「身近なものを作品にする」大村祐里子さんの撮り方辞典、第17回のテーマは「葉」。寄れば主役に、引けば脇役になる被写体ですが、それだけに、画面をまとめるにはコツが必要になります。
「大村祐里子の身近なものの撮り方辞典」が書籍にまとまりました。本連載で取り扱ったテーマに加えて、新たに「クレーン」「炭酸」「排水溝」など合計100テーマを収録。日常の中で目にする、しかし被写体としてはあまり気に留めない様々なモノたちを記録する一つの視点を提案します。
撮影のポイント
1. 「葉」は主役にも脇役にもなれるだけに、撮影イメージを作る時はどちらでいくか、あらかじめ明確にしておく。
2. 「葉」の色と補色の関係にある色を背景に取り込むと、主役が引き立つ。
青い水たまりの中に映り込んでいる木を撮りたいと思いました。それだけではつまらないと感じたので、青を引き立てるオレンジっぽい色の落ち葉がうまく配置されるようアングルを選んでシャッターを切りました。これは葉を「脇役」として写しているタイプの写真です。
主役か脇役か明確にするとよい
葉は独特の形をしていて、色も様々で、存在感の強いものが多いので、メインの被写体として捉えることができます。一方で、散って地面にちらばった葉は模様のように見えることがあるので、(別の)メインの被写体を引き立てるテクスチャとして捉えることもできます。このように、葉は、主役にも脇役にもなれてしまいます。葉を撮影する時は、主役にするのか、脇役にするのか、自分の中で明確にしてから撮影しましょう。その方が主題が伝わりやすくなります。
葉の色の補色を背景として使う
葉を生き生きと撮影するには、「補色」の関係を利用してみるとよいでしょう。たとえば、黄色い葉を撮りたい場合は、色相環で黄色の反対側にある青紫っぽい色(川や水たまりなど)を背景にもってきましょう。葉を脇役にする場合も、もちろん補色関係が使えます。青っぽいメインの被写体を引き立てたいのなら、赤っぽい葉を脇役として選びましょう。そうすれば、お互いの色がより引き立ちます。色のバリエーションが様々な葉だからこそ、色で遊んでみましょう!
池の水面に浮かぶ、一枚の鮮やかな黄色い葉が気になりました。黄色を際立たせたかったので、ホワイトバランスを寒色側に調整し、背景となる池の水面が黄色を引き立てる青色になるようにしました。また、雨が降っていたので、雨による波紋がうまく葉にかかるタイミングを狙ってシャッターを切りました。これは葉を「主役」としているパターンです。
車のフロントガラスに張り付いた緑の葉がいいなと感じました。雨によって生じた水滴の中に浮かんでいるような葉をそのまま写したいと思いました。ただ、そのまま写すと、全体的に同じトーンの緑色でまとまってしまい、つまらなくなると考え、少しアングルを変えて、葉の背景に、緑の反対色(補色)である赤が配置されるポジションでシャッターを切りました。これは葉を「主役」としているパターンです。
公園にて、あずまやのような場所に絡まっているフレッシュな緑色をした葉と、背景の木々の緑色(しかも左右で緑の色合いが異なる)のバランスが美しいと思い、シャッターを切りました。これは被写体すべてが葉、という応用編です。こういった場合は、緑色にバリエーションを持たせると、まとまり感が出つつもシンプルになりすぎないのでオススメです。