「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第18回のテーマは「蜂」。構図の中に蜂を含めて、作品レベルで成立させるテクニックとは、どのようなものなのでしょうか。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 「蜂」は淡い色合いの花を撮る際の“引き立て役”にするとバランスがよくなる。
2. 引いた構図の中に小さく「蜂」を捉えた写真も新鮮なのでオススメ。
鮮やかを通り過ぎて「どギツイ」と感じるようなピンク色で咲き誇るツツジを撮影していた時、ちょうど良い場所に蜂がやってきたのでシャッターを切りました。蜂が写り込むことで、より、春の力強い生命力を感じさせるような一枚に仕上がりました。
淡い色の花を撮る時の引き立て役
蜂は“どアップ”で見ると、コワイ顔をしています。また、近づきすぎると刺されてしまう可能性があります。ということで、蜂に無理に近づくことはせず、適度な距離感をもって撮影しましょう。私は、花を撮る時に引き立て役として蜂に登場してもらうのが好きです。蜂そのものに注目しすぎず、蜂がフレーム内でバランスの良い場所に来た時にシャッターを切ると、絵として成立しやすくなります。蜂が一匹写り込むだけで、ピリッとした緊張感が生まれます。
引きの構図で小さく写すのも新鮮
蜂はシンプルで黒っぽい外見をしており、存在感があるので、そのまま撮るとハードな印象になりがちです。あえて、メルヘン調の淡い色合いの花と一緒に写すと、そのハードな雰囲気が中和された写真に仕上がるのでオススメです。また、蜂は小さいので「マクロレンズを使おう」と考えがちですが、存在感があるので、寄らずに最短撮影距離が50~80cmくらいのレンズで撮影しても面白いです。ある程度引いた構図の中に、ちょこんと蜂が写っているのは新鮮です。
黄色の花と背景のグリーンが美しいと思い撮影をしていたところ、やはりちょうどよい場所に蜂が飛んで来ました。黒く、刺々しいシルエットの蜂が入り込むことで、絵の中に緊張感が生まれました。花だけだとちょっとフワフワした印象になりすぎるなと感じていたので、スパイスの役割を果たしてくれた蜂に感謝です。
薄ピンク色に咲き乱れる藤棚を観察していると、その周辺に黒い蜂が多く飛び回っていることに気がつきました。白っぽいフレームの中の黒い蜂は絶対に良いアクセントになる! と思ったので、理想的な位置に蜂が来るのを待ってシャッターを切りました。
ミツバチは蜂の中でもボディが黄色っぽく、柔らかい印象があります。ということで、今までの3枚とは異なり、背景をミツバチの色とは対照的な濃い目の色にして、大人っぽい雰囲気の一枚に仕上げてみました。