玄光社は、「TOKYO TRIBE」シリーズや「隣人13号」などの作品で知られる漫画家・井上三太さんの漫画家デビュー30周年を記念した画集「SARU」を発売しました。漫画家、イラストレーターとしてだけでなく、自身が立ち上げたファッションブランドの経営者兼デザイナー、DJとしても活躍する井上氏がこれまでに手がけた仕事を、各作品の名場面や象徴的なビジュアルとともに収録しています。
海外誌で連載中の新作に加え、アイデアを記録した秘蔵のスケッチや音楽作品のアートワーク、フィギュアをはじめとしたオリジナルグッズ、LINEスタンプなど漫画以外の作品も充実。同じく漫画家で従兄弟の関係にある松本大洋さんとの対談も収録しています。全384ページにわたって展開される、井上三太の世界観を存分に楽しめる一冊です。
本記事では、イラストレーション作品や音楽作品のアートワーク、フィギュアなどのグッズ、ファッションアイテムを抜粋して紹介します。
ILLUSTRATION
洋服を作るようになったり、自分の会社をやるようになってから社員に、やれ会報誌の表紙を描けだの、Teeシャツの図版を描けだの、浸画だけを描いている時以上にいろんな締め切りが増えてしまった。
しかし、そのお陰でいろんな絵柄にトライさせてもらえた。紙というマテリアルに絵が乗っかるだけでなく、繊維、プラスティック、木、鉄、ろうそく等々…いろいろとやれている。新たなマテリアルに絵がどう乗っかるか想像し、出来上がりを見る時はかなりフレッシュな気分になれて好きだ。僕は幸せ者なのだと思う。
SANTASTIC! WEARバレンタイン限定Tee用イラスト Illustration for Valentine Day Limited T-shirt, 2010
DeLaのこのアルバムのジャケットのイメージが二転三転したんで苦労した。最初は三人がコックに扮している絵を描いたが、これは偶然か?数年後、彼らがコックに扮したPVを作ったので報われたかな?
GANGU
仕事場の写真を見れば一目瞭然だが、井上三太は大のおもちゃ好きだ。普段の生活ではもちろんのこと、海外旅行をした時には大量のおもちゃを買ってくる。可愛いものが好きで、また発見してくるのが上手い。
誰もがあまり意識していなかったおもちゃの、可愛い部分をピックアップしてみせるのだ。それは造形や色彩のデザイン的な部分であったり、ギミックであったり、あるいはパッケージングであったりと評価する基準は様々なのだが、とにかく自分なりの優れた選球眼を持っている。そんな井上が自分でプロデュースしたGANGUたちがただのGANGUなワケがない。こんなおもちゃがあったらいいのになあ、そんなおもちゃ愛から生まれたGANGUたちなのだ。
WEAR
⾃分が着たくないような服は作りたくない。
井上三太がよくミーティングでスタッフに投げかける言葉だ。
なかなかそんな単純な正論だけでは済まないという事は井上もよくわかっている。
しかし、SANTASTIC!WEARはもともと井上三太の漫画を好きな人に向けて作ったブランドだ。現在では純粋にブランドとしての評価も高め、漫画読者でないお客さんも増えたが、それでもやはり基本はファンのためなのだ。メーカーとしてのスキルも向上し、ブランドとしての視野も広がった。洋服だけではなく、アクセサリーやバッグ、フットウェアーなどにも挑戦していっている。それでも自分でも着たくなるような物しか作らない、ファンを裏切らないという哲学は変わらない。