風景写真の便利帳
第3回

単焦点レンズは機動力やボケ、有害光に対する強さが持ち味

デジタルカメラやスマートフォンの性能が上がり、シャッターを押せば誰でもカンタンに美しい写真が撮れるようになった。しかし、「ワンランク上の写真を撮りたい、もっとレベルアップしたい」という人も多いだろう。萩原ブラザーズこと、風景写真家の萩原史郎氏と萩原俊哉氏は、共著の「風景写真の便利帳」で自然風景撮影にかかわるさまざまなノウハウを紹介している。

本記事では、「撮影編」から単焦点レンズの使いこなし方をご紹介する。

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風景写真の便利帳

 


CHECK  POINT!!

  • 長距離のアプローチで重宝する
  • 単焦点ならではのボケを活かせ
  • 強い光源でも有害光が少ない

ポジションが限られることの多い風景写真ではズームレンズが重宝する。しかし単焦点レンズは単焦点レンズならではの持ち味がある。

一般的に単焦点レンズはズームレンズよりもはるかに小型軽量なレンズが多い。
長距離を歩いてアプローチするような撮影では、たとえば超広角などの一部のズームレンズを単焦点レンズに置き換えるだけでも機材の軽量化を図ることができる。

また、開放F値がズームレンズよりも小さなこともメリットだ。一般的にズームレンズは大口径レンズであっても開放F値がF2.8どまりだが、単焦点レンズはF1.4やF1.8クラスのものが多い。ズームレンズでは到底得られないボケ量の多さが魅力だ。

さらに強い光に対して有害光の発生が比較的少ないのも特徴の一つだ。レンズの構成枚数がズームレンズに比べて圧倒的に少ないので内面反射も少ない。太陽をダイレクトに入れ込むような撮影ではゴーストやフレアの発生が少ないことも多い。

単焦点レンズ一本だけでも表現がぐっと変わる。安価なものもあるのでこれを機会に入手してみるとよい。

 

[ 撮影データ]フルサイズカメラ 28 mm単焦点レンズ  絞り優先AE( F1.8・1/3200秒) +1.0EV補正 ISO100 WB:太陽光

焦点距離の短いレンズは長いレンズに対して比較的ボケにくい。しかし単焦点レンズで被写体に近付けば広角レンズであっても背景はこのように大きくボケる。ズームレンズでは得られない表現を存分に楽しみたい。

焦点距離:50mm

機動力の高さも単焦点レンズのメリット。長時間とまでは言わないがアプローチの長い撮影
地では重宝する。また、解像感の高さも魅力だ。最新のレンズなら、安価なものでも高い解
像感が得られるものも多い。

 

焦点距離:85mm

 


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風景写真の便利帳

著者プロフィール

萩原 史郎&萩原 俊哉

萩原史郎(はぎはら・しろう)

1959年山梨県甲府市生まれ。日本大学卒業後、株式会社新日本企画で「季刊(*現在は隔月刊) 風景写真」の創刊に携わり、編集長・発行人を経験。退社後はフリーの風景写真家に転向。現在自然風景を中心に撮影、執筆活動中。2015年に初個展「色X情」を開催。東京を皮切りに、仙台、福岡、名古屋へと巡回。

カメラグランプリ選考委員
オリンパスデジタルカレッジ講師・山コミュ管理人
日本風景写真家協会会員(JSPA)

 

萩原俊哉(はぎはら・としや)

1964年山梨県甲府市生まれ。 広告代理店に入社、食品関連の広告制作に配属、カタログ制作、イベント企画等に携わる。 退社後、フリーのカメラマンに転向。浅間山北麓の広大な風景に魅せられて、2007年に拠点を移し、2008年に本格的に嬬恋村に移住。 現在自然風景を中心に撮影、写真雑誌等に執筆。2014年11月にはBS11テレビ番組「すてきな写真旅2」に出演。2020年4月逝去。

書籍(玄光社):
風景写真の便利帳
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自然風景撮影 上達の鉄則60
RAWから仕上げる風景写真テクニック
風景&ネイチャー構図決定へのアプローチ法

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