に変わった日のお祝いとして描いた記念イラストです。『平和な時代が長く続きますように』と年経た桜の化身が着飾り楽器を奏でながら、新しい時代を祝うために空から舞い降りてきた光景を想像しました。巨木の桜は細かく細部まで、また着物の裾から伸びているようにデザインしました。
他にも琵琶の模様や着物の袖・帯の装飾など、全て細かく描き込んでいます。構図は描き込み箇所と空白箇所のバランスにメリハリが出るように、また、色調はイラスト全体に色の統一感が出るよう類似配色としました。全体バランスを細かく計算しながら非常に丁寧に描いた作品です。