個人・企業を問わず普及が進んでいるドローンは、低コストで空撮をしたい場合に採れる最も有効な手段です。いまやミュージックビデオや映画、TV番組の制作、調査研究など、幅広い用途で活用されていますが、ドローンを使って空撮を行うに際しては、映像の基礎はもちろん、適切な高度やアングルを選ぶ操作技術のほか、関連する法令や飛行可能な区域なども把握する必要があり、適正かつ安全に運用するためのハードルは依然として低くありません。
「ドローン空撮GUIDEBOOK 改訂版2019年」では、ドローンの構造から操作の基本、構図の作り方、飛行許可の申請にいたるまで、ドローンで空撮を行うにあたって必要な知識を幅広くカバー。プロユーザーの作例も収録しており、初めてドローンを扱う初心者にも理解しやすい一冊にまとまっています。
本記事では、チャプター3「プロから学ぶ空撮関連ノウハウ」より、空撮におけるカメラワークに関する記述を抜粋して紹介します。
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前後移動で安定して見られる映像にするためにはむやみにカメラを振り回さず消失点を捉えるのがコツ
あちこちカメラを動かさないことで安定した移動ショットになる
この映像は冒頭でも紹介した松山城を撮影したもの。松山城は標高132mの城山の山頂に天守閣がそびえたち、周辺には城下町が広がる。このショットの画面左側にある石垣は、周囲が木々で囲まれているため城下からはっきりと見られない。ここでは、それを空撮することではっきりと捉えることができた。普段は見ることができないものも空からならば見ることができるというのも空撮のおもしろいポイントかもしれない。
消失点とは遠近法の考え方で、真っ直ぐに伸びた道や風景などが遠くに離れていくほど小さくなり、最終的には点になるというもの。前後移動の空撮ショットを撮影する場合には、その映像の中に自分なりの消失点を想定して、そこを目指して一直線に突き進む。カメラをあちこちにふらってしまうと、そのショットでどこを見せたいのかという意図をつかむことができず、映像を見る人に混乱を与えてしまう。消失点にむかってじっくりとドローンを前進させていくことで、安定して見られる空撮ショットを撮影することができる。
被写体のクローズアップから徐々に離れ、その全貌が明らかに……
ストーリー展開を意識したカメラワーク
立山室堂にある「みくりが池」を撮影したもの。真俯瞰は前述の通り、日常ではあまり見慣れないアングルになり、それだけでも意外性を狙うことができるが、序盤の池のクローズアップでは観る人には「これは一体なんだ?」という疑問符が浮かぶ。
しかし、ドローンがゆっくりと上昇していくことで「ん? 水の上? これは氷? あ、緑が見えてきた」と徐々に池の全貌が明らかになっていく。このように1ショットで疑問から始まり、最後には「こういうことだったのか!」と謎が解けてすっきり、という見せ方もある。
ドローンの動き
池の近くからゆっくり上昇させていき、それだけでは映像が単調に見えてしまったため、旋回の動きも加えて撮影を行なった。
作品では全体像がわかるカットも加える
映像作品は様々なショットの組み合わせで構成されている。俯瞰ショットだけでなく、しっかりと場所の全体像がわかるショットも押さえておくことが大事。