エイリアンファン必読の書「メイキング・オブ・エイリアン2」映画制作にまつわる足跡を余すことなく辿る

卵嚢をつけたエイリアン・クイーンのミニチュアをチェックするジェームズ・キャメロン。彼は本作で、監督・脚本を務めた。

メイキング・オブ・エイリアン2」は、1986年にジェームズ・キャメロン監督作品として公開された映画「エイリアン2」の制作秘話を綴った書籍です。著者は「スターウォーズ」シリーズや「インディアナ・ジョーンズ」シリーズのメイキング本も執筆しているJ.W. Rinzler氏。撮影現場の記録写真から大道具、小道具、特殊メイクの制作現場、コンセプト・アートやトリートメント(プロットを短編小説の形でまとめた文書)なども収録しており、エイリアン2の制作にまつわる足跡を余すことなく辿ることのできる、ファン垂涎の一冊となっています。

メイキング・オブ・エイリアン2

この記事では収録資料を抜粋・引用して掲載します。

キャメロンが直面した最も大きな課題は、どうやって1作目を超えるかであった。「『エイリアン』は、1979年の公開初日に観た」と、彼はことあるごとに発言している。「あの作品にはかなりの影響を受けた。他の映画監督が作り出した領域に足を踏み入れるのは、同業者にとっては危険な賭けになる。だから『エイリアン2』では、そこに自分のスタイルで新しい領域を作らないといけないとわかっていた。そうしないと観客は驚いてくれない。(第1章「礎の歩兵隊」より引用)

「僕はいつも、ある問いに心を引きつけられてきた。誰かのためなら、ためらわず地獄に足を踏み入れるだろうか? もしそうなら、それはどんな関係の誰だろうか?」キャメロンの話は続く。「『エイリアン2』は男女のラブストーリーではなく、ある女性と、彼女の娘代わりになる少女とのラブストーリーだ。二人は同じ悪夢を見て、互いの心を通わせる。これがひどく感傷的に聞こえたとしても、問題はないと思う。だって、他の要素もごまんとあって物語のバランスをとってくれるからね」(第2章「ターミネーター・クイーン」より引用)

クイーンとリプリーの対決場面を描いたキャメロンのスケッチとコンセプト画。

キャメロンによれば、スラコ号の外観は基本的に「物を運搬するロケット砲」のようなイメージだったという。

「映画では、(建物や乗り物などの)内側と外側で、何もかもが調和していないといけないわけではない」と、ミードは語る。「だが、ビジュアルに関しては論理的な整合性が必要になる。たとえば、スラコ号の内部には降下艇が搭載されているわけだから、幅が30m以上ある格納エリアが要ると考えた。そして、そこから宇宙船の他の部分の縮小比を計算していったんだ」

ミードがデザインしたAPCは、まるで高級スポーツカーのようだったと伝えられている。「シドが手がけたからといって、必ずしも(映画にとって)いいデザインになるとは限らない」と、ハードは言う。「でも、めちゃくちゃかっこよかったんだけどね」(第3章「働きアリと戦士」より引用)

シド・ミードによるスラコ号のコンセプトアート。全体として、前の案よりもアグレッシブな外見になっている。

(スタン・)ウィンストンは自身のスタジオでの作業を、かなり若いアーティストや技術者20人ほどに任せたままにしていた。彼らは依頼されたものを作り上げては、制作会社を通じてウィンストンに送るという作業を続けていた。「皆、頭がどうかしてしまって、スタジオという名の精神病院を回すために、そこに入れっぱなしにされていたんだ」と、ハワード・バーガーは冗談まじりに語る。「そのくらい、現場では狂気じみたことが山ほど起きていた」(第4章「戦いへ緊急発進」より引用)

冗談で、クイーンにメガネをかけさせるロバート・スコタック(写真はスタン・ウィンストン・スクール提供)
完成したウォーリアーの前で記念撮影をするスタッフ(ナイジェル・ブース、グラハム・ハイ、リンゼイ・マッゴーワン、デヴィッド・キーン)。(写真はスタン・ウィンストン・スクール提供)

「クイーンはエイリアンとして説得力を持つ造形になっていると、僕らは確信している。あれはどう見ても人間の身体には見えない」と、キャメロンは自負する。「肢の多さ、あの背骨、そして他の特徴も含め、クイーンの造形は通常の人間の身体のバランスから逸脱している。だからこそ、長い間画面に映しても作り物っぽく見えず、観客を興醒めさせないだろうと思った。ただ、気をつけたのは、いかにも機械っぽい感じにはならないようにすること。スタン・ウィンストンの職人技や、アクションを細かくカット割りする僕の傾向を考えると、それも大きな問題にはならなかったがね。(第8章「重圧下で」より引用)

ウィーヴァーとクイーンを写したユーモラスな1枚。

2月27日、もしくは28日頃、エフェクトチームはクイーンがエアロックに転落するシーンを撮影した。クイーンはパワーローダーの右膝にある油圧装置のひとつを壊そうとし、その直後、パワーローダーはクイーンもろともエアロックの底にある扉に激突する。スタッフはその後、エアロックのミニチュアセットに移動し、宇宙空間に面する外扉が開くシーンを撮影した。扉が開くなり、パワーローダーが宇宙に吸い込まれるものの、クイーンは(リプリーの足首をつかんで)持ちこたえる。

この撮影では(衝撃で壊れないように)柔らかいバージョンのクイーンパペット(硬めと柔らかめの両方の発泡素材を使って作られた)を使うことになった。一方、パワーローダーの方は予備がなく1台しかなかったが、どちらのパペットも深さ約1.5mのエアロックに落とさなければならない。「あのシーンは8回くらいテイクを重ねた」と、(フィル・)ノタロは振り返る。「落とすたびにパワーローダーが粉々になるから、強力な瞬間接着剤でくっつけて元通りにし、また撮影に臨むという繰り返しだった」(第9章「マネキンを粉砕する」より引用)

ミニチュアの貨物区画で撮影中のパワーローダーとクイーンのパペット。パワーローダーの関節のほとんどは単に見栄えを良くするためのデザインで、滑車やケーブルなど、本体を動かすためのメカニズムが繊維ガラス製の外骨格の裏に隠されている。

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メイキング・オブ・エイリアン2

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