模型雑誌の写真はどのようにして撮られているか。プロの撮影現場を覗いてみよう

模型メディアにとって、誌面に掲載する写真はメインコンテンツの一つです。模型の”いま”を伝える老舗メディア「ホビージャパン」では、社内にも複数の撮影ブースを設置し、日々、専属カメラマンたちによる撮影が行われています。

「STUDIO R」は、同誌の模型撮影を引き受ける写真スタジオの一つ。フィギュアや模型を魅力的に撮るノウハウを持ったカメラマンが所属しており、自社スタジオだけでなく、ホビージャパンの社内撮影ブースにおいても、本誌掲載用の写真撮影を行うといいます。

本記事では、ホビージャパン別冊「ホビージャパンエクストラ 2017 Autumn」より、本誌掲載予定の「特撮カット」撮影風景を紹介します。(写真撮影は本松昭茂氏)

シチュエーションの決定と小道具の用意

撮影物/LOVE LOVE GARDEN 1/20 シュトルム・ケーファー(MAX渡辺、横山宏、月刊ホビージャパン12月号掲載)撮影/STUDIO R /(C)Kow Yokoyama 2018

撮影の前にまずシチュエーションを決める。今回は「Ma.K.B.D.-マシーネンクリーガー・イン・アクション」(デジキューブ刊)の表4に描かれたイラストから「砂漠」をチョイス。シチュエーションの決め方は基のイラスト、映像、オリジナルで考えたものなどさまざま。

シチュエーションにあわせたベースを用意。ホビージャパン撮影ブースにはさまざまなシチュエーションに対応した手作りのベースが数多くあり、今回はその中でもサイズが大きめな土の地面を用意した。

使えるものは何でも使う。土台を若干浮かせるためにかつて使用していたポラロイドフィルムの箱を使用。

セッティングとアングルの決定

セッティングが終わったら実際に模型を置いてアングルを決める。基本的には編集者が行なうのだが、「Ma.K. in SF3D」では連載者の横山宏氏、MAX渡辺氏が決めている。

アングルは口頭のほかスマホカメラ撮影での指示も多い。意図を汲んで、カメラマンがそれに近い画角とアングルを導き出す。

アングルが決まったらひとまず地灯りで撮影して最終的なアングルの確認。問題がなかったら、ここから本格的なライティングがスタートする。

撮影

ライティングが決まった状態。ここから特撮用カットを撮影していく。

特撮はさまざまな効果を重ねていくため、それに対応したカットを数枚撮影する必要がある。その際に被写体は1mmたりとも動かしてはいけないシビアな撮影。

ざっと背景を合成した状態。一気に特撮カットらしい雰囲気になった。

ここから効果を入れていき、雰囲気を馴染ませていく。

完成(特撮カット)

正面から砂塵が舞う臨場感のある特撮カット。空が若干赤いのは空気中に砂が舞っていることを演出するためで、横山氏からの指示。(2017年)12月号の連載のメインカットとなっているので、月刊ホビージャパンをご確認のほど。

作品単品カット

ここからは編集者の出番。作例単品の前カットを撮影する。編集者が考えるカットをカメラマンと示し合わせながら最良と思われるアングルを探していく。

アングルが決まったらライティング。ファインダーをのぞきながら陰影を確認する。

今回のシュトルムケーファーは微妙な凹凸が多く、通常のライティングだけだとそのフォルムを写真でしっかり見せることが難しいため、ライティングを変えたカットを数枚重ねて合成し、必要な部分に明暗を付けていっている。

完成(作品単品カット)

完成したカット。複数のライティングパターンの組み合わせで、最適な露出とともに本体の形状や塗装面の質感などもしっかり映し出している。なおこのカットを撮影するにあたってカメラマンとやり取りしたアングル指示は下記を参照のこと。

模型写真アングルの決め方

  1. 前足左側の関節を覆う装甲の先端の位置がどこにくるのか→上下アングルの確定
  2. 右後ろ足が本体から見えているか→上下アングルの確定
  3. 左前足の左側面が見えているか、正面しか見えてないか→左右アングルの確定
  4. 左前足向かって左側に見えるパイプが見えるか足で隠れるか→左右アングルの確定

ホビージャパンエクストラ 2017 Autumn

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