趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。
本記事では、第5章「レンズの表現」より、望遠レンズの活用例を紹介します。
大きな被写体は全体を写すより望遠レンズで一部を切り取る
イタリアのフィレンツェにあるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂を撮影しました。高さ114mの大きな建造物なので、90mmの焦点距離でその一部を切り取り、画面に収まり切らない大きさを表現してみました。作例のように構図を詰める場合でも、空などの空間を入れると「高さ」も表現できます。
画角が狭くなるから迫力が出る。離れた被写体を大きく写す
望遠レンズの最大の特徴は、遠くのものを大きく撮れること、そして画角が狭くなることです。その特性を利用し、大きな被写体の一部を切り取って、スケール感を出すのがここでのテーマです。
作例はイタリアを訪れた時に撮影した大聖堂の写真です。高さ114mのとても大きな建物だったので、迫力を出したいと思って撮影しました。
建物を写す場合、そのフォルム全体を写したくなるので、広角レンズなど画角の広いレンズを選びがちです。しかし、撮影時に筆者が考えたのは望遠レンズを使って画面いっぱいに撮影する方法。建物の特徴的な部分をクローズアップして見せることです。
ズームレンズで最適な画角を探り、90mmの焦点距離がベストだと判断。大聖堂の丸く赤い屋根と空の白い雲とのコントラストが美しい写真が撮れました。この写真には、大聖堂の全景は写っていませんが、建物が画面からはみ出ることで、より迫力を表現できたと思います。
いわゆる観光地で建物などを撮影する場合、この撮影方法はとても役に立つものです。観光地にはたくさんの人が集まるので、魅力的な被写体があっても、画面に人などが映り込み、そのものだけをきれいに撮れません。ここで紹介したように視点を変える柔軟さも大事です。
街の風景や広大な自然を撮る時は、望遠レンズで特徴的な部分を探して撮る。これを覚えておきましょう。
望遠レンズを積極的に使う
撮影した場所からだと大聖堂の全景が見えないということもあり、それならと望遠レンズで一部を切り取ることを選択
画角のバランスを考える
撮影場所が限られる場合はズームレンズが便利。両側の建物に邪魔されずにきれいに収まる焦点距離を探します
大胆なトリミングで迫力を出す
「写真から大聖堂が飛び出すのではないか」というぐらいの構図で撮影します。空など建物以外の空間を作ると立体感が増します
こんな撮り方もあり
24mmのレンズを使って同じ位置から撮影した写真です。画面に入る情報量も多く、路地から撮影したことが分かります。画面手前にある両サイドの建物を暗く落とし、大聖堂の迫力を引き立てています。ただし、広角レンズで撮影しているため、手前の影になっている建物の方が大きくなり、主題の大聖堂が少し小さく感じられます。