オールドレンズ・ライフ
第15回

絵画めいた強烈な描写を味わう「Domiron 50mm F2」

かつてフィルムカメラで使われていた交換レンズは、スマートフォンで写真を撮るのが当たり前になった近年においても、カメラ好き、写真好きの人々から「オールドレンズ」と呼ばれ親しまれています。オールドレンズは「マウントアダプター」と呼ばれるパーツを用いることで現行のカメラに装着することができます。これまでに発売された膨大な数の交換レンズの中から、自分好みのレンズを見つけるのも、オールドレンズ遊びの楽しみの一つです。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019」に掲載している特集のひとつ、「マニアが隠れて使う名レンズ」では、シンプルに写りの良い名玉ではなく、使いこなし方を把握し、条件を揃えてはじめて楽しめる特徴的な描写を持つレンズ、ある意味「隠れ家」的なレンズを紹介しています。

「裏の名レンズは、使いこなしを要する。特徴的な描写をするのだが、常にそうした描写が楽しめるわけではない。(中略)スイートスポットを外すと凡庸な描写で、それゆえにおもしろさがわかりづらい。ただし、そのわかりづらさがマニアにはたまらないのだ。」(特集序文より)

本記事ではその中のひとつ、「Domiron 50mm F2」の作例と解説を紹介します。

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オールドレンズ・ライフ 2018-2019

正体がつかめない小悪魔レンズ Meyer Optik Gorlitz「Domiron 50mm F2」

α7II + Domiron 50mm F2 絞り優先AE F2 1/1600秒 ISO100 AWB RAW 玉ボケが出る条件で撮影した。バブルボケとは大きく異なり、輪郭が薄く、形も半円状のものが少なくない。特異な描き方だ。

ドミロン50mm F2は見た目も写りも規格外だ。開放F2という標準レンズとしては控えめなスペックにも関わらず、そのサイズは50mm F1.2ぐらいの大きさがある。逆テーパーの厳ついデザインも相まって、一度見たら忘れられないレンズだ。

本レンズはプリモプラン58mm F1.9とオレストン50mm F1.8のつなぎとして登場し、そのため生産本数が少ない。そもそもマイナーなオールドレンズだったが、近年、急速に人気が高まっている。その理由はこのレンズのクセがあまりに強烈だからだ。条件が揃うと、キャンバスで油絵の具をこねくりまわしたような写りをする。まさに希代のクセ玉だ。

しかしながら、誰もが知る名レンズへの道は少々遠いようだ。なぜなら、肝心のクセを堪能するには、かなり条件を選ぶからだ。ドミロンは近接のボケが柔らかい一方で、中間距離でボケが硬くなる。さらに、点光源を背景に配置すると、輪郭の淡いいびつな玉ボケが乱れ飛ぶ。この硬軟入り交じるボケといびつな玉ボケがうまく合わさった時、ドミロンでしか撮れない強烈なクセが発生する。基本的には近接で被写体にピントを合わせ、背景との距離を調整しながらおいしいクセを探すことになるだろう。使いこなしを要するが、攻略し甲斐のあるレンズだ。

α7II + Domiron 50mm F2 絞り優先AE F2 1/1250秒 ISO100 AWB RAW メイヤーのレンズはボケが硬くなるものが多く、ドミロンも例外ではない。エッジの効いたボケといびつな玉ボケが合わさり、独特な世界を見せる。
Domiron 50mm F2 中古価格:70,000~100,000円 Exakta mount 1960年代に登場した自動絞り対応の標準レンズだ。レンズ構成は4群6枚のダブルガウス型と言われている。生産本数は少ない。
KF-EXAE 税別価格:4,000円 エキザクタマウントのレンズを、ソニーEマウントボディに装着する。レンズを着脱する際は、マウント面のロックレバーを使用する。

オールドレンズ・ライフ 2018-2019

著者プロフィール

澤村 徹


(さわむら・てつ)
フリーライター・写真家

マウントアダプターを用いたオールドレンズ撮影、デジタルカメラのドレスアップ、デジタル赤外線写真など、ひと癖あるカメラホビーを提案している。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」の他、雑誌、書籍など数多く執筆。

書籍(玄光社):
オールドレンズ・ベストセレクション
オールドレンズ・ライフ 2017-2018
マウントアダプター解体新書
作品づくりが上達するRAW現像読本

ウェブサイト:Tetsu Sawamura official site
Twitter:@tetsu_sawamura

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