趣味の写真撮影に失敗はつきもの。被写体やシーンをとらえるタイミングはよかったのに、後で写真を見たらきちんと写っていなくてがっくり、という体験は、誰しも一度はあるのではないでしょうか。
写真教室の講師もつとめる写真家・上田晃司さんの著書「初心者が真っ先に覚えたい! 写真の表現テクニック入門」では、写真撮影における「失敗」を「自分の思い通りに撮れていないこと」ととらえ、撮影者が最初に思い浮かべたイメージに近づけるためのテクニックを詳細に解説。露出設定からピント、被写界深度、シャッタースピード、焦点距離、画角といった写真撮影の知識や技術を、図解と作例でわかりやすく説明しており、読み込むことで、撮影初心者にありがちな写真表現上の疑問を解決する一冊に仕上がっています。
本記事では、第5章「レンズの表現」より、焦点距離と画角の基本について、作例を交えてご紹介します。
焦点距離と画角の関係を知る
京都の伏見稲荷大社の千本鳥居を撮影しました。16mmという超広角レンズを使い、見た目以上に広く見えるように撮影しています。広角レンズを使う際は、アイレベルで撮ると遠近感が強調されにくいため、ローポジションから少しアングルを上げて撮影すると遠近感が強調され、ダイナミックに写ります。
フルサイズ・デジタル一眼レフ、焦点距離:16mm、撮影モード:絞り優先オート、絞り:F8.0、シャッタースピード:1/2.5秒、ISO 感度:100、露出補正:-1.3EV、ホワイトバランス:曇り
レンズによって、写真に写る範囲が変わる
レンズを変えると表現力がより豊かになります。しかし、どのようなレンズを購入するか悩んでいる人も多いでしょう。ここからは、レンズを変えた時に表れる描写の違いを紹介します。
レンズには「焦点距離」があり、この焦点距離を変えると「画角」が変わります。焦点距離とは、レンズを通過した光とピントの合う位置を数値で表したもので、50mmの位置でピントが合えば50mmのレンズとなります。
画角は写る範囲のことで、焦点距離の数値が大きくなるほど画角は狭くなり、小さくなるほど画角は広くなります。
下の作例を見ても分かるように、画角の広い広角レンズでは富士山が小さく写り、画角の狭い望遠になるにつれて主被写体が大きくなっていきます。一般的に焦点距離が24mm以下を超広角、25~35mmを広角、40~60mmを標準、70~100mmを中望遠、105~200mmを望遠、それ以上を超望遠と言います。ちなみに、焦点距離はカメラのセンサーサイズによって、写る範囲が異なるので「実焦点距離」として、35mm判フルサイズのセンサーをベースに換算して表記することがあります。
センサーサイズの小さなAPS-Cは、実焦点距離を約1.5倍、マイクロフォーサーズは約2倍することで35mm判換算の画角を計算できます。レンズを新たに増やす時は、まずどの画角で撮影したいのかじっくり考えて購入することをお薦めします。
焦点距離別に画角の違いを見てみよう
16mmで撮影
16mmの超広角レンズで海ほたるから富士山を撮りました。富士山は目をこらさないと分からない程度の大きさです。28mmだと大きさが倍ぐらいになりました。
28mmで撮影
35mmで撮影
35mmで撮ると手前に見えていた駐車場はほぼ見えなくなり、富士山も大きくなっています。50mmでは海と富士山だけになりました。画角が狭くなっています。
50mmで撮影
100mmで撮影
100mmになると望遠の世界になります。上の16mmと比較すると大きさや画角の違いが分かります。200mmはさらに富士山が大きくなりました。
200mmで撮影
300mmで撮影
300mm以上の超望遠レンズになると、あんなに小さかった富士山が画面いっぱいになりました。16mmの写真の中央のみを切り取ったようになります。
400mmで撮影
Ueda’s Memo
焦点距離を変えると写る範囲である画角が変わります。図は同じ位置から焦点距離を変えたイメージ図です。焦点距離が長くなるほど画角が狭くなり、被写体の一部しか写らなくなります。一方、焦点距離が短くなるほど被写体の広い範囲を写すことができます。また、焦点距離が長くなるほど背景の写る範囲も狭くなり、焦点距離が短くなると背景が広く写ります。これらを理解することがレンズ選びには重要になります。