舞台全面に広がるLEDのセットと映像が一瞬にして空間を転換
毎年、出演する歌手の顔ぶれが世間の話題になるNHK紅白歌合戦だが、最先端の技術を投入した映像演出や舞台美術も大きな見どころ。昨年の第68回紅白歌合戦では、左右の花道からメインステージまで舞台全面に広がる巨大なLEDスクリーンが登場した。
この画期的な美術セットについて、NHKデザインセンターの森内大輔氏に話を聞いた。
「LEDスクリーンは音楽ライブ等でお馴染みの手法ですが、今回は、空間を構成するテクスチャーとして活用しています。ある時はスクリーンが建築物の壁面のように見えたり、またある時は森の中になったりと、スクリーンに映る映像が会場の空間を変容し、立体的な意匠を構成する。次々と変わる楽曲に沿って、一瞬で舞台が転換する。そんな試みに挑戦しました」。
通常のLEDスクリーンは、表示中の映像をカメラで撮るとモアレが出たり、点灯していないと真っ黒になってしまう問題がある。そこでモアレ対策のために半透明の白いシートを全面に貼り、点灯してない時は白く見えるように工夫を凝らしたという。
またメインステージのスクリーンを2層構造にして、手前に短冊状のスクリーン21枚を並べ、それぞれ自立して上下に動く機構を採用。この、スクリーン自体が様々に変形する仕組みが、シーン展開のバリエーションをより豊かなものにした。
「紅白歌合戦の美術には毎年、限られた時間と空間の中でいかに多様なシーンを作れるかが求められます。それをクリアするべく今回は新しい手法に挑戦しましたが、この手法には可能性があると思うので、もっと広まっていってほしいですね」。