その場の地明かりや照明設備といった光の状態は、写真を撮るにあたってきわめて重要な要素です。人物を写すポートレート写真でもそれは例外でなく、カメラマンは時として被写体や表現意図に応じた光を「作る」必要に迫られます。では、撮影意図に沿って適切な光を作るには、どうしたらいいのでしょうか。
「ポートレート・ライティングのアイデア帳」では、複数のフォトグラファーが様々なシチュエーションでのライティングについて解説。モノブロックストロボ、自然光、夕景、夜景、複数台のストロボなど、機材やシーンに応じた光の作り方を紹介しています。
本記事では「背景をきれいに見せるオフカメラストロボ術」の章より、太陽光をメインライトとした際にストロボを使って被写体の明度差を補正する方法について解説します。
ギラッとした太陽光によるシャドウを補正する
直射光の当たらないシャドウ部をストロボで補正する
雨上がりのすっきりとした青空と鮮やかな緑、砂利道に水たまりが飛び飛びにできている状況が美しく、撮影することにしました。
メインライトは言わずもがな太陽光です。撮影時刻は18時前の夕暮れで、サイドから角度のついた光が差し込んでいました。
まずは、背景のみを考えて露出をセット。青空と水たまりの青色をしっかり出すことを基準にしています。
風景のみならここで完成ですが、モデルに立ってもらうと直射光がモデルの胸元まで当たり、それより下の洋服から足元までが暗く沈んでしまいました。
モデルに当たる太陽光をカットするという手もありますが、モデルが背景に馴染みすぎるので、シャドウとなった下半身の明るさを補って、全身の階調を見せることを選択しました。
照明はクリップオンタイプのストロボ「Profoto A1」をフレーム外の下手側にスタンドで固定。太陽光と光の方向を揃えて、サイドから光を当てています。
ストロボの高さはモデルの身長とほぼ同じにして、腰辺りにライトの芯を向けています。シャドウとなった服を照らす意図です。
また夕暮れの傾いた光となじませるのに、アンブレラタイプのトランスルーセントを装着し、光を拡散させています。これにより下半身に当たる光の面積を広げつつ、光質をやわらげています。なおストロボの光量は、太陽光の明るさが強いのでフル発光させています。
カメラ機材
Canon EOS-1D X Mark II
SIGMA 105mm F1.4 DG HSM
F1.4 1/2500 秒 ISO100 WB:5603K
照明機材
ストロボ:Profoto A1
ストロボアクセサリー:アンブレラ・トランスルーセン
ト(60cm)
ストロボトリガー:Profoto Air Remote T TL