その場の地明かりや照明設備といった光の状態は、写真を撮るにあたってきわめて重要な要素です。人物を写すポートレート写真でもそれは例外でなく、カメラマンは時として被写体や表現意図に応じた光を「作る」必要に迫られます。では、撮影意図に沿って適切な光を作るには、どうしたらいいのでしょうか。
「ポートレート・ライティングのアイデア帳」では、複数のフォトグラファーが様々なシチュエーションでのライティングについて解説。モノブロックストロボ、自然光、夕景、夜景、複数台のストロボなど、機材やシーンに応じた光の作り方を紹介しています。
本記事では「背景をきれいに見せるオフカメラストロボ術」の章より、景色の中でモデルを引き立たせるライティングについての解説を抜粋して紹介します。
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広大な景色にモデルが埋もれない光をつくる
ストロボでモデルに立体感をつける
被写体と背景の輝度差を操り、「背景から前景へ絵作り」する方法を具体的に紹介していきます。まず下にある「Before」の写真を見てください。
【Before】
ライティングをせずに、モデルに露出を合わせて撮影したものです。メインライトは夕暮れの太陽光で光の方向は半逆光。撮影場所は岩場の大きな影に入っていて、直射光は当たりません。
このときに考えたのは
- 空の白飛びを防ぐこと
- モデルの存在が広大な背景に埋もれないようにすること
です。
手順として、まずは背景が適正となるようにカメラの露出を設定します。ここでは空が白飛びせず、雲の表情が出るようにシャッタースピードを1/200 秒から1/1000秒に設定しました。すると背景の空は下の「After」と同じ明るさになります。これでカメラの露出を固定します。ちなみにシャッタースピードを速めて露出を調整したのは、ハイスピードシンクロできるストロボ機材が前提です。
【After】
次にモデルの存在が埋もれないように、ストロボとLEDの2灯でライティングします。
1灯目はクリップオンタイプのストロボ「Cactus RF60X」をモデルの背後、写真に写らない地面に置き、アクセントライトとして輪郭を強調するのに使います。ライトの芯はモデルの肩の辺りを狙って明るさは「1/32」発光。これで背景との分離感が出ます。
次にLEDライト「Litra Pro」を下手側のフレーム外に設置、フル発光させてフィルライトにしました。Litra Proはストロボよりもいのですが、レフ板代わりにピンポイントで顔を明るくする目的で使用しています。
カメラ機材
Canon EOS R
RF28-70mm F2 L USM(34mm)
F2.0 1/1000 秒 ISO320 WB:6907K
照明機材
ストロボ:Cactus RF60X
LEDライト:Litra Pro
ストロボトリガー:Cactus V6