7年に及んだTOYOTA5大陸走破プロジェクトをまとめた写真集「5大陸 Trails Into the Unknown」が完成。5大陸(オーストラリア、北米、南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジア)の道をトヨタの社員が走破するプロジェクト。トヨタという大きな企業の体質を変え、車作りの純度を上げたいという依頼が起点となっている。
「網走で、豊田社長の車の助手席に乗りました。氷の上を爆走したあと『これを伝えたいんだ』と言われました。こんなかっこいいオリエンがあるのかと驚きました。それが始まりで、車と写真を追いかけながら小さなノートに感じたことを書き殴りました。恵まれた仕事でした。また行きたい。でももうセスナには二度と乗りたくないです」(CD髙崎)。
この挑戦をどういう距離感で表現すればいいのか。CDの髙崎氏は瀧本幹也と瀧本写真事務所のOB(樋口兼一、杉田知洋江、片村文人、佐藤新也)の5人の写真家にオファーした。「話を聞いた時にはトーンを統一した方がいいのかなと思いましたが、それでは面白くない。最終的にはそれぞれの語り口で撮りたいものを撮ろうと決めました」(瀧本)。
デスバレーは50度超え、アラスカは氷点下、砂ぼこりや、塩湖などいくつもの難所を経験している。「どんなに過酷な環境でも車に戻るとホッとする。車の安心感をすごく感じた旅でした。ただのドキュメントではなく、写真の力強さを意識して撮っています。地球規模のスケールを感じてもらいたかったので、これまでにない角度など様々な撮り方に挑戦しました」(瀧本)。
アートディレクターは佐野研二郎氏。5大陸走破の旅で救われたことも多かったという。「僕自身、バッシングを受け、人生でかなり厳しい時期を過ごしました。何度も、デザインなんてしたくないしできないと思いました。でもロケ地の雄大さに救われた。走破隊を撮影した厳しくも豊かな日々は本当にキラキラしています。その空気を写真集に封じ込めました。ジェットラグや高山病に苦しみながら砂漠を移動し、砂にまみれ、ハエと戦い野宿をした日々を生涯忘れることはないです」。