メカニカルデザイン解体新書
第4回

人型メカを「躍動感のあるポーズ」で描きくテクニック。時にはリアリティよりイメージ優先で

いわゆる「ヒーローもの」やSFに関連したテーマの物語においては、しばしば複雑な機構を持った機械やロボットが登場します。変形や合体など、世界観設定やコンセプトに沿ってデザインされ、人間には不可能な動きによって作品世界を表現する登場メカたちの魅力は、いつの時代も人々を惹きつけてやみません。

メカニカルデザイン解体新書」では、「エルドランシリーズ」や「勇者王ガオガイガー」などのメカニカルデザインを手がけたメカニカルデザイナー・やまだたかひろ氏がデザインしたロボットや武器、乗り物の設定資料をもとに、デザインの考え方やテクニックを詳細に紹介。

キャラクターのラフやアイデアスケッチ、内部構造図のほか、変形ロボットの仕組みや、アニメーション化や玩具化を前提としたデザインの考え方、描き方の違いなども解説しています。

やまだたかひろ氏が過去に手がけた「熱血最強ゴウザウラー」や「勇者指令ダグオン」など多くの作品のイラストも収録している本書ですが、ここでは「版権イラスト作品と描き方テクニック」の章より、変形メカがとる「ポージング」の描き方についての記述を抜粋して紹介します。

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メカニカルデザイン解体新書

ダイナミックなポージングの描き方

版権イラストでは設定画と違い、動きのあるポーズでメカを描きます。ここではこれまでの回で紹介しているロボットを使って、描き方のポイントを紹介していきます。

01
おおまかなラフでいろいろなポーズを描きます。今回のロボットは胴体になっている恐竜の頭を強調したいので、それを中心に腕を手前に伸ばしたり、いろいろ試行錯誤をしています。このラフの段階が最も勢いのあるポーズになっているので、この勢いをキープするようにします。

  • (中央下段)強調したいボディや手前に伸びた腕の位置を最初に決め、おおまかにラフを描いていきます。
  • (中央上段左)息抜きで描いたSDタイプ

中央下段のポーズを使用することに決定。一旦コピーして、下絵を作って次の工程に。青鉛筆で書いてコピーして下絵にするのを繰り返していきます。コピーのやり方は第1回を参照。

02
ポーズが決まったら、ラフを下絵にトレースしながらフォルムを整えていきます。足のつけ根のところにあるパーツも強調したいので、大きめにするなど模索します。

  • 人型ロボットの場合、見ている人は最初に顔を見る習性があるので、腕などを手前に大きく描いて、いったん視線をそちらに向けておいて、次に顔を見るように誘導します。そのように演出をすることによって、動きのある絵に見えるようにします。
  • 顔を見せたいので、俯瞰気味で描くことが多く、こちらを見つめるように。意識しているわけではありませんが、こうして見ると手足が広がって集中線のようになって、自然と顔に目がいくようになっていますね。
  • 左脚大腿部のパーツも強調したい。

03
さらにフォルムを整え、ディテールを加えていきますが、最初のラフで描いた勢いのある雰囲気を崩さないように、整える程度に抑えておきます。

  • 左脚大腿部のパーツは玩具のディテールを再現。

04
さらに細かくディテールを加えて、完成させます。この時点で試しに影とハイライトの位置をある程度決めておきます。手に持たせる剣を新たにデザインして、紙の端に描いています。

  • もう少し躍動感が欲しかったので、腕を反らせています。実際はパーツの構成上こちらの方向には曲がらないのですが、デフォルメして描いています。
  • 武器を持たせることにしたので、新たに剣のデザインをしています。

POINT:行動動機を感じさせる小道具を用意します
小さいですが剣を持たせているのは、「これから剣で斬りかかるぞっ」というイメージです。昔、「行動動機を感じてもらえるポーズの方が良い」と、子供雑誌の編集者から教えていただきました。

POINT:版権イラストでは玩具のディテールを追加
玩具が販売されるアニメの場合、子供たちは玩具も購入しているので、玩具片手にイラストを見た時に違和感がないように、アニメのフォルムに玩具のディテールを描いて玩具のイメージに近づけておきます。

Technique

パースの効いた絵を描くとき、透視図法や消失点を気にする必要はないと思います。それよりもどこを強調するかを考え、遠近感をデフォルメしてイメージを優先で描いた方が良いでしょう。

腕を広げるポーズをきれいに見せるために肩を外に出したかったので、肩のつけ根にパーツを追加して、少し外側に出るようにしています。

版権イラストの場合はアニメのプロポーションにさらに玩具のディテールを加えて、リアリティを加えるのと、子供が玩具と見比べても違和感がないようにする効果があります。


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