新型コロナウイルスの流行をきっかけに、通信インフラを用いて場所や時間を問わず働く勤務形態、いわゆるテレワークが広く行われるようになりました。
とりわけ、Zoomビデオコミュニケーションズの「Zoom」やマイクロソフトの「Teams」などを使ったビデオ会議は急速に普及してきており、公私問わず日常的に利用している方も多いのではないでしょうか。
一般的にビデオ会議の目的は顔を合わせてのミーティングですが、カメラをセットアップする際などに、画面映りが気になるというのもよくある話です。そこで、ここではストロボライティングの書籍「はじめてのクリップオンストロボ」などの執筆も行っているプロカメラマンの今井しのぶさんに、少しの出費とちょっとした工夫で画面映りを向上させるテクニックをお聞きしました。
長期間にわたる外出自粛の要請を受けて、趣味の動画ストリーミングや、動画サイトへの投稿もこれまで以上に盛り上がってきています。今回お聞きしたテクニックは、ビデオ会議だけに限定せず、様々なシーンに応用が可能です。ぜひお試しください。
なお、今回掲載している人物作例は、実際にZoomアプリ上で映した映像のスクリーンショットです。
顔が暗く映ってしまうのを改善したい!
最近はオンライン化が進み、私も打ち合わせやレッスンなどでは、Zoomミーティングを使うことが多くなってきました。でも、ふと画面に映った自分のカメラ映りが気になったことはないでしょうか。
自宅ではノートパソコン内蔵のWebカメラを使うことも多いかと思いますが、卓上にパソコンを置いている場合は、カメラが顔より低い位置にくるローアングルなので、顔が大きく、目が小さく写ってしまうことがありますよね。
こうした現象の改善方法は、シンプルにカメラの位置を高くすればOKです。それには外付けのWebカメラを利用するか、パソコンを台に乗せて目線より高くすることでハイアングルとなり、目が大きく、アゴもすっきり見えるようになります。
しかし、カメラの角度を変えたとしても、「顔が暗い」、「顔に陰影差が出て怖い雰囲気になってしまう」、「全体的に暗い印象になる」と感じることはありませんか?
カメラ映りを改善にするために大事なのは、ライティングです。ライティングと聞くと難しそうですが、簡単なセッティングで格段にきれいに写ります。暗く沈みがちな雰囲気から、一気に明るくきれいになりますので、できる範囲で試してみましょう。
今回使用した機材はこちら
室内灯のみで普通に映した場合
多くの方があまり気にせず使っているセッティング。照明は、部屋の室内灯を付けている状態です。この状態だと、おでこにテカリが出てしまい、また目の下もくぼんで暗くなってクマのように見えて、疲れているかのような感じに見えてしまいます。
テクニック1:窓から自然光を入れる
窓際でブラインドを開けて、自然光を取り入れました。室内灯は消灯しています。室内灯だけのライティングよりは自然ですが、光が当たる部分と、陰になっている部分のコントラストが強すぎます。サイドからの光で明暗差が出て、男性ならカッコ良い雰囲気になりますが、女性はほうれい線が気になりますね。
テクニック2:安価なリングライトで瞳にキャッチライトを入れる
3,000円ぐらいから購入できるリングライトを使ってみましょう。リングライトを使うと、顔に柔らかい光を当てつつ、瞳に丸い光を入れることができます。この丸い光をキャッチライトといいます。
今回は、色温度を変えられる製品を選びました。室内灯や自然光の色に合わせて、自然に明るくすることができます。ライトの色によって、雰囲気が変わるのもいいですね。
照らす角度は、自分の顔の斜め上からにすることがポイント。市販のキットは、高さ調節が少ししかできないこともありますので、自分の環境に合うかよく調べてから購入しましょう。高さ調節のできる範囲が広いものや、フレキシブルにクネクネとアームが動く製品がオススメです。私は市販のものだと低かったため、小型三脚に付けています。
室内灯+リングライト(暖色、色温度3000K)
室内灯+リングライト(ミックス光、色温度およそ5000K相当)
室内灯+リングライト(白色、色温度6500K)
瞳に丸いリングのキャッチライトが入ることで生き生きした表情に見えます。
テクニック3:さらにLEDライト1灯を追加してみよう!
さらにもう1灯、LEDライトを追加しました。リングライトは斜め上から当てていますので、あごの下に影が出ます。「影を薄くする」イメージでLEDライトをプラスして、顔を明るく映す意図です。
すると、顔の明暗差が少なくなり、肌がぐんと明るくなります。キャッチライトも1つ増えてキラキラになるのも嬉しいですね。
LEDライトを選ぶ時には、色温度を変えられるものや、光量調節ができるものがよいでしょう。
ワンポイント!
LEDライトにトレーシングペーパーを被せて光を柔らかくする!
LEDライト+トレーシングペーパー+リングライトの2灯ライティング
LEDライトは、直に当てると光が強すぎるときがあります。その場合は、トレーシングペーパーをライトの前にかぶせるだけで光を柔らかくすることができます。トレーシングペーパーは、撮影用品ではない文房具として販売しているものでも充分です。
さらにもうひと工夫。「濃い色の服」を着て明るさアップ!
Webカメラは、自動露出です。つまり明るさは自動で補正されます(露出を手動で設定できるパソコンのアプリケーションもありますが、少し難しくなるのでここでは割愛します)。
画面全体が暗い(または黒い)と明るく補正され、画面が明るい(白い)と暗く補正されてしまいます。そのため、着る洋服が明るめの白よりは、「暗めの服」の方が、全体的に明るく補正されます。白い服を着ている時と見比べてみてください。ぐっと顔色が明るくなりましたよね。部屋の壁などの背景によっても、露出に影響がありますので気を付けましょう!
LEDライトをプラスするだけで、キャッチライトを入れたり、顔の陰影差を少なくすることができます。
私のオンラインレッスンの生徒さんの中には、ライティングに気を使っている方もいらっしゃったりして、ビデオ会議の時にちょっとした話題になります。
Webカメラライティングのアドバイス
- ライティングする際には、できるだけ自然に写るように強めの光を当てないようにしましょう。
- 逆光は顔がより暗くなってしまいますので注意しましょう。
- 暗い部屋は、画質が悪く(映像が粗く)なってしまうので気を付けましょう。
- 広角のウェブカメラだと映り込む範囲が広いので、お片付けをするか(笑)、カメラと背景の距離を短くする、角度を変えるなどして、映り込む細かな部分までチェックしましょう。
著者からのお知らせ
私の運営するスタジオ「こどもとかめら」では、初心者向けのオンラインフォトレッスンを開催しています。テーブルフォトを中心にストロボの使い方などアドバイスをしています。よろしければWebサイトをのぞいてみてください。ぜひ、オンラインできれいにライティングされたみなさんとお会いしたいです。
今井しのぶさんの連載「はじめてのクリップオンストロボ」はこちら。
同名の著書も発売中です。