「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第19回のテーマは「川」。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 川は季節や時間帯、水面の映り込みによって様々な表情を見せる。自分の頭の中のイメージに近いと思ったらまずシャッターを切る。
2. 絞りは開放か、極端に絞るかして、描きたいイメージを明確に表現する。
春に、神田川沿いを散歩していた時に撮った一枚です。水面の映り込みが水彩画のようで綺麗だなと思ったので、その雰囲気を写し出したいと思いました。絞りを開放にして、手前の枝にピントを合わせ、あえて水面をぼんやりした感じに仕上げました。
水面の映り込みがフォトジェニック
私は川を「キャンバス」だと思っています。いつも、抽象画を描くようなイメージで川を撮るようにしています。とはいえ、実際に川に絵を描くことはできないので…水面の映り込みや、周辺の植物などに彩られた川が、自分の頭の中の絵のイメージに近い時、シャッターを切るようにしています。海や湖よりも面積が狭く、水面にいろいろなものが映り込みやすい川は、季節や時間帯によって全く違った顔を見せてくれるので、撮っていて楽しい被写体です。
絞りは開放か、極端に絞るとよい
川を撮る時、絞りは開放か、極端に絞るか、どちらかにしています。まず、自分は目の前の川をどのようなイメージで描き出したいのかを明確にしましょう。それによって絞りを決めます。絞りを変えると絵の雰囲気も変わります。水面の映り込みを印象派の絵画のようにじんわりと優しく描きたいと思ったら、絞りを開放にして、全体をぼんやりさせるとよいでしょう。逆に、隅々までシャープな絵に仕上げたいと思ったら、極端に絞った方がよいでしょう。
グリーンの植物に覆われた干潟の真ん中を流れるブルーの川が、まるで模様のようで面白いなと思いシャッターを切りました。緑と青のバランスが気に入ったので、全体をしっかり写し出したいと思い、F11まで絞りました。
2枚目の写真と同じポイントで撮影したものです。少し離れたところに、川全体がピンクの何かに覆われている場所がありました。川とは思えぬような鮮やかな色と、水面が少しひび割れている感じが古い絵のようだなと感じました。その雰囲気を隅々まで写したかったので、F8まで絞りました。
川は水面だけではなく、コンクリートの堤防に映った影が美しい模様を作り出している場合もあります。この一枚は、堤防に映った木漏れ日に惹かれてシャッターを切ったものです。コントラストの高いところが気に入っています。