カメラ機材を扱ううえでほぼ必須ともいえる撮影用品の一つがカメラバッグです。普通のバッグとカメラバッグの違いは、機材を収納するスペースが確保されていることや保護のためのインナークッションを備える点などさまざま。人によって選ぶ基準も異なり、市場においては多くのメーカーから個性豊かな製品が発売されています。
では、カメラを使うプロの間では、直近でどのようなカメラバッグがトレンドなのでしょうか。ここでは、PICTURESでも度々読者プレゼントをご提供いただいている銀一スタジオショップのスタッフ、白井かの子さんに、最近売れ筋のカメラバッグやアクセサリーについてのお話を伺いました。後半では、銀一が取り扱うブランドの中でも売れ筋の製品をピックアップして紹介しています。
フォトグラファーの荷物は「バッグひとつにまとまる」時代
――銀一スタジオショップで取り扱っている主なブランドを教えてください。
白井:カメラバッグでは、シンクタンク・フォト、マインドシフト・ギア、ピークデザイン、クランプラー、ドンケをメインに取り扱っています。ただ、銀一スタジオショップは「セレクトショップ」という側面もあるので、Web通販のみですがロープロなどのブランドも置いています。
――カメラバッグの機能や使われ方という点で、最近のトレンドを教えてください。
白井:持ち運びやすいローラータイプの製品が注目を集めています。これはたくさんの機材をクルマに積み込んで現場に行くスタイルから、機材を一つのバッグにまとめて電車で移動するスタイルが主流になったことで起きた変化ですね。
これまではとにかく大容量のバッグが売れていたところから、少しずつ小さいもの、持ち運びやすいものへのシフトが起きました。ローラータイプのバッグの中でも、特に4輪タイプのバッグがよく売れています。
例えば自動改札を通る時、4輪だと進行方向に向かって横向きにして通るのが楽なんです。旧モデルではローラーの構造上、そういう動きがちょっと苦手だったのですが、現行製品ではそれもかなり改善しています。昔からのコアなユーザーの中には、自分の使いやすいようにローラーブレードの車輪を移植して改造していた、なんて話もありました。現行製品ではローラーの品質も上がったので、そういうことはないみたいです。
――それはフォトグラファーの持つ機材の量がトータルでは減ったとみていいのでしょうか。
白井:撮影ジャンルにもよりますが、多くの分野でミラーレスカメラが主流になり、ボディやストロボが小型化したことで、機材の容積や重量は減る傾向にはあると思います。
これまではバッグにボディとレンズを入れて、モノブロックストロボとスタンドはそれぞれ別の専用品に収納する、といった使い方だったのですが、Profotoの「A1」や「B10」といった小型で高性能な機材が広く使われるようになって、カメラ込みでもひとつのバッグに入れられるようになりました。バッグひとつ持って電車に乗り、ロケ地へ向かう使い方が増えてきたのです。
お客様にお話を伺うと、クルマにたくさんの機材を積んで移動する必要のある仕事は徐々に減ってきていると聞きます。それはカメラとライティング機材の両方の性能が上がったことによって、以前よりも大光量を要するような状況が減ったことです。
どういうことかというと、カメラの高感度特性が上がると、以前なら大容量のジェネレータが必要だったシーンでも、カメラのISO感度を一段分上げたらそれほど光量は必要なくなった、という話ですね。結果として、フォトグラファーが持ち歩く機材の量は全体として減る傾向にあります。
――プロがカメラバッグを選ぶ中で、重視しているポイントってどこなのでしょうか。
白井:自分の持ってる機材がピッタリ入るか、それも収まりがよく入るか、というところを重視されるお客様が多いです。店頭にも大抵の機材はあるので、ちゃんと入るか実際に入れてみる。そのうえで実際に背負ってみて「この状態で電車に乗れるかどうか」というところを確認してから、買われていきます。
それと、飛行機に持ち込める大きさ、重さかどうか、背負い心地もよく見られるパラメータですね。実際に機材を収納して試せる、というのが店舗ならではの部分かなと思います。
シンクタンク・フォトのカメラバッグはほかのメーカーと比べてちょっと高価なのですが、故障時に持ち込んでいただければ、その場でハンドルやローラーを交換できるので、そういったサポート態勢を含めて、買う価値があるかどうかを見定めていただけます。
――バッグの価格も幅がありますが、その中でも特に売れ線の価格帯はありますか。
白井:3万~5万円くらいのバッグが多いですね。
――撮影アクセサリーで特に注目されているものってなんでしょう?
白井:人によってカメラの使われ方が多様化する中で、細かいニーズに対応できるようなものが売れていますね。
その中でも、やはりピークデザインの人気は根強いです。カメラをスタジオで三脚に載せて使うけどロケにも行く、動画も撮る、というプロフォトグラファーの場合は、「アンカーリンクス」をよくお選びいただいています。状況に応じてストラップを着脱できる点にニーズがあるようです。例えばジンバル雲台に載せるときにストラップは要らないけど、現場へカメラを持っていく段階ではストラップがついていた方がいい、というような場合にお使いいただけるのかなと思います。
報道カメラマンの方がお腹や腰の部分につけるレンズポーチの「newswear」(ニューズウェア)も人気があります。レンズ交換がしやすく、走っても安全にレンズなどの機材を持ち運べる実用性、利便性では唯一無二ではないでしょうか。
また、ニッシンジャパンの「スーパーライトスタンド」シリーズも売れています。モノブロックストロボは載せられないが、レフ板などちょっとしたものを固定しておくのにあると便利ということで、アマチュアだけでなくプロの方にもお買い上げいただいています。
――取扱いブランドに関して、国内販売代理店として独自に取り組んでいることは何かありますか?
白井:取扱いブランドのうち、シンクタンク・フォトについては、プロユーザー向けにスポーツ競技大会などでサービスデポを設置し、ハンドルやオイル、ローラー部分の交換を行っています。これは銀一独自の取り組みですね。
ここからは、銀一が取り扱うブランドのうち、「シンクタンク・フォト」「マインドシフト・ギア」「ピークデザイン」の中から、白井さんオススメの製品を紹介します。
シンクタンク・フォト エアポート・テイクオフ V2.0
背負える2輪ローリングケース。ミドルクラスの一眼レフカメラ2台と交換レンズ2~4本を収納可能。17インチまでのノートPCと10インチまでのタブレットが入れられるダブルポケットも装備。国際線の手荷物として持ち込みできるサイズです。名前にV2.0とある通り、製品としては2代目。初代との違いは軽量化を図っている点。重量は全オプション装着時3.9kg。
シンクタンク・フォト シェイプシフター 17
収納状況に応じてバッグの厚みを変更できるバックパック。内部に別売りのポーチ類を取り付け、収納部を自由にレイアウト可能。17インチまでのノートPCもしくはタブレットが入れられるポケットを装備します。レインカバー付属。重量は1.7kg。
マインドシフト・ギア ファーストライト 40L
アウトドアでの使用に堪えるマインドシフト・ギアブランドのバックパック。ショルダーストラップの位置(高さ)を任意の高さに調整可能。フラッグシップの一眼レフボディ2台に6-8本のズームレンズが収納できるほか、仕切り板のレイアウトを変えれば600mm F4の収納にも対応します。底部の生地にバリスティックナイロンを採用し、機内持ち込み対応。重量は2.7kg。
マインドシフト・ギア フォトクロス 15
撥水生地を使用したバックパック。止水ファスナーやターポリンボトムを採用し、悪天候時での機材持ち運びに対応。ミドルクラスの一眼レフ1台と標準ズームレンズ3~5本を収納可能。容量は20Lで全オプション装着時の重量は1.4kg。
マインドシフト・ギア フォトクロス 13
スリングタイプのアウトドア向けカメラバッグ。基本的な仕様はフォトクロス 15と同等ながら、バッグを体の前に回して側面から内部にアクセスできる利便性が特徴。重量は1.1kg。
ピークデザイン エブリデイバックパック 30L
上部と側面の両方から収納部にアクセスできるバックパック。フラップの固定位置を4段階で調節できるほか、上部を折って収納スペースを作れる特殊な仕切り板を装備。背面にはPCを収納できます。重量は2kg。
取材協力:銀一スタジオショップ
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