アニメーションの色彩設計から学ぶ 色彩&配色テクニック
第1回

アニメーションの色彩設計について知る前に。色の法則、基礎の基礎を知っておこう

アニメーション映像における「色」は、視聴者に対して登場人物の性質や心情、場の雰囲気を伝える重要な要素の一つです。工程により分業で制作される現場においては、線画に着色する色を管理する「色彩設計」という役割があります。

物語が展開する中では、時間帯や天候、舞台となる場所、キャラクターの状態などが変化します。そうした変化を表現するには、その場に応じた色指定を行う作業が必須です。かつては作品によって他の役職と兼任だった色彩設計の仕事ですが、より複雑な表現が可能になり、膨大な色が使用できるようになった現代の制作環境においては、専任の役割として定着しています。

アニメーションの色彩設計から学ぶ 色彩&配色テクニック」では、設定されたシチュエーションごとのキャラクター配色を例に、色指定を行う際の考え方を解説。色彩設定の実務内容の一端が学べる一冊となっています。著者は「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」や「コードギアス 反逆のルルーシュ」などの作品に色彩設計として参加している柴田亜紀子氏。

本記事ではChapter1「基礎編」より、色の寒暖や色相環といった概念についての解説を抜粋して紹介します。

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色彩の基本

まずは色彩の基本について解説します。色の属性や補色関係など知っておくと、目立たせたいものや馴染ませたいものにどの色を選べばいいかわかってきます。ある程度基本的な色の法則は知識として覚えておくといいでしょう。

基本的な色の属性

光の三原色(加法混色)

R(赤)、G(緑)、B(青)の光による配色を重ねることで白に近づく発色方法。加法混色は光による混色ともいい、テレビやPCのモニターなどはRGBの3色の光を混ぜてさまざまな色を作り出しています。光は原色を混ぜるほど色が明るくなり、三原色すべてを混ぜると白くなります。

色の三原色(減法混色)

色を混ぜ合わせるにつれて色が暗くなり、黒に近づきながら色を作り出す発色方法。絵具や印刷用のインクを使った場合の発色方法です。C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)、K(ブラック)のインクを混ぜ合わせることで多彩な色を表現し、この3つの色をすべて混ぜると黒になります。

色相環

色相は色味の違いを表現した属性で、色相環はその色相を環状に配置したものです。色を体系化する時に用いる方法の一つで、色相環で相対する位置にある2色は補色の関係にあり、補色同士は混ぜると無彩色になり、補色同士を並べて配置するとお互いに引き立て合って鮮やかに見えます。隣り合う色相の色を、類似色相として覚えておきましょう。

色相環で相対する色が補色となります

これは色相環を白黒で再現したもので明度と彩度を表現しています。明度は色味とは関係なく明るさの違いを指し、白に近いほど明度が高く、黒に近いほど明度が低くなります。

明度

暖色系
赤系を中心とした視覚から暖かい印象を与える色。熱さや力強さ、情熱を表現する印象の色。赤、黄色、オレンジなど比較的進出して見えるので、進出色ともいいます。

寒色系
青系を中心とした視覚から寒い印象を与える色。寒さや冷静さ、落ち着きを表現する印象の色。青や青に近い色から比較的後退して見えるので、後退色ともいいます。

色相環で見る組み合わせ

色相環上で向かい合う2色の組み合わせです。たとえば、青とオレンジ、赤と緑などがあります。この配色では、はっきりとしたコントラストが生まれます。対象を目立たせたい場合に使うとよいでしょう。

一方の色を背景として、もう一方の色をアクセントとして使うのが理想です。または、ここで明色と暗色を活用することもできます。明度の高いオレンジと明度の低い青の対比は、その一例です。

補色色相配色

3色配色
色相環を3等分する正三角形のそれぞれの頂点にある3色配色。

分裂補色配色
1つ色を選び、その反対側の色(黄色を選択した場合は紺色)の両隣の2色を合わせる3色配色。

4色配色
色相環をきっちり4等分する正方形のそれぞれ頂点にある4色配色。


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