ニッシンジャパンが2018年8月に発売したグリップ型ストロボ「MG10」は、連写を続けてもオーバーヒートしにくい高耐熱仕様と、マグネット連動式のズーム機構が特徴です。グリップタイプ特有の照射自由度や、コマンダーで設定を管理し複数台を一括で運用できる利便性など、注目すべきポイントの多いMG10ですが、本機の開発には紆余曲折あったようです。
11月に開催していた写真展「MG10×福島裕二」会場にて、ニッシンジャパンの國頭公之さんに開発の経緯などをお聞きしました。
――MGシリーズのコンセプトについて教えてください。
MGシリーズは元々、連続発光による発熱に強い”マシンガンストロボ”として2012年に発売した「MG8000」からスタートしました。シリーズとしてはMG10で2つ目です。
一番のキモは、クォーツ管(石英管)を使っているというところですね。発光部にクォーツ管を用いることで、ほかのクリップオンストロボで採用しているガラスよりも高温に強くしています。クォーツ管はよくビルの屋上などで赤く点滅している「航空障害灯」などにも使われています。
ただ、ストロボ製品として見ると、発光管が高温に強いからそれでいい、というわけでもなくて、発光管周辺に配置している素材も高熱に強く、高い耐久性が強い必要があるのです。全体的に高耐熱である必要がある。なので一点物の部品がどうしても多くなってしまう。
それによって製品が高価(実売約7万2000円前後)になってしまうのは当然ではあるのですが、メーカーとして言わせていただけるなら、これでも「激安」なんですよ(笑)。
――MG10では、製品としてどのような方向性をとっていますか?
デジタルカメラの時代にあって、屋外と屋内の両方のシーンで使ってもらうためには、光量も大事だけど小発光も必要です。なので大光量に対応するだけでなく、小出力での発光にも対応しました。
決してオールマイティではありませんが、レンズでいえば「望遠ズーム」のようなイメージで便利に使っていただけたらいいなと思います。
――旧モデルMG8000について、ユーザーの評判はどのようなものだったのでしょうか。
製品としてはそこまで爆発的に売れた、というわけではないのですが、おかげさまで、販売終了になった今でも現役で使ってくださってる方がいるくらい、たくさんの支持をいただいています。MG8000が販売終了になるときには、一気に在庫がなくなるということもありました。なくなるタイミングで売れるという、ありがちな話ですけれどね。
クォーツ管は耐久性が非常に高いので、一般的なカメラのシャッタ―ユニットが壊れるくらいまでは使える耐久性がある。長期にわたって使えるので、コストパフォーマンスは高いと思いますよ。手前味噌ですが、支持をいただけてるのはそういうところなのかなと思っています。
MG8000がディスコンになる時に感じたのは、やはり必要としてくれている人がいるんだ、ということでした。後継機としてMG10が出るというリリースを出したときは、”マシンガンストロボ”というコンセプトの製品はもう出ないと思っていた人もいたようで、実際かなり反響がありましたし。
――MG8000のクリップオンタイプから、MG10のグリップタイプに変更したのはなぜですか?
結論から言えば、「MG8000を超える光量が必要だったから」です。
MG8000で不満の上がっていた点の一つに、「日中シンクロで使うには光量がやや不足する」というものがありました。クォーツ管の耐熱、高耐久という長所は、大光量でこそ活かされるわけですが、実際に光量を上げたストロボ設計の過程で、クリップオンには収まらないサイズにまで発光部を大きくせざるを得ないことがわかりました。それで必然的にグリップタイプという選択肢を採用することになったのです。
――MG10の発売からしばらく経ちますが、グリップ型に変えたことによるユーザーの反応はいかがでしょうか。
確かに、クリップオン型の「MG」が出るまでは、MG8000を使い続けるという方もいらっしゃいました。
やっぱり、「できればクリップオンがいいな」というお客様もたくさんいらっしゃるので、それは検討したいところですね。今回はグリップ型ですが、むしろMG10が”マシンガンストロボ”の新たなスタートだと思っていただけたら。
――(前回の記事でお伝えした)福島さんの使い方は、製品設計の段階では想定していない、特殊な使い方だと思うのですが、それについてはどう思いましたか。
実際に撮影現場も見せていただいたのですが、やはりすごく面白いし、自由自在な感じですよね。福島さんに思いがけない使い方で見出していただけたというのはとてもうれしい。
この機材がそう使われるというのはイメージしていなかったので、ちょっとだけ複雑な感じはするんですけれども(笑)、なにしろ道具なので、工夫して使っていただいて構わないし、メーカーとしては、それを見て「次の製品はこうしたいな」というインスピレーションもわきました。あれもこれもアリなんだ、ダメじゃないんだ、という感じで、良い刺激にもなりましたし。MGシリーズの開発は終わらないので、そうした刺激が、いずれ何らかの形で次の製品に活かせればいいかなと思います。